サービスエリア特有のグッズいいよね……
学校を終えて放課後、今日は全探組施設に向かう。ダンジョン探査をするかはともかく、依頼を確認して受けられそうなら受けておくのも探査者の仕事のうちだからね。
いつも探査についてくる、香苗さんは残念ながら今回はいない……昨日の打ち上げ終わりに言っていたとおり、エリスさんや葵さんとともに今日一日、首都圏からこっちに向けて移動している最中なのだ。
特に急ぎの旅でもないということで、ゆっくりと各サービスエリアを巡りつつのドライブ旅らしい。
時折グループチャットのほうに写真を載せて、感想を述べたりされているのがなんとも楽しそうだよ、三人とも。
『サービスエリア満喫なう。ハッハッハー、たこ焼き美味しいー』
『はっはっはー！ 焼きそばおいしー！ あ、関西のみなさんにもお土産買いますよ、なんか剣に竜が絡みついたキーホルダーとか人数分』
『修学旅行の学生がよく好んで買いがちなアレですね……さすがに人数分はちょっと』
『怖ぁ……』
サービスエリアっても大きいのから小さいのまでいろいろあって、小さいところでは風景写真とか自撮りを。大きいところでは売店や食事処で購入した食べ物やら土産物やらを写してチャットにアップロードしている。
いやたこ焼きに焼きそば、うまそうだなあー！ キーホルダーもよく見かけるアレだ、土産としてもらえるならもらっとくけど人数分ってまさか精霊知能達の分もあったりするんだろうか？
微妙に面白い絵面だな、揃ってドラゴンのキーホルダー身につけてる山形家……
ともかく、次々送られてくる画像に想いを馳せつつも。俺は学校を終えるや否やバスに乗って駅に向かい、そこから電車で一路全探組施設にまで向かったのである。
上記の経緯から今日は完全に一人での探査だ。こないだのように宥さんが同行してくれるとかって話もないからね。
サクッと終われそうな規模のダンジョンを見繕って、夕方の一時間二時間くらいで片付けるか、あるいは土日に集中して取り組めるような規模のをいくつか先取りしてみるか。
施設に入り手続きを済ませて、依頼検索用のパソコンが置かれているブースに入る。
すっかり慣れたもんで、俺は依頼条件を適切に入力して該当するものを検索していった。
「この近辺で、AからC級のダンジョンでなるべく階層と部屋数の少ないやつ……と。おお、やっぱ結構あるな」
画面にはズラリと依頼が並ぶ。さすが大ダンジョン時代、一地方の一地域の一町村の範囲でもかなりの量、ダンジョンがあるぞ。
ここから、これならいけそうだなーって依頼の詳細を確認して、受諾申請を行って。そしたらダンジョン探査の開始という流れだね。
こうした俺の一連の動きは概ね、ワークライフバランスを意識している探査者としては一般的なものだ。
学生探査者とか、他にもプライベートでやることがあったりするタイプの探査者さんはみんな、こんな感じで活動してくれている。
ガチで数日から数週間かけるような規模のダンジョン探査は、それこそ大人になって専業になってからかな？
いやでもリンちゃん曰くスポット参戦みたいなのもあるようだし、機会があるならそっちにも手を出してみたいかもなあ。
考えながらも程よい長さのダンジョンを選択。
階層7、部屋数41か……B級ってことで身の丈にも合ってるし、ここにするかな？ 普通に取り組んでもまあ2時間くらいで終わるだろうし。場所も近くの商店街で、終わる頃にはちょうど18時とかそんなもんだろう。
よし決まり。俺はパソコンから受諾申請用の小さなタグを印刷して立ち上がる。後はこれを受付に持っていけば手続き開始だ。
さあ行くぞそら行くぞ、と歩き出す。途中、談話室の前を通り過ぎるあたりだ──不意にそちらのほうから、俺を呼ぶ声が聞こえた。
なんじゃらほい？
「あっ、公平さん」
「ほわ？ ……あ、逢坂さんこんにちはー」
談話室のなか、何人かの男女に囲まれて一人、立ち上がり俺を見るその子。なんか久しぶりに見る顔な気がするぞ、逢坂美晴さんだ。
宥さんの弟子で、たしか今はD級だね。リッチ事件の頃からの知り合いで、その後もドラゴン退治とか竜虎大学のイベントとかでも割と行動をともにしたりする探査者の友人さんである。
今から探査かな、いやむしろパーティのみなさんと雑談？
彼女は優子ちゃんと同じクラスだし、まさか学校サボって探査なんてしてないだろう。どちらかだね。
……と、彼女の向かいの席にいる男性に目が向く。なんだかこちらも見覚えがある方だ。ついこないだもサークル絡みでお会いしたぞ。
目を丸くして、俺はそちらの方にもお声がけする。
「え……小早川さん？ 竜虎大カレチャの、小早川さんですか？」
「はい。いかにも竜虎大学カレッジサーチャーズ副幹事長の小早川です。お久しぶりです山形さん……久しぶりにこちらに足を伸ばしてみれば、将来有望な若手と話せるばかりかあなたとさえ出会えるとは。今日はどうやら吉日のようです」
厳しいマッチョな体格に紳士的なスーツ姿。温和な笑みを浮かべつつも喜びと驚きを隠せない様子の彼は小早川さん。
竜虎大学のカレッジサーチャーズに所属されている方で、探査者でもある方だね。彼もまたゆっくりと音を立てずに立ち上がり、惚れ惚れするような姿勢のよさで俺に会釈してきた。
これまた、珍しい組み合わせだなあ。
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