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まあ概念存在っていわば理不尽の化身みたいなもんだし(震え声)

 この世界の外側についての雑談なんてのはともかく、織田は重ねてミュトスとコミュニケーションを図ろうとしている。

 先述のとおり、ミュトス側が元女神ということで最高神であるオーディンにビビり倒してるんだけども、それでも自分はブラックじゃないよーと言いたげな柔和な笑みを浮かべて、彼は努めて紳士的に話しかけていたのだ。

 やだ、イケオジ……

 

「異世界の神にして現在は精霊知能たるミュトス。そう身構えないでいただけると助かりますよ……といいますか、私などよりよほど畏怖に足るモノがいつでもすぐそばにいるでしょう。そこな山形公平よりは、私は本質的にはあなたに近しい立場のはずですよ?」

「は、はははははぃいぃ! あの、すみません、その。御身自身に隔意はないのですがそのうー。前の上司がやっぱり威厳マシマシ嫌味こってりハラスメントドッサリ濃厚豚骨魚介鶏白湯だったものでして! あ、ちなみに山形様はたいへんホワイトな方でして、気分悪いから千年単位で神罰執行な! とかはされないんだろうなーって安心感はあります、はい!!」

「怖ぁ……」

「シンプルに嫌な上司じゃないですかー……」


 ものすごく胃もたれを起こしそうなブラック最高神さんだったんだな。漏れ出るミュトスのトラウマに涙がちょちょ切れそうだ。リーベまで絶句しているもの。

 ていうか千年単位で神罰執行って暇なのか? その神話圏。


 魔天世界は話を聞く限りガチガチのハイファンタジー世界で、だったら現世と概念領域の距離はこの世界よりずっと近しいものであっても不思議じゃない。

 つまりは概念存在が現世に干渉することも、日常茶飯事とまでは言わずともそれなりの頻度であったろう。だってのに気分次第で千年懲罰なんて、ずいぶんもったいないことをするように思えるな。

 同じ時間で概念存在による干渉を増やしたほうが、概念領域としては値打ちのある行為だったろうに。


 まあ、神話圏ごとの個性や方向性、方針ってものも絡むだろうから一概には否定しないけども。これが文化の違いってやつかあ、と内心では感心する俺。

 織田なんかは期せずして異世界の神話圏の情報を、断片的にでも聞けたことにご満悦のようだ。何やら鷹揚にうなずき、満足げに笑っている。


「なるほど? ずいぶんと苛烈な神話の最高神だったようですね。こちらの、他の神話にもなかなか厳しいモノはいますが、そう言った神の下にいたのであればその反応も理解しましょう。まあ、追々私にも慣れていただければ良いかと」

「ご、ご恩情賜りますう」

「ですがこれだけは伝えておきましょう──かつて神だった貴女のこれまでの来歴と活躍に、北欧大神として私は敬意を表します。精霊知能ミュトス、あなたは異なる世界であっても我ら概念存在の宝だ。精霊知能へと成り上がった概念存在がいるのだと、概念領域もシステム領域へと至りかねないのだと、たしかにこの世界に刻んだのですから」

 

 ミュトスを讃えるその言葉。その裏に秘められた真意を、俺はおそらく過たずに受け止められたと思う。

 概念存在からシステム領域への移籍。今回のような極めて特殊かつ特異なケースであってもそうしたことはあり得るのだと、少なくとも彼女の周囲はすでに知ったのだ。

 

 それは畢竟、ややもするとこの世界の概念存在の中からも同じようにシステム領域への移籍、とまではいかずとも干渉や交渉を行っていける可能性をも示している。

 今のような、システム領域が一方的な思惑で干渉や介入してくる形ではなく……概念存在のほうが私達にまで到達し、思惑や意志を伝えてくる可能性もゼロではないということなのだ。

 

 それも良い。概念領域は現世のためにこそあるモノ達だが、さりとて世界の操り人形というわけでもなく自由意志のあるれっきとした知的生命体だ。

 であれば、暗躍するモノ達について追い求め、いつか自力で到達する日が来ても良い。それはそれで概念領域の進化とも言えるし、ひいてはそんな彼らが巣立ちを望んで止まない現世のメインプレイヤー達の進化にもつながるだろう。

 

 ただ、明確にこちら側がパイプ役として選んだオーディン神には感銘を覚えても、積極的に動くことは認められないけどな。

 一応、織田にはやんわりと牽制しておく。

 

「……言うまでもないと思うけど。外部委託って形として概念領域とのパイプ役をお願いしている以上、そんなあなたがシステム領域について情報漏洩するのは認めるわけにはいかない。そこは理解してもらえると助かるんだけど」

「ああ、失礼。誤解を与えましたかね……無論、私も最高神として弁えております。世界の真実に到達した今、私もスタンスとしては創造神達とほぼ同じ静観ですよ。彼らほどあなた方を敵視などいたしませんが、基本的には概念領域とシステム領域の連絡役として立ち回るだけの立ち位置として在りますとも」

 

 ……さすが最高神だ、本当に言うまでもなかったな。

 叡智を求めるだけあって聡明な北欧大神は、それゆえに自身の立ち位置と役割、振る舞い方を誤認することはない。


 彼は真実と引き換えにこの位置に収まった、ならばそれ以外の身動きなどできるわけもないのだ。少なくとも、システム領域と概念領域双方からパイプ役となることを望まれている限りはね。

 中間管理職さながらの縛られ振りで気の毒だけど、まあ彼の望んだことだから仕方ないってことで、ひとつ。

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― 新着の感想 ―
精霊知能成り上がりレース(?)は、危うく人間の神奈川さんに先を越されるところだったからねえ……
2025/05/31 09:07 こ◯平でーす
>濃厚豚骨魚介鶏白湯 超絶に胃もたれしそうだな
ハーレム主人公の山拓くんイケオジ派だったか〜。 言うて、別のアプローチで真実にたどり着く存在もゼロではないですよね、どっかの創造神と知り合いのS級探査者のように〜。
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