精霊知能ティートレ参上!
発動する《風よ、遥かなる大地に吼えよ/PROTO CALLING》。この世において間違いなく俺にしかない、システム領域は精霊知能を何体かこの世に喚び出す効果を持つスキルだ。
それをもって称号担当の精霊知能を喚び出す。もしもーし、来てくれますかー? ……反応はすぐにあって、取調室内に光が差し込み、超常存在が降臨する気配が見られた。
「召喚スキル……なんでもありですねえ? どうなっているのかシャイニング山形、やはりあなたは大ダンジョン時代においてのゲームマスター側ということなのでしょうか」
「そんな立場になったつもりもなければなりたいとも思わないよ、俺は。だけどステータスに関して一定の干渉力を持つモノを、喚び出すスキルをもらったことは事実だ。アレクサンドラ、その力をもってあなたの称号を剥奪しシャルロットさんへと返還する」
「…………まあ、お好きにどうぞ。こうなった以上、こんな称号どうでもいいですし。ああ、なんならそんな手の内を明かさずとも正しく効果を用いての継承さえしてあげましたよ。無駄なスキルの浪費、ご苦労さまですねえ!」
「悪いけどもう、何一つとしてあなたには能動的な主導権を握らせるつもりはない。たとえあなたが本心からシャルロットさんに《聖女》を渡す気があったとしても、やはり俺はこのスキルを使っているよ」
「そうですか。人を信じることのない救世主とは、やはり幼稚な子供……」
あからさまに俺を煽ってくるアレクサンドラ。もはや勝敗は決していて、舌戦さえも挑む値打ちはないのにまだ仕掛けてくるのか。
そこにあるのは自らのなけなしのプライドや、俺個人への苛立ち、憎悪。そして何よりやはり、夢を挫かれたことのストレスをぶつけに来ているってところなのだろう。
要は八つ当たりだな。
そんなものを受け止めてやる理由もこちらにはなく、適当に応えてスルーする。こういう手合の相手をまともにしていたら、肝心なところでしくじる羽目になるのはすでに経験済みだ。
構わずスキルを継続させる、俺のそうした態度にアレクサンドラはつまらなさそうに息を吐き、舌打ちを一つした。
勝手にやっておいてくれ。思っている間にも光は眩さを増し、そして精霊知能が降臨する。
ステラ同様に半透明の精神体で、若い男のアバター体だ。ラガーマンみたいなストライプのシャツに短パン、黒髪を短髪にしたムキムキマッチョマンの爽やかなスポーツマンの姿を取っている。
初めてお目にかかるけど、この子が称号担当の精霊知能か。
こちらの状況は当然のように把握しているようで、爽やか青年は俺に向けてにこやかに笑みを浮かべ、敬礼してきた。
『──精霊知能ティートレ参上しました! コマ、おおっと山形様、お初にお目にかかります! 状況の一切はすでに把握してますから、ここは俺に万事お任せあれ!! んんんんプレイ・ボール!!』
「う、うん。よろしく、ティートレ」
『いやあーまさかこんなことになるなんて思いもしませんでしたが、あるものなんですね称号を巡ってこんな騒動! はっはっははは! はっはっは────《system:タイトルリムーバー》』
「っ!? な、何を!? この光は!」
怖ぁ……爽やかすぎて目が潰れるかと思うわ。彼こそシャイニングしてるよ、それこそスポーツとかしてたら汗が日光を浴びてキラキラしてそう。
突然現れたラガーマンにアレクサンドラもシャルロットさんも神谷さんも、もちろんおまわりさん達も身構えるもそれも一瞬のこと。
すぐにティートレが放った、システムデバッグ用スキル《system:タイトルリムーバー》がアレクサンドラに行使され、彼女の胸元から光の玉がヌルリと出てきた。察するにこれが《聖女》の称号に用いられているプログラムだな、可視化させて取り出すのか。
掌に収まるくらいのそれを掴んで、ティートレはすかさずシャルロットさんを見た。爽やかな笑顔も突然のことでは怪しく見えるんだろう、彼女が数歩、後退りしちゃった。
「えっ……あの、ええと山形さん?」
「アレクサンドラから《聖女》を取り戻しました。今、彼が握っているのがソレです。そして今からこの称号を、改めてあなたに付与します」
『痛みもなければ一瞬で済むのでご安心を! もちろんレディに指一本とて触れませんよ、投げつけますからね!』
「投げつけ、えっ!?」
『《system:タイトルホルダー》! ──ぬぅぅぅぅぅぅッせいッはぁぁぁぁぁぁんッ!!』
「えぇ……?」
慄くシャルロットさんに、真っ白に輝く歯さえ見せつけて強く笑うティートレが、おもむろに野球選手がボールを投げるみたいにポーズを取ると──豪速球! ほんとに投げた、《聖女》の球を!!
ラガーマンっぽいんだからせめてラグビーボールをパスするみたいにしろや! というツッコミも当然追いつかず、全力で投げつけられた《聖女》がシャルロットさんの胸元に叩き込まれてヌルリと入り込んでいく。
《system:タイトルホルダー》。これもまたシステムデバッグ用スキルで、さっきの《system:タイトルリムーバー》とは真逆に称号を与えるスキルになる。
にしてもこの与え方は、さすがにティートレ独自の趣味だろうな。これも個性か、いやにしたって豪速球は怖いよ普通。
突然の騒ぎや、ティートレ渾身の叫びによって固まる一同。アレクサンドラすら、一連の流れがあまりにも突拍子もないからか唖然として二の句が継げないでいる。
若干の気まずさを感じるなか、俺はアレクサンドラのステータスを自前のスキルで確認した。
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