野心に魅入られた藤近とアレクサンドラ……に、魅入られた悪魔のみなさん
委員会の悪魔アドラメレクの呼びかけに応じる形で、傘下組織サークルや関連するダンジョン聖教過激派に肩入れしていた連中。
オノスケリスも含めたそんな悪魔達の多くは、結局やはりというべきかそれを口実に大ダンジョン時代の様子を直に確認したいという思惑があったのだという。
「何しろ概念領域から覗き見ってのも、四六時中なんてできないからね。悪魔にだって仕事っていうかやることがあるわけだし、比較的暇してるタイプの悪魔ばっかりが参加してたと思うんですけど」
「悪魔の仕事……概念存在として現世のイメージに基づいたものか? 神もそうだけど、基本的にお前らに本質的な意味での"やらなきゃいけないこと"なんてのは日課レベルではないだろ」
「それはそーだけどシャイニング山形に言われるともにょるんですけどー。アンタやっぱどっかの最高神だか下手すると創造神まであるでしょ、概念存在の核心に詳しすぎだし権能もハチャメチャすぎなんですけど」
「俺のことはなんでも良いだろ? それで、お前も暇してたタイプの悪魔で娯楽目当てでサークルに参加したってことか」
小悪魔な言動とは裏腹の、意外にしっかりこちらを見定めようとするクレバーさ。
そういえば古代王ソロモンと縁のあるらしい古い悪魔とかって話だったなこいつ、表面的な素振りや素で煽りに来る性格はともかく、内面はかなり老獪な部分を隠し持っているのかもしれない。
そんなオノスケリスだが俺の推測にあっさりとうなずいた。つまりはやはり、暇だったからいたずらに悪の組織に加担して現世を乱しにかかった形になるな。
ソフィアさんがピクリと頬をひくつかせた。立場上、誰よりも迷惑を被った形になる彼女としては言いたいことの一つ二つ、いやさ百や二百もあるだろうなあ。
それでも黙っているのは、概念存在についてはよく知らないからってところか。アドミニストレータとしてもWSO統括理事としても、概念領域周りには基本的に距離の遠い立ち位置だからね。
と、今度はシャーリヒッタが質問した。今の話を受けて呆れ返りながらも、その視線は鋭く虚偽は許さないと光らせながらだ。
「それじゃあよオノスケリス、お前みてェな住所不定無職タイプの悪魔じゃねえ、なんらかの目的意識があって参加していたやつらも少ないがいるってことか?」
「ちゃんと概念領域内に家あるしパートでベルゼブブ様んとこで事務仕事してたりしますけど!? ……こほん。そりゃまあ、悪魔ってのもいろいろいるし。元から委員会のアドラメレクとか瀬川目当てのセーレちゃんよろしく、サークルとか過激派に協力するのが目的な奇特なのもいたよ。このへんはそっちの、北欧んとこの最高神様にも前に話したけど」
「たしかに。その点については私から説明しましょう、シャーリヒッタ・山形」
家はそりゃあるだろうけど、悪魔カテゴリのなかにもアルバイトやパートタイマーって概念あるんだ……そっちの話も若干気になる俺ちゃんだけど、そこはひとまずさておいて。
大半の悪魔が大ダンジョン時代の実地体験のために利用したというサークルへの参加。しかしそれ以外の少数については、それとはまた別の思惑からサークルや過激派に積極協力をしていたらしい。
ぱっと浮かぶのは最終決戦の折、瀬川に取り付いていた5体の悪魔かな。あいつらからは何かこう、現世への明確な執着を感じ取れた。自分達概念存在が置き去りにされるのを恐れていた節も見受けられたからね。
さらに振り返れば一時失踪していた神谷さんを追うなかで遭遇した悪魔オロバスやタンニーンも、何やらアレクサンドラ個人に入れ込むような口振りではあった。
彼ら的には現世の大ダンジョン時代社会より、もっと優先すべき何かがサークルなりダンジョン聖教過激派なりにあったってことだろう。セーレ同様に。
それがなんなのか、オノスケリスからの聴取ですでに知っているそうな織田が説明してくれた。
「オノスケリスからの目線の話になるというのを前提にお聞きいただきたいのですが……サークルと言う組織の、特に首魁たる藤近功。そしてダンジョン聖教過激派の首魁アレクサンドラ・ハイネン。その二人個人への肩入れをするモノ達がいくらかいたようです。そうだな?」
「うん。特にアレクサンドラの人気はすごかったよ、オロバスのおっちゃんとかタンニーンさんとかも行く末を見守ってた感じだし。それこそセーレちゃんが瀬川のことを見てたみたいにしてたよ、力こそ与えてはいなかったけど」
「……そういえばなんか言ってたな。アレクサンドラの夢や理想について、綺麗だからこそ赦されないとかなんとか」
「オロバスってのは前にオメーさんが言ってたな、未来だか過去だか垣間見る権能を持つ悪魔だってよ。それでアレクサンドラの来歴やらなんやら確認して、肩入れするようになったってところか」
「たぶん。そもそもオノスケリスちゃんはアレクサンドラの夢とか理想とか全然これっぽっちも知らないからなんとも言えないけどぉ」
やはりか。藤近はともかくアレクサンドラもまた、悪魔にそれなりに見込まれていたんだな。
それもおそらくはセーレが瀬川に対して望んでいたような、かなり悪辣な見込み方だろう。悪魔が、彼女の来歴を知った上でなお応援すると言うならばそこは間違いない。
あの女の動機を知らないオノスケリスだけど、彼女の視点からするとオロバスやタンニーンの気持ちが多少は理解できるのだろうか?
気になった俺は、この際なのでアレクサンドラの動機や来歴部分について説明することにした。
母の呪い、父の存在。そしてダンジョン聖教での日々と、裏腹のシャルロットさんへの仕打ち──ウーロゴスを得てその果てにある不老不死へと至ろうとした、プレーローマ・アンドヴァリの存在まで含めて。
かくかくしかじかずんずんちゃっちゃ、とかいつまんで話したのである。
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一巻
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二巻
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三巻
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