渡りに船、インターフェイサーに戦乙女
インターフェイサーに所属というものの、やることは普段のダンジョン探査。
そしてそこで得た報酬を部隊の資金として賄う代わりに、スキル習得条件から有力探査者との縁まであれこれと便宜を図る。
なんともはや分かりやすい取引だ。
おかし三人娘に部隊への参加をお願いする気でいるシャーリヒッタとミュトスは、言い方は悪いけどそれなりの餌でもってあの人達を釣り上げるつもりでいるみたいだった。
条件面だけを見るなら、おかし三人娘にとってはそれなりに有益なものだろう。
特殊なスキルというのが何によるかにせよ、おそらくはレアスキルを習得できるチャンスを能動的に得る機会は普通、滅多にあるもんじゃない。
探査者達との縁ってところでもまあ、今後彼女達が目立つ形で躍進したいってんなら有用だろうさ。
ガムちゃんなんかは特に、そのあたりで飛びついてくるかもしれないね。何しろ覇王忍者だし。
「基本的にはおかし三人娘にゃあ、インターフェイサーに加入したとしてもそれまでと変わらねェ生活を送ってもらうつもりなんだぜ。得られた金をこっちに流すようになるってのと、引き換えにオレらから探査者として価値ある何がしかを交換できるようになるって感じか」
「後はインターフェイサーの拠点予定地、これは不肖私ミュトスちゃんめの住まいになるだろうマンションの一室になりますけど、そこをセーフハウスとして使えるようにもなります。たぶん世界で二番目に安全な場所ですよ、一番目はもちろん言うまでもなく山形様のお家です」
「コマンドプロンプトの家と、精霊知能の家だからな……現世存在はもちろん概念存在さえシャットアウトできる、セキュリティ面においては当然盤石か。それなりに向こうのメリットも考えているようでそこは何よりだ」
シャーリヒッタとミュトスが、おかし三人娘へと予定している待遇についてそう締めくくればヴァールも腕を組んでふんふんとうなずいている。
まあ、俺としてもそれなりにフェアな取引かな? って気はしている。少なくともおかし三人娘を良いように利用するだけして、なんの対価も渡しませんなんてことには当然だけどならなさそうだ。
先述のスキルと人脈に加えて、一応の拠点まで提示するんだから、三人娘達からしてもさすがにそれなりにメリットはあるだろう。
逆に言えばそれだけ、インターフェイサーの資金問題は結構洒落になってないものだとシャーリヒッタとミュトスは感じているわけでもあるな。二人とも現世に来て間もないけど、すでに現世社会における金銭の重要性は身に沁みて理解しているし。
多少やりすぎなくらい与えてでも、安定した資金の確保はしておきたいってところなんだろうさ。
「インターフェイサーの資金については俺のほうからも工面するけど、部隊内の活動で安定させられるならそれに越したことはない。決して無理強いしないこと、加入したとしても普段の探査者生活を送ってもらうことを前提として一度、あの三人に話を持ちかけてみてくれ。何か相談事とかあったら俺にすぐ知らせるようにとも言っといてくれな」
「わかりました! ありがとうございます、父様!」
「もちろん時間があるタイミングには、私やシャーリヒッタさん含めたメンバーも探査活動はしていきます。みんなでバリバリ働いて、バリバリ組織をでっかくしていきましょーう! ジャンジャンバリバリー!」
「ふむ……」
一応、インターフェイサーにおける現世総指揮担当の俺ちゃんもとりあえず話だけでもしてみたら? と認可を下ろす。聞く限りおかし三人娘の負担になるような話ではなさげだし、なるようだったらその時は俺のほうから執り成して調整すれば良い。
それに資金調達はメンバーみんなの問題だし、俺としても他人事じゃないからね。多少でもポケットマネーから出すよ、探査者だからお金はそこそこあるわけだし。
そんな俺達を見ていた、織田が何やら顎に手を出して考えているのが視界に入った。
何か発言するつもりのようだ、インターフェイサーについての意見とか提案かな? 気にしていると彼は、俺に向けてそういうことならと切り出した。
「我々北欧神話圏も、システム領域と概念領域のパイプ役という立場から考えてぜひともインターフェイサーとつながりを一つ持っておきたい。そこで私から提案があります」
「提案……何かな?」
「我が従者、そしてあなたの弟子である戦乙女・レギンレイヴを……インターフェイサーに加入させていただくことはできませんか? 我々側からあなた方側への、ある種の出向員のような形になりますが」
思いもかけない提案。てっきり資金提供とか寄付とか金回りでインターフェイサーに一枚噛みたいとか言い出すのかと思ったら、まさかのイヴさんをこちらに出向させたいというのか。
北欧神話圏の最高神たる彼の置かれた立場的に、インターフェイサーに対してなんらかの関わりを持っておきたいと思うのは当然のことだから理解はするけれど……虎の子だろう戦乙女の一体を大胆にも派遣させようとは思わなかった。
叡智と好奇心を、理性にて制御しているその瞳の光を見る。
オーディン神のアバター体の眼光は、未来を見据えるが如く鋭くも不敵な輝きを放っていた。
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一巻
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