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迷惑すぎる……大きなお世話の次元が違う

 フルオープンアタック老人まで含めた、サークル構成員達。路線転換した後の組織にそれでも残り続けた者達について、海方はさすがに思うところがあるみたいだ。

 どこか悔しげに、それでいて清々しげに。取り押さえられつつもなお、ここにはいない彼らにするように微笑んでいる。

 

『ったく、俺が言うのもなんだが大バカ野郎どもだった。功さんの理念や理想なんざ何一つ理解してねえのに、それでも功さんだからついてきたようなアホばっかりだ……感謝してもしきれねえ、俺達サークルはあいつらのお陰で走りきれたんだ』

『逮捕され、法の裁きにかけられるのがお前達にとってのゴールか?』

『どんな形で終わるにせよ、俺達はやりきったんだよ。途中で腰抜かして逃げたわけじゃなく、最後の最後まで戦い抜いた。終いにゃマキシムとミレニアムの元の使い手、S級探査者のアイオーンなんてのまで出てきてよう。同じスキルの使い手としちゃ嬉しかったぜ、これ以上ない幕引きだってな』

「馬鹿な考えを……身勝手過ぎる、この男。何が走りきれただ、まったく」

 

 モニターに映る男の、余りに勝手な自己満足。陶酔にも似た達成感に見るからに酔い痴れているその姿に、他ならぬロナルドさんが嫌悪の表情で吐き捨てた。

 正直、分かるよ。さっきの藤近については感じなかった、嫌悪感を薄っすらと俺も抱いている。


 その是非はともかく、曲がりなりにも世のため人のため将来のためと未来を見据え動いていた藤近と異なり、海方の根底にあるのはどこまでも自分と藤近の二人だけだ。

 いや、藤近をきちんと見ていたのかさえ怪しい……どうもね、"藤近を信じ抜く自分自身"にこそ、この男は無意識的にでも重きを置いているような気がしてならないんだ。

 

 それは藤近の掲げる理想について、ろくに言及していないことからも伺える。自身の見解さえ持ってなさそうで、こうなると自分が信じた人だったらそれだけで他のどんなことであろうと十分だ、ってことなのかもしれない。

 盲信。まさしく盲信だ。それでいて藤近の実像さえ無視して、自分のなかの理想の藤近功に心酔している。身内のはずのサークル構成員さえ、その心酔に殉じるための駒ってところだろうか。

 

 重ねて言うけど身勝手過ぎる。藤近がある意味、本当にまっすぐなだけの人物だっただけに余計にそう思えてしまう。

 いや彼も彼で大概迷惑だったけどね。特にソフィアさんやヴァールからしてみれば、大差ないほどに酔っ払った輩なのは間違いないだろう。

 今も頭に手を押さえ、呆れ返った感じでぼやいているし。

 

「サークルは……こういう輩なのか。勝手な理想を他者に押しつけて、暴走して、ふざけた悪事に身を窶して。過去それなりに迷惑な連中を相手取ってきたが、こいつらほどに質の悪い者達もそういなかった」

「委員会、能力者解放戦線、反能力者連合、ノインノア・ジェネシス。モンスターハザードを過去引き起こした連中も、ここまでではなかったですからねえ」

「そいつらはまだ、明確にこちらに向けて悪意と敵意をもって相対してきた。だがこいつらは、自分達の善意や理想を押しつけに来ているだけなのだ……構成員達はそうでもないのがまだマシだが、どうあれ組織の理念としては大きなお世話だとしか言えない動機でしかけてきたのは事実だ。ああ、大きなお世話だ」

「ありがた迷惑ですねー」

 

 過去に引き起こされてきたモンスターハザード、その首謀組織。俺はそのへんの話はさわり程度にしか知らないけれど、そのいずれもに大なり小なり関わっていたろうエリスさんも言及している。

 そうした組織はそれぞれ明らかに悪意ある動機で敵対してきた。口ぶりと組織名から察するに世界征服とか、都合の良いように社会を再構築したいとか、あるいは探査者への反発とかそのへんだろう。

 

 それはもちろん迷惑だし許されないことなので都度、その時における時代の英雄達によって打倒されてきたわけなんだけども……サークルの場合、動機部分がすごくなんていうか、こっちのことを思って言ってやってるんだ! 感があるんだよね。

 ソフィアさんを解放するため、能力者達の力となるため。そんな未来を作るために、人の未来のためにやってるんだぞ! と。なんかそういう主張を藤近はしてたし海方もそれを後押ししていたわけ。

 

 そこにある想いは当人の自由だからとやかく言わないけど、それで実際にやったことがこれでは大きなお世話だとしか言えないよね。

 ましてや海方以下構成員達ですらそんなお題目より藤近自身のカリスマに従っていただけなので、本当に独りで盛り上がっていたのは藤近だけということになる。


 これが、こんなのが今回の騒動の首謀者だったんだ。脱力混じりの呆れを一同、抱くのも無理からぬことではあった。

 そりゃリーベもありがた迷惑の一言で切って捨てるよ。海方も海方で、何やら自己満足してやりきった感出してるしね。


 どうしようもなく傍迷惑な組織。

 それが、それこそがサークルという組織の全貌。真の正体ということなんだろう。

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― 新着の感想 ―
今は達成感に酔いしれていられても、藤近の近くやサークルしか居場所がなかった連中にとっては、捕まった以上はサークル仲間で集まることもできず、悪意ある犯罪者の集まりの中で居場所を作ることさえできず、居場所…
2025/07/22 07:03 こ◯平でーす
結局のところサークルのメンバーってどこにでも居る自分勝手なただの大馬鹿集団だったってオチかな……………… 身も蓋もない事言っちゃうけどコイツら本編中どこで壊滅したところで似たことほざいて満足するんじゃ…
善意()の押し付けは迷惑なんですー
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