レギンレイヴはシャーリヒッタ式スパルタ特訓の夢を見るか
良いのか悪いのかで言ったら良いこと、というか助かる話のはずなんだけど……ミュトスが日常的に伝道師さんのご近所さんになるということに、そこはかとない信仰上の不安を感じなくもない俺ちゃん。
日増しに言動が信者寄りになっていったらどうしようと、ありえなくもない未来図にちょっぴり怖いものを感じながらも、案内されるがままにエレベーターに乗って最上階を目指していた。
その間にもうちの精霊知能達は果敢にもイヴさんに話しかけて、何やらコミュニケーションを取っているね。
思えば友好的な関係の概念存在もあんまりいなかったってのもあるんだろう。特にリーベがいつも通りのコミュ強ぶりを発揮していた。
「イヴさん、公平さんのお弟子さんに志願したんですよねー。特訓とか訓練とか受ける感じなんですかー?」
「はい、リーベ様。山形様のご都合が合うタイミングに限りますが、いくらか稽古をつけていただくようお願いしております」
で、イヴさんとの話題といえば案の定ながら俺との師弟? 関係についてだ。別に俺は師匠を気取るつもりもないんだけど、イヴさん割と形から入るタイプみたいですっかり弟子だと言い張るようになっている。
そんな彼女については織田からも頼まれているので、今後お互いの都合が良いタイミングにいくらかこう、アドバイス的なことをできたらする予定だ。
天下のワルキューレさんに俺が何をどうアドバイスしろってんだよって話ではある。
こうなるきっかけになった悪魔アガレスの時間停止の対策取れませんでした問題だって、あんなもん魂の格次第なんだから防ぐも防がないもない話でイヴさんになんの責任もないし。
ただ、やはり彼女的にはどうにか前に進みたい、より高みに至りたいって意思もあって、それで俺に頼み込んできたんだろうって考えると無碍になんてとてもじゃないけどできないし。
仕方ないからせめて単純な戦闘の中で、なんかこう良い感じにアドバイスさせてもらえたらなーって塩梅なのだ、俺的には。
「たとえ一握りの時であっても値千金。山形様からの教えは決して何一つ無駄なく、完璧に会得できるよう精進したく思っております」
「良い心掛けだぜェ……気に入ったァ、公平サンの都合がつかなくても時間空いてたらオレとも修行しようぜレギンレイヴ。こー見えてオレも精霊知能だかんなァ、御方ほどじゃなくてもなんぞ助けになれるかもしれんぜェ」
「ありがとうございます、シャーリヒッタ様。そうですね、ぜひお願いしたく存じます……この場にいる精霊知能の方々は、魂の格からして私のはるか上のようなので。強い戦士には敬意を持ち、そして教えを請うべきでしょう」
「あっ! じゃあ私も私もシャーリヒッタさん! 不肖ミュトスぶっちゃけ最近マジ暇すぎてチョベリバってやつなんで、身体を動かせるなら参加したいです!」
「えぇ……?」
静かにクールながら気炎を吐くイヴさんに、そこはかとなく体育会系なシャーリヒッタちゃんが絡んでいく。根性あるな気に入ったぜ的な昔の先輩ムーヴすんのやめてもろて、陰キャには圧が強すぎるんだよねそれ。
挙げ句にミュトスまで話に加わってきた。揃って全力全開ならワールドプロセッサ、コマンドプロンプトに次ぐ世界3番4番の実力者が、タッグ組んでイヴさんを鍛えようとしてるのか怖ぁ……魔改造じゃん。
まあ、俺の都合がつかない日にシャーリヒッタなりミュトスがイヴさんの相手をしてくれるってのは助かる。織田の手前、やるって言っといてあんまりやってませんってのも気まずいからね。
シャーリヒッタとミュトスには俺の代わりを頼むこともお願いしてみても良いかもしれない。それにこの二人にとっても、精霊知能以外の存在とのコミュニケーションを取ることは良い影響をもたらしてくれるだろうからね。
「オレらからしても、お前さんみてェな概念存在と交流するのはメリットのあることだ。ようし決まりだ、後で連絡先交換しようぜ!」
「あ、ミュトスちゃんとも! うししし、身内以外にお初の友達!」
「はい、喜んでいたしましょうとも──着きましたみなさま。こちら最上階、我ら北欧神話圏は現世支部フロアにてございます」
割とイヴさん側もノリノリで微笑ましい。うちの精霊知能二人、どうぞよろしく頼みます。
……なんてことを言っているうちにエレベーターがいよいよ最上階に到着した。この階層とひとつ下の階層は丸ごと織田が買い取っている北欧神話フロアであり、彼やイヴさんはじめ従者の方々の住まいであったり今回の俺達のような、訪問客を接待するためのルームとして用いられているそうな。
通路の突き当たり、謁見の間として用意されている部屋の前まで歩を進める。俺は以前にも何度か来たことあるから正直、まあまあ慣れた風景だ。
一方で他の面々はそこまで馴染みもないっていうか、ミュトスとソフィアさんに至っては本日初訪問なもんだから結構キョロキョロあたりを見回している。
物珍しいんだろうなー。でもこれからもっと珍しいものを見ることになるよ。
「こちら、謁見の間となります。なかで我らが至高の主がお待ちです。どうぞ、お入りくださいませ」
辿り着いた矢先に振り向いたメイド服姿のイヴさんが丁寧に優雅な一礼をする。と、同時にひとりでにドアが開く。
毎度のことながら、他ならぬ北欧大神ご当人による演出だ……そうして開けられた、部屋から伝わってくる最高神として申し分ない魂の圧、波動。
馴染みのない面々はこれで一気に、それまでの緩んだ空気を引き締めて真剣な顔つきになっていく。
精霊知能にWSO統括理事にも通じるカリスマと威圧、さすがだよオーディン神。密やかに感心しながらも俺もまた、気持ちをしっかりと引き締めた。
さあ、会談だ。
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