ど う あ が い て も 孤 独
「うーわ悲惨なんですけどー。悪魔的にはまあそこそこ面白いかもだけど、オノスケリスちゃん的には陰鬱すぎてダルいだけなんですけどー」
「来歴についてはどうでも良い部分ではありますが、それをもってウーロゴスを用いて概念存在に至ろうとした点については評価できますね。ククク……なかなか面白いアプローチを試みたものです」
この際ということで織田やオノスケリスにも、アレクサンドラ・ハイネンあらため火野アレクサンドラについての情報共有を行った結果、返ってきたのが今のような返事だ。
オノスケリスは彼女の過去について言及し、織田はそれを踏まえて行った所業について評価している。
このへん、分かりやすく二人の思考回路の差が浮き彫りになっていて面白いね。やったことよりそこに至るまでのプロセスに注目した悪魔と、来歴より実際にやったことを見ている神と。
というかオノスケリスの言葉はそれこそ俺からすれば意外なものだ。悪魔というのに、アレクサンドラに食指が向いていないのか。
気になるので問いかけてみる。
「オノスケリスは、アレクサンドラについて面白がったり肩入れしたりはしないんだな。今の話を聞けば悪魔的には少しなりとも興味を持つかと思ったけど」
「悪魔的にはそーかもですけど、オノスケリスちゃんはオノスケリスちゃんだし〜? 楽しくなければ悪魔じゃないっていうかぁ、創作とか娯楽でも悲惨すぎると楽しめない質なんですけど! かわいそうはかわいいとか無理なんですけど!!」
「そ、そうか……まあ、そのへんはそれぞれ好みとか趣向があるからな。俺もあんまりかわいそうなのは、得意なほうじゃないし」
「つくづく娯楽にのめり込んでる感ありますねえ、こちらの悪魔さん」
ミュトスも感嘆やら呆れやら含めた声を漏らすほどに、娯楽的な部分に関して独自のこだわりを持つらしい女悪魔。
悪魔の本能さえも上回る自我ということで、これももちろん俺やシステム領域からすれば素晴らしいものだ。オノスケリスについての評価を内心、数段階引き上げる。
ちなみに俺ちゃん、基本的にはハッピーエンドが好きだ。なんならご都合主義だって良いじゃんって思う、みんな幸せならそれが一番だし。
ただ、現実はそううまくいかないのももちろん理解している。今回だってアレクサンドラやサークル幹部まで含め、誰もがこうなるまでに踏みとどまってもっと平和で穏便な形に落ち着いてくれていればと思わずにはいられないけど、彼らにも彼らなりの想いがあったことも分かるから。
だから俺達も俺達の理念を持って対峙したんだ。世の中のこと、すべてうまく行くとは当然限らなくても、それでもできる限りを尽くしたいから。
綺麗でも、綺麗じゃなくても。全部抱えて向き合って、それでも前を向いて。蓮の花も未だ咲かない泥沼をも、きっと愛しんで行けると信じている。暗い路地裏をただ歩くだけの中にも、美しい何かを見つけていけると思っているんだ。
あくまで個人的な思想としてそんな想いを抱く俺としては、オノスケリスの想いは結構、性に合うものではある。
まあ、根底にあるのはやはり自分が楽しいか楽しくないかってことなのでそこは悪魔だなあって思うけど……彼女のようなモノがいるのは、好感が持てるなーってなるよ。
一方で織田はオノスケリスとは異なり、自身の精神的な面ではなく概念領域内でのバランス面も考慮しつつ、アレクサンドラを評価しているようだ。
顎に手をやり愉快げに笑いつつ、コメントしてくる。
「人間が概念存在になる、というのは我々北欧神話圏からすれば馴染みの話ではありますが……大体死後の英雄英傑を戦乙女が見出して連れて来る形でのものですからね。生きたまま連れて来るパターンはかなり珍しいので、アレクサンドラが上手く行っていたならそれはそれで興味深いものでした」
「神話によっては多いよな、そういうの。ただ、今回はどうあれアレクサンドラの完全に一方的な思惑による行動だったからね……どんな場合であれ、自己都合のみでカミに至るってのは難しいと思うよ」
「そうですね。仮にアレクサンドラがプレーローマ・アンドヴァリに変貌して、どこぞかの概念領域内の勢力に仲間入りしたいとやって来た場合、おそらくは戦闘になるでしょう。謂わば非合法状態の概念存在など、いかなるカテゴリーにあってもいかなる勢力にあってもトラブルの種に過ぎませんのでね」
「概念領域内の秩序維持って点でも、勝手こいた馬鹿は受け入れられねェってこったな……アレクサンドラはどうあれ孤独なままだったってのは、ちぃと哀れだなァさすがによォ」
シャーリヒッタまでもが眉をひそめる、身も蓋もない織田の言葉。プレーローマ・アンドヴァリとなっていたアレクサンドラには、概念領域とて受け入れるだけの余地はない……他ならぬ最高神からそのようなお墨付きがなされたのだ、さすがに同情を禁じ得ない話だ。
まあ、当然の話ではある。概念領域もそれぞれ勢力があってお互いのパワーバランスを考えながら日夜運営しているわけなので、そんなところにイリーガルイレギュラーが紛れ込んだら間違いなく争乱の種でしかない。
結局、ウーロゴスを得てカミとなったところで、アレクサンドラに待ち受けるのは永遠の孤独でしかなかったということだろう。
本人は意識的にはそれでも良かったのかも知れないけれど……ここまで来るとさすがに気の毒にすらなるよ。間違いなく、無意識的には寂しさを抱えていたんだからね。
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