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犯罪者達は、今

 俺達の到着をもって全員集合! と、いうことでさっそく警察庁さんとこの本部さんにお邪魔さんすることに。

 厳しいおまわりさん達が日々お仕事に精を出すなかを、年齢も出身地も見た目もそれぞれ違う色とりどりな多様性集団が行く様はなかなかカオスめいている行進に思える。

 

 エントランスを抜けてフロントに入ってすぐ、警察さんのほうからもアクションがあった。

 こちらとよくよく見知った顔だ、警察庁は能力者犯罪対策局の局長さんである郷田さんと、同局の室長をされている島根さんだ。

 お偉方直々のご案内だよ、緊張してくるなあー。

 

「皆様方、ようこそお待ちしておりました。本日はよろしくお願いいたします」

「郷田局長、よろしく頼む。サークル幹部やアレクサンドラの様子は? 抵抗などはしていないか」

「揃っておとなしいものですよ。藤近も海方も先般までの暴れぶりが嘘のようですが……瀬川とアレクサンドラは、むしろ静かすぎますね。虚脱状態に近いように思われます」

「えぇ……?」

 

 挨拶もそこそこにさっそくヴァールが犯人達の様子をひとまず尋ねたところ、なんていうか藤近と海方はともかく瀬川とアレクサンドラについて微妙な答えが返ってきた。

 虚脱状態に近い……つまり抜け殻みたいな状態って感じか? その二人だけそんななのは、まあ間違いなく己の望みを完膚無きまでに絶たれたからだろう。

 

 瀬川にとっては悪魔セーレ。その美しさと優しさに惹かれ、愛するようになったものの最後には見捨てられた最愛のモノ。

 ただセーレからすれば最初から最後まで瀬川なんてのは観察対象というか、良い感じに表現しても精々が推しくらいのものでしかなかったってのは、正直若干の気の毒さは禁じ得ないかな。

 

 アレクサンドラのほうはもっと直接的で、自身の夢そのものを断たれたことによる挫折だと思われる。

 ウーロゴスを取り込み概念存在へと至り、不老不死を手にすることで世界の終わりとその果てを夢想したのが、ものの見事にご破算となったのだ。

 暗躍し続けた年月の長さ、その分だけの労苦もあったろうがすべて水泡となればそりゃ、絶望もするものか。


 しかし彼女のその願いとて、本質的なところはやはり寂しさ由来だ。親に呪われ、身勝手でも復讐のために悪に染まり続けた人生のなかでまとわりつく孤独感からのものとは、本人の言動からも十分に推測できる。

 やって来たことは何一つ酌量の余地はない。特にシャルロットさんへの仕打ちを思えば、同情することも憚られる。けれど、それでもどうしても──哀れな人だと思わずにはいられない、そんな女がアレクサンドラだった。

 

「瀬川のやつ、好き勝手やっといてぜんぶ終わったら呑気に抜け殻かよ……」

「あの女悪魔にものの見事に誑かされた男の末路って感じねー。ま、取り調べでも腑抜けてたら一発どついてやんなさいな、千尋。そんなことより洗い浚い話せーってね」

「夢を絶たれ心が折れましたか、アレクサンドラ。無様を晒していそうで個人的には痛快ですが、肝心要の聴取にはきちんと答えるものでしょうか?」

「そこはなんとも。自暴自棄になっている可能性も大いにありえます。情けない話ではありますが……」

 

 そんな二人のかつての敵に、それぞれ因縁のあった神奈川さんとシャルロットさんがコメントしている。

 やはり気になるところは自失状態にあるという点以上に、そんな有り様で果たして取り調べにきちんと答えられるのかという部分だ。アンジェさんなんて過激なことを言って、側にいるマリーさんからため息を零されている。

 

 シャルロットさんはこちらはこちらでクールで淡々としつつも、アレクサンドラの現状に隠すことないざまぁ感たっぷりだ。もっともこの人の場合はそうするだけの理由があるし、なんなら大人しいほどですらある。

 ただ、お隣の神谷さんはやはり物憂げというか、若干元気はないよね。かつての教え子にして後輩聖女の末路だもの、気にかけないわけもないか。

 

 この人についてはアレクサンドラも相当、あんなになっても恩義を感じていたようだし、そこについてはどうもやるせない。

 師匠であり恩人である神谷さんへの感謝や敬意が、そしてダンジョン聖教聖女としての日々が、どうにか彼女のなかにある呪いやしがらみを上回ってくれていたなら……あるいはこんなことにはなっていなかったのかもしれない。そんな気さえする。


「いろいろ、やっぱり、爪痕の深い事件だったなあ」

「……そうだな。なんとも、複雑な気分を禁じ得ない顛末だ」

 

 でも、今こうなっているのがたしかな現実だから。もしもの話は結局もしもで、終わってしまった今だから物思いできる話でしかない。

 そんな思いから心情を吐露すると、ヴァールも同じ思いでいたみたいで似たような、憂いを帯びた目で軽く小声で応じてくれた。


 この子こそ、こうしたやるせなさをこれまで幾度となく味わってきたんだろう。

 犯罪は、どんなお題目を掲げようと結局のところ、こういう形に落ち着いてしまう。そんなものでしかないって話なんだろうな、きっと。

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― 新着の感想 ―
公平の性格だと「ぷ〜、くすくす(笑)」とか「無様ね!(勝ち誇り)」って感じではないよねぇ。 どちらかというと、「汝の罪を悔い改めなさい。」タイプ。 むしろ、幼女の頭を撫でるようにアンドヴァリ火野を慰め…
警察のお偉方に案内されるより統括理事を案内する方が緊張するよー。その緊張する役目を押し付けられているのか役得だと思われているのか……
2025/07/06 13:35 こ◯平でーす
隣で溜息零してるマリーさん、若い頃は言葉より行動が過激でしたよね〜?
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