悪魔だってグルメを楽しみたい!
あれこれ雑談しつつも、パーティーさながらのご馳走の数々をみんなで堪能する俺達、システム領域の面々と織田とオノスケリス。
食事時ばかりは陣営も間柄も関係なくて、ただ美味しいものを楽しみ、ありがたくいただき、そして堪能すれば良いのだ。そればかりはあらゆる領域に区別ない、命をいただく際の共通事項だね。
「我らが北欧神話圏での食事も味わい深いものですが、現世は現世で感動的な食体験を毎日毎食楽しんでいますよ。いやはや料理とはまことに素晴らしいものです」
「それそれ! 悪魔も現世のイメージのせいでやたらおどろおどろしいナマモノ系統が好みってことにされがちだけど、やっぱ普通に火とか通して食べたいよねって! ねえソフィア・チェーホワさぁ、今からでも世界にどうにかそういう認識持たせられない? "悪魔はみんな毎食高級フルコース食べてるグルメである"みたいな!」
「えぇ……?」
「気持ちは分かりますけど、要求ラインが厚かましいですねー」
織田にしろオノスケリスにしろ、現世の料理や食文化をいたく気に入っている様子でそこは人間としてなんだか嬉しみと親近感を抱くよ。
でもオノスケリスはちょっと要求が無茶かな……いや現世でありがちな"たぶん悪魔だし人間とか生肉とか生き血とか飲み食いしてるんだろうなあ"みたいな悪魔のイメージに影響されがちなのは気の毒ではあるけども。
そもそもいくらWSO統括理事ったってできることとできないことは当然あるし。ソフィアさんもこればかりは苦笑いしているよ。
大ダンジョン時代の基盤を作り上げ秩序を形成して管理運営する、大元の人物ではあるのはたしかだけれど。だからといって世界各地に暮らす多くの人々のイメージや印象、内心にまで干渉なんてできるわけもないのだ。
「申しわけありませんが、さすがにそれは私としましても対応しかねますね……神や悪魔にまつわるイメージや印象というものは、それこそ大ダンジョン時代到来よりもはるか以前から形成されています。今現在の現世での扱いも、時の流れで都度変化しつつも連綿と受け継がれてきたものなのですから」
「はー、やっぱりかー! でもまあ良いんですけど? 大体の悪魔はそんなイメージ無視して普通に料理して食べてるんですけど。悪魔だからって生肉生贄生血オンリーとか冗談じゃないんですけど」
「神や精霊、妖怪妖魔も同様ですね。我々はたしかに現世のイメージによっていろいろ存在の規格から変動しますが、だからといってそれらにすべて応えなくても良いわけですから。それこそ日本の概念存在達はその属性に依らず美食に走りがちですよ。せっかく食に執拗な執念を持った文化圏の概念存在なのだから自分達もそれを楽しみたい、と」
ブツクサぼやくオノスケリスに、これまた意外なわけでもないにしろ織田も同意を示した。やはり概念存在ゆえに現世のイメージによる影響は免れないながらも、それでも自由意志で食事は楽しみたいと。
あまつさえ今この国、日本の文化圏から発生した概念存在達は揃ってグルメさんが多いのだとか。属性の区別がないというあたり、神から妖怪妖魔から精霊の類までみんな現世日本の食事を愛しているんだろうね。
それもまた、素晴らしいことだよ。システム領域としては別段、イメージありきとはいえ完全に何から何までその通りに生きろとまで言うつもりも最初からないし。
概念存在達には概念存在達なりの生き様や主義主張、嗜好があってそれらは否定されるべきものではない。現世もそうだけどね。ただお互いのそうした思想がぶつかりあった結果、どちらかが興りどちらかが廃れるという現象もまた、自然の理としてあって然るべきという話でもある。
だから私達システム領域は、概念存在達が現世に干渉することそのものについてはとやかく言うつもりはないのだ。
なんなら委員会に与してたって別に構わないっちゃ構わないんだ、本来──システムを悪用するというある種のズルをしていなければ。
スレイブモンスターやスレイブコア、バグスキル、果てはウーロゴス。そのへんに手を出してさえいなければ、昨今の事件や騒動も結局現世vs概念領域で収まっていた話なんだけどね。
委員会は手を出すべきでない部分に手を出した結果、踏むべきでなかった虎の尾を踏んだ。つまるところそういう話でしかないのだ、これは。
まさしく因果だね。
「気持ちは分かりますよーうぇっひひひ! 何しろ食べることは楽しいし呑むことも嬉しいですし! いやー酒につまみに手が止まらないで候!」
「ミュトスちゃーん? ちょーっと飲み過ぎじゃないですかねー? そろそろ気をつけましょうねー?」
「アッハイ……ミュトスちゃん反省します……」
「怖ぁ……」
食に酒に夢中な概念存在──元だけど──を体現するようなミュトスのはちゃめちゃな飲み食いっぷり。満面の笑みでジョッキの中の酒を飲み干してはピザ食って寿司食ってスープ呑んでうへへへ笑っているよ。
終いに最近とみに酒飲みに厳しいリーベちゃんがとうとう微笑みとともに声をかけた、途端に借りてきた猫のように大人しくなるミュトス。圧すごいなー、さすが先輩精霊知能。
あとソフィアさんが地味に、うんうんうなずいてリーベに同意してる。
たぶん二人とも脳裏にはマリーさんが過っているんだろう。想像に難くないコンビの、飲み過ぎへの厳しさであった。
「大ダンジョン時代クロニクル」第一次モンスターハザード編完結!
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【ご報告】
攻略! 大ダンジョン時代 俺だけスキルがやたらポエミーなんだけど
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書籍
一巻
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二巻
amzn.asia/d/aL6qh6P
コミック
一巻
amzn.to/3Qeh2tq
二巻
amzn.to/4cn6h17
三巻
amzn.asia/d/cCfQin2
Webサイト
PASH!コミック
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