伝道師と使徒がウォーミングアップをはじめました……!
ダンジョン最奥まであと一歩というところまで来た。今は4階層目、7部屋目まで攻略したところだ。
残るは二部屋、うち最後の部屋はいわゆる最奥でゴールなので、実質的にはあと一回、8部屋目でモンスターを倒せば踏破も同然ってことになるね。
時間にして二時間と少しかかっていて、今現在は18時を少し回ったところだ。このペースなら18時半にはダンジョンコアを回収できるかな? 報告とか諸々込みで、解散は19時前後ってところか。
ちょっぴり予定より遅れはしたものの特に問題ない塩梅だ。逢坂さん達も多少消耗しているもののまだまだ元気だし、あと一戦はどうとでもできるだろうね。
ただ、そう思っていたんだけど当の逢坂さん達から異論が出た。
もう戦えないとかって話ではなく、せっかくだからという話だと前置きした上で駒野さんが提案してきたのだ。
「もしよければ、御堂さんと山形さんの戦いもぜひ、見せてほしいかなと思いまして! ……正直、こんなふうに一緒に探査する機会も今後あるかわからないし、それなら一度だけでも見学させてほしいなって! 特に御堂さん!」
「失礼な提案になるかもですけど、駒野の言うことは分かります……日本11人目のS級探査者と、世界的に見ても異次元な速度で駆け上がっている麒麟児と。宥さんの戦いは割と見てますけど、お二人の戦いも動画とかじゃなくて肉眼で見られるなら見たいかなって」
「あー、俺はシャイニングさんが気になるかな。御堂さんや宥さんと並んで俺らの探査を見てるけど、実際どんなもんかっていうかさぁ」
続けて真山さん、庄田さんも追随してくる。要はせっかくだから最後の一戦くらい俺と香苗さんでやってみてくれという話らしい。
俺はともかく香苗さんの戦いを間近で見られるなんてのはたしかに貴重だ。周囲にS級探査者の方がいまくってる俺だから麻痺しがちだけど、普通に雲の上の人だからね。
庄田さんだけは何やら俺に興味があるようだけど、たぶんこっちはアレだね、逢坂さんとも多少知り合いな野郎がどんなもんかって確認してやる的なやつだこれ。
すかさず三木さんがため息を吐いた。気だるげに、それでも多少諌める声色で彼に話しかける。
「庄田……もしかしなくてもみっともないこと考えてる? 動画見たことあるんだし分かってるでしょ、シャイニングさんの実力。正直比べ物にならないから変な考え止めときなよ」
「うっせえ違うわ! 逢坂のこと抜きにしても探査者歴的には後輩なんだぞ一応! それが試験官みたく後方で見てるだけってのもなんかこう、いまいち納得しづらいんだよ!」
「ああ……なるほど」
図星な面も多少あるからか、口を尖らせて反論する庄田さん。まあその反応がいろいろ物語っているけれど、それはそれとしておっしゃる理屈も分かる話だ。
一応、元々は香苗さんや宥さん関係無しに俺と逢坂さんパーティだけの探査だったんだ。世代はちょっと下だけど年代的にはほぼ同じ、となれば俺の戦いも見たかったところはあるだろう。
それがまあ、いろいろ伝道とかあってこうして香苗さんと宥さんと三人で後ろから見学するだけのコバンザメ山形くんになっちゃったわけだし。ツッコミの一つも入れたくなるかもねそりゃ。
得心して俺は、だったらと香苗さんに向き直る。
「それなら香苗さん、次は俺とタッグでモンスターの相手をしましょう。俺は逢坂さん達に認めてもらえるだけの動きをするために、香苗さんは彼女達に探査者の頂点に到達した者の動きを見せるために」
「他ならぬ公平くんとでしたら喜んで。私としましても、後進に手本を示すことはやぶさかでもありませんからね。ただそちらの庄田くん含めて逢坂さん達には、ぜひとも今後機会があれば救世の光の伝道イベントにご参加いただければと思いますが」
「まあ素晴らしい! そうですね伝道師香苗、ぜひそうしてもらえればこの子達も我らが救世主山形公平様の素晴らしさを骨の髄から魂の奥底にまでスーッと浸透するように理解し信仰の歓びに目覚めるはず!! さすがです!」
「怖ぁ……」
ナチュラルに入信とか帰依を求めてくるやん。使徒宥さんも便乗してくるけど、またあんまり暴走し始めたら止めるからねさすがに。
一方で庄田さんは即座にうっ……と顔を引きつらせており、自分が虎の尾ならぬ伝道師の伝道スイッチをオンしてしまったと自覚したみたいだ。
周囲の仲間達、それこそ逢坂さんさえも含めてツッコミを入れられていた。
「庄田お前、何してんだマジで……」
「14歳だししかたないけど、迂闊すぎたね。まあ救世の光にはちょっと興味あるし、これも良い機会かも」
「マジ? 玲香アンタ、パーティ内で伝道とかやりだしたらさすがにちょっとあれよ? そこは弁えてね?」
「御堂さんと宥さんの前で迂闊すぎますよ、庄田くん。あの、そろそろ言わせてほしいんですけどその感じ、ちょっと怖いかなって」
「うぐぐっ……!? わ、悪い。ちょ、調子乗っちまった」
「えぇ……?」
これはひどい、またしてもパーティ内に不和が! いやまあ、言葉こそきついところはあるけどみんな苦笑いしつつなので、そこまで深刻でもないとは思うけど。
雉も鳴かずば撃たれまいとはまさしくこのことなのだろうか? 俺はひっそりと、伝道師と使徒の前でいろいろ言っちゃった庄田さんを生温かい目で見ていた。
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