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俺は未来を信じている!!(ものは言いよう)

 サークルがテロリズムを起こした理由。悪魔と契約してまで力を得、スレイブモンスターを率いてまでして国家転覆を企んだ理由。

 それこそは非能力者の能力者化、というべきか──ステータスを持たない者であっても、能力者と同じくらいに戦える力を持つことができることを示すのだと藤近はついに白状した。

 

 これを受けてその取り調べをモニターしているこちらの部屋では、マリーさんやサン・スーンさん、愛知さんが顎に手を当て鋭い目つきで考察していた。

 この場の仲間達みんながそのやり取りに耳を傾ける。

 

「ステータスを持たず、けれど探査者と互角に戦う……かえ。なるほど、あそこまで手段を選ばなきゃここまでやれるのかいってのは、正味なところ私も認定式の時に脳裏を過った話だよ」

「悪魔との契約やスレイブモンスターの利用。さらにこちらは能力者を利用した形ですがウーロゴスの制御にAMWの活用。こうして並べると、サークルは実に数々の手札を有しておりましたな」

「とりわけ首謀者のこの男としては、悪魔から得た力とスレイブモンスターがより本質的な動機に叶う力だったということでしょう……モンスターと戦うにあたり、モンスター同士で討ち合わせるという戦法。スレイブモンスターは彼にとって、毒をもって毒を制す類の武器なのかもしれませんね」

 

 認定式以降のサークルが、繰り出してきた手札の数々。その多種多様さと手段の選ばなさはたしかに、ある程度まで探査者達と渡り合ってみせるだけの威力はあった。

 それはこの騒動がここまで長引いたことからも明白だ。ウーロゴスやAMWについては能力者ありきの力だけれど、仮にそれがなかったとしても悪魔憑きとスレイブモンスターだけでもこいつらは十分に場を引っ掻き回しただろうしな。

 

 ……滅茶苦茶な話だ。

 そもそも非能力者が能力者と同じ力を得たところで、それがそのまま探査者と肩を並べて戦えるなんてことには絶対にならないのに。

 ダンジョンには能力者しか入れない。すなわちモンスターとは基本的に探査者しか戦えないのだ。大ダンジョン時代の基本構造にして基本理念と言えるこのことを、探査者フリークである藤近が知らないわけもないだろう。

 

 加えて、探査者と互角に戦える力を得たと示すのにスレイブモンスターを使っていては本末転倒な気もする、んだけど……そこはもはや手段など選ばないってことかもしれない。

 まずはとにかく能力者と非能力者の、武力的格差を埋めること。それこそが先決なのだとモニターの向こうの男は続けて語っている。


『悪魔の力は言うに及ばずだが、スレイブモンスターも非能力者の力となることを十分に示すことができた。スレイブコアの原料となるダンジョンコアの調達にどうしても能力者の助力はいるのが今後の課題だが、そこは後世の者達に任せよう』

『……そこだ。そもそもダンジョンには能力者しか入れない。である以上はどうあがいても非能力者は探査者と肩を並べることはできないだろう』

『そんなことはない。少なくとも地上のモンスターや能力者には十分対抗し得るだろうよ。となればスタンピードや能力者犯罪には、非能力者が参戦できる余地が十分ある……それにダンジョンへの侵入法とて、今後研究が進めば何か抜け道が見つかるかもしれんからな! 俺は未来を信じている、いつか非能力者と探査者がともに手を携えてモンスターと戦う未来をなッ!!』


 どこまでも希望を抱いている様子の藤近功。ある意味、こいつはこいつで人類の可能性に大きな期待を抱いているということだろう。

 いつか非能力者でもダンジョンに入りモンスターと戦えるかもしれないと信じている。そしてその時に備えて、先んじて非能力者が獲得し得る力に手を伸ばしたってことか。


 正直、その展望には俺からはなんとも言い難い。ダンジョンの仕様からして無理だと思うんだけど、どうにもシステムの抜け穴なんてのはどうしたところであるものだからね。

 バグスキル然り、スレイブコアやスレイブモンスター、バグモンスター然り……人間ってのはどうにかして仕様の裏をかくのに長けているから、絶対にあり得ないとまでは言い難いんだよ。


 それに地上においても、探査者さながらの力を得ることになんの社会的意味がないってわけでないのもたしかだ。

 この男にそれを言う資格があるのかって話だけど、犯罪能力者なりスタンピードなりは今後も発生するだろうし、そういう輩に非能力者が危険に晒されることも当然、起きることだ。


 そんな時に非能力者にも抵抗手段があり得るのだとすれば、概念存在との契約により得た力とかスレイブモンスターも選択肢に入り得るのかもしれない。

 いや、システム的には前者はともかく後者は本気で止めてほしいけど。知らないから仕方ないけどそのスレイブモンスター、浄化して輪廻に送るべきモノ達なんですよって話だし。


 困ったもんだ、実に。藤近の主張の核は理解したし多少、納得もするけど実際にやられるとシステム側としてはかなり困るよ。

 何が一番困るって、これまでの話を鑑みるにこいつらサークル……今回ここまでのことをした最大の目的、すなわち非能力者でも入手可能なこれらの方法を世に知らしめるってことについては、ある程度成功させちゃってるってところなんだよなあ。

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― 新着の感想 ―
確かに現状の社会制度に歪みはあるしシステム側にフォローすべき責任はあったと言うならその通り。なれど探索者、非探索者、システム側に関わらず、それぞれが目の前の事態に最善を尽くそうとした結果であることもま…
非探査者が探査者のように強くなれる可能性についての答えの一つがハオランさん。 やはり星界拳…星界拳は全てを解決する……とはならないのは、世界中の人達に星界拳を広めると悪用する者が必ず現れるからで、だ…
2025/07/12 16:25 こ◯平でーす
対象が悪魔でなくきちんと契約出来れば良いけど基本現世を下に見てそうな概念存在が自分にメリットの無い契約はしないんだろうなぁ(;´∀`)探索者の力もあってやっと力を貸してくれるだろうし 悪魔なんて現世…
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