魔天世界=テンプレ的なナーロッパ……ってワケ
ミュトスはそもそもどこの世界出身なんだっけ、魔天世界?
──という俺の質問を受けて、彼女はすぐさまうなずき肯定した。
なんの影もない、太陽のようにひまわりのように満面の笑みを浮かべて、今は亡き己の故郷世界について語ってくれたのだ。
「はい、いかにも私は魔天さんの世界から来ました! 現代日本風に言うとコッテコテのファンタジーワールドで、スキルを持った人間達がお宝を求めてダンジョンを巡り闘いを繰り広げる感じの世界でしたよ!」
「ああ……たしかスキルとダンジョンの概念はあそこからだったなあ」
「レベルは断獄世界、モンスターだけは災海世界からなんですよねー。なんていうやら、スキルはともかくダンジョンとモンスターが紐づいてないのはこちらから言わせると違和感ありますー」
三界機構が魔天、そのコアにいた異なる世界のワールドプロセッサが管理運営していた世界──便宜上魔天世界と俺は呼んでいるけど。
どうやらその世界におけるメインプレイヤーたる知的生命体が創り上げていた文明は、かなり良い感じにファンタジーチックなものだったらしい。
スキルとダンジョンの概念がそちらからこちらに流れてきたように、かの世界ではこちらの世界における探査者のような人達が普通にいて、ダンジョンもあったみたいだ。
とはいえモンスターはおらず、何らかの理由で地下に存在しているダンジョンをスキル持ちの冒険者が潜っては、そこに隠されているお宝を求めて互いに戦っていたんだとか。
話を聞いてヴァールと、シャーリヒッタが感心しきりにつぶやく。
「なるほど……こちらではあまりないことだが、かつての魔天世界では能力者同士の争いが当然のことだったのだな。ところ変われば文化も変わるというが、世界が異なれば同じシステムでもここまで運用が変わるか。興味深い」
「へっへへへ! まあ向こうにはこっちみたいなモンスターはいませんでしたから。いたのは広大な土地と群雄割拠の国々、そして地下に広がるダンジョン! そして各地を旅して廻る冒険者達!」
「地下のダンジョンってのァ、自然発生なのか? の割に宝があるってのも解せねェ話だが」
「あー、そこはその、その世界の歴史的な経緯もあったりしたので……話すと長くなるんですけど超古代文明の遺跡とか、あの世界の概念存在達の戯れですとか、そんなので結構ごっちゃしてましたね」
「超古代文明の遺跡……!」
すっごい、ロマンチックな話が出てきたぞ! まさかの超古代文明とかって話に、かつて中二だったがゆえにそういう話もそこそこ好きな俺ちゃん大歓喜だ。
なるほどファンタジー的な世界観だよ、聞いててワクワクしちゃうね。
ちなみにアルマさん的には魔天世界はどういう感じだったんだろうか。いやあの世界を滅ぼした張本人に聞くのは大分グロテスクではあるんだけれど、せっかくすぐ質問できるところにいるんだし一応聞いてみたい感じもある。
というわけで尋ねてみたところ、意外とあっさりアルマも答えてくれた。脳内に響く声。
『魔天世界……まあ別に、特に取り立てて悪いところもない世界だったんじゃない? そこそこの文明とそこそこの完成度で、だから僕も最初に狙ったんだし。ああでも料理は雑だったね全体的に。とりあえず焼くか煮込むかしかなかったよ』
行き過ぎた完璧主義者なこいつの言う"そこそこ"は、翻ってかなりレベルが高いことを意味していると思うんだけどどうだろうね?
少なくとも発展度はともかく安定度合い的には、この世界にも匹敵するほどのものだったんじゃないかって伺わせる感想だ。
だからこそこいつのやったことは赦してはいけないという再認識もするんだけれど……ま、これは言うまでもないことだな。
他にも断獄世界や災海世界についても、こちらはより否定的なニュアンスでだけど語る。
『あーちなみに断獄と災海はそれぞれ別々の意味で僕からすれば終わってたよ。鍛えて鍛えて殺し合いしかしてなかった文明がメインプレイヤーだった断獄に、なんかこう……なんかアレだった災海。あの二つに比べたら僕の世界と魔天のところはまだ、マシだったんじゃないかな。どちらにせよ不完全で許しがたいものだったことには変わりないけどね』
怖ぁ……断獄世界は物騒すぎるし災海世界なんてもう意味がわからない。それさえ滅ぼし喰らい尽くした張本人をしてなんかアレとか言わせるってどんなだったんだ?
いずれの世界についても興味は尽きない。もちろん、アルマ自身がかつて運営していた世界についてもだ。
一番最初に喰らわれてしまった世界、言うなれば自らの子にも等しいその世界についてはさて、どうだったんだ?
『ん……まあ、僕の視点は除いて説明するとしたら蒸気機関に傾倒した世界、こちらの言葉で言うとレトロフューチャーとかスチームパンクに近い形の文明状態だったかな? 機械工業も盛んだったけど、反面メインプレイヤー達の精神性は欲にまみれたものでしかなくなっていた。それそのものは別になんでも良かったけれど、徐々に多様性と発展性は失われつつある世界でもあったね。よくある、不完全なやつさ』
自身の感想、つまり不完全さへの文句は極力省く形で語られるアルマ世界……だけど、それでも結構辛辣なのは逆に思い入れを伺わせるものなのだろうか?
文明についてはそれなりの発展性だったものの、裏腹にメインプレイヤーたる知的生命体達の精神性が限界を迎えつつあった世界、か。
明日は我が身みたいな話にもなりかねない話だ、参考になると冷たいもの言いながらしないわけにもいくまい。
こういう話を聞けるのは、コマンドプロンプトとしては勉強になる。もしかしたら盗み聞きしているかもしれないワールドプロセッサも、そんなことを考えているかもね。
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