スーパーパワー、だからこそ棲み分けは大事
「父様の文化祭! もちろんオレも行くぜーっ!!」
「はいはいはーい! リーベちゃんも行きまーす!」
「先輩の御二方に加えてヴァールさんも行くんでしたらもちろんこのミュトスもご一緒しやすとも! いやー学園ドラマみてたもんで、学校って気になってたんですよねーうへへへへー」
「へ、へえ……」
そんなこんなで帰宅してその晩、みんなでテーブルを囲んでの夕食をいただきながら。
山形家の精霊知能達がそんなふうに勢い込んで文化祭訪問を表明するのを俺は間近で見聞きしている。
今日の晩御飯は鳥の天ぷらだ。サクサク衣にしっかり火の通って引き締まった鶏肉が歯ごたえ抜群かつジューシーだ、美味しい!
味変にポン酢なんてかけたりもしつつ白米とともに美味しく頂いていると、優子ちゃんや父ちゃん、母ちゃんも精霊知能達の宣言に反応していた。
「外部の来訪客ありってのが良いわねー。私らもその日は休み取って行くからよろしくー」
「東クォーツ高校! 山の上の緑豊かなところにあるのがいいよな、自然に囲まれての学校生活なんて羨ましいぞ」
「私も一応、東クォーツ高を受験するつもりだしちょっとしたオープンキャンパスみたいな感じかも。てか兄ちゃん、演劇だからっておもむろに舞台上でシャイニングしたりしないよね? さすがにそれは他人のふりするよ?」
「するかそんなこと! 一応照明担当だけどきっちり機材使用だよ、それなりに触らせてももらってるし」
我らが母校に乗り込むき満々の家族だけど、まさかの舞台上シャイニング俺ちゃんを期待してそうな節があるのできっちり否定しておく。
例の演劇では俺は小道具作成および照明担当なんだけど、当然ながらスキルや称号を使って演出に寄与したりはしないのだ。
探査者のそうした力を私的利用することを許さないさやかちゃん先生の意向であり、かつそもそも法律に引っかかりかねないからね。
そんなわけで俺もあくまで一学生として、体育館の舞台裏に設置する予定の照明機材を一通り触らせてもらっていたりする。なんかあの、やたら数のあるつまみを上下するあの機材だ。
いや実際のところはシンプルなもんで、決められた二つのつまみを適当なタイミングで上げ下げすれば良いだけなんだけど。
それはそれとしてリハとかで動かしていても楽しかったのは事実だ。ああいう機械のレバーとかスイッチをガチャガチャ動かすのってなんか手練れ感あってカッコいいよね。
「とまあ、そんなわけなんでさすがに俺自身が光源になったりはしないよ。ていうか、そんなことしたら法律とかにも引っかかりかねないし」
「探査者のスキル、称号は探査業以外の場面での濫用ってのが認められてないもんなあ。たしかに、どこでも公平が光るようになっちまったら電気屋さんはもしかしたらおまんまの食いっぱぐれかもしれん……なんてのは言い過ぎにしてもだ」
「そういうこと。俺達の力は、適した場面でのみ使われるべきだからね」
「きゅー? きゅう、きゅう」
言いながら箸を動かす手を止め、俺のすぐ隣の席にちょこんと座って鶏天をもそもそ食べるアイの背中を優しく撫でる。
きょとんとしつつも笑いかけてくるミニチュア・ドラゴンの姿に一同がひどく癒やされつつも、俺は父ちゃんの言葉に軽くうなずいた。
あるいはさやかちゃん先生もこないだ言ってくれたように、探査者の力は基本的に日常生活のなかでは濫りに使ってはいけないと国際的な枠組みで決められている。
どちらが上とか下とかって話では絶対にないんだけれど、それはそれとして能力者のステータスはやはり、人間社会のなかでは特異にすぎるから。過去にはその扱いを巡って世界大戦まで至ったこともあり、法による区分というのは厳しく設けられているのが現状だ。
母ちゃんが続けて言う。
「ステータスって本当にすごいものね。公平が探査者になってから改めて思ったし、同時に昔の戦争が起きた理由もちょっぴりだけ、納得したところはあるわ」
「あははー……まあ、それもあってシステム領域、といいますかソフィアとヴァールが能力者の私的利用を制限するように仕向けましたからねー」
「ま、餅は餅屋ってェわけですよオペレータも非オペレータも。それぞれにそれぞれの務めってやつがあるんですから、ダンジョンとモンスターの相手こそがオペレータの仕事ってわけです。ねっ、父様!」
「まあねー。まあ、それも今後どう変わっていくかは読めないけどさ」
肩を竦める俺ちゃん。シャーリヒッタの言う通り、システム領域としてはまさにそんな理屈なんだよね。
ダンジョンもモンスターも、オペレータにしかどうにもできない類のものだ。であればオペレータの使命や責務なんてのは、これはもうダンジョン探査以外にないわけ。
だから今現在の社会ではこうして探査者はダンジョン探査のみを行うってことになってるんだけど……それもこれから未来永劫続くってわけじゃない。
何しろ大ダンジョン時代は、少なくともシステム領域の観点からすると終わったからね。今は後始末の時代なんだよ、本質的には。
今後、数百年かけて異世界の魂達を受け入れるまでは、今の形はある程度存続するだろうけど。
そこから先は俺にも見通せるものじゃない。まさしく誰にも分からない未知なる未来だからだ。
最低限言えるのは、その時が来るまでやはり、オペレータと非オペレータはそれぞれ区分しておくべきなんだろうね。
人間として、コマンドプロンプトとして俺は、静かにいつか来るその日に想いを馳せるのだった。
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