とてつもなく大量の有名探査者が文化祭に集まってくる!
ファストフード店で喋ること一時間ほど。もう夕方もいい時間なのでそろそろお開きにするかあってことで各自解散し、俺は電車に乗っての帰路に着いた。
比較的近所に住んでいる梨沙さんも一緒だ。実のところ彼女はいわゆる高級住宅街にお住まいのお嬢様で、マジで育ちが良かったりする。
ギャルギャルしい見た目だけど、どこか漂う気品と優雅さはそれゆえなんだろう。
もちろんそういうのと関係なく優しくて人を思いやる温かな心を持った素敵な女の子ではあるんだけどね。
夕暮れの道を、二人並んで歩く。一応暗くなってきたら危ないし、一緒に帰るってなった時には毎回梨沙さんのお家まで送る感じにはなってるね。
秋の夕暮れは仄かに温かさと涼しさが入り混じり、ホッとするような、淋しいような色合いが静かに木霊している。赤く照らされた空に、流れる風もどこか切なく感じられる。
風情だねえ。
しみじみとしたものを覚えながらも、俺は梨沙さんと話していた。
「それじゃあ文化祭には公平くんのお仕事仲間さん達も来るんだ? 外部来客者ありだもんね、たしか」
「一応そう聞いてるよ。例によって香苗さんを筆頭に、まあ何人か探査者の先輩さん達が。マリーさんやソフィアさんも下手したら来るかも、なんか反応してたし」
「うわ、ゲストよりゲストしてる……WSOの重鎮が二人にS級探査者さんだなんて、普通の学校のイベントになかなかお呼びできないよ」
「だよねー……」
話題はもっぱら文化祭関係なんだけど、とりわけその話を聞いてグループチャットにて反応を示した何人かの探査者仲間達についてが主だ。
というのもうちの文化祭、外部からの来客もアリだもんで香苗さんを筆頭に、我らが母校を訪問する気満々な方々が結構いらっしゃるのだ。
『偉大なる救世主山形公平様の母校すなわち聖地における催事これはつまり救世の光にとってまさしく神事と言えましょうしかも外部からの来訪者さえ受け入れるというのであればもはや行かない選択肢などあるのでしょうかいえありません!!』
『山形様の母校、良いですねえ。溜まっている仕事を片付けて、スイスに帰る前に行けたら行きたいです』
『香苗ちゃんが行くなら私も行こうかね〜。公平ちゃんの学生生活を見学するのも楽しそうだ』
『お酒は出ますか?』
『出るわけ無いだろう……学び舎だぞ』
『酒飲み、自重!!』
『怖ぁ……』
とまあこんなやり取りが今朝からちょくちょくグループチャットで行われていたりする。
ていうか酒なんて出るわけないだろベナウィさん、サウダーデさんとリンちゃんに即座にツッコまれてるのがなんというかさすがって感じだね。
一方でソフィアさんについてはあれだ、先日の騒動の後始末をそこそこに終えたらいよいよスイスに帰り、統括理事としての仕事が溜まっているからそれをこなさなきゃならないみたいらしい。ヴァールも以前、そんなことを愚痴ってたし。
とはいえそれももうあと少しの辛抱とか言ってたけど。どうも本格的に引退というか隠居に向けていろいろ、引き継ぎを始めるとか言ってたからね。
なんなら隠居したら日本に定住するとまで言ってるもの、あの子。俺の家の近くに土地を買って、家まで建てるとか。
大ダンジョン時代が終わりを迎えたこともあり、ソフィアさんの使命も終わりを迎えた。となると彼女はどこかのタイミングで本来あるべき形、すなわち輪廻に還るべきではあるんだけれど……ことが終わればハイさよなら、というのはあまりに悪い。
危機の去った世界を。平和な時代を、守り抜いた未来を。まずはソフィアさんが堪能しないで一体誰が堪能するのか。
そういうヴァールの願いもあり、これからしばらくソフィアさんは、思い思いの自由を楽しむ生活に移れるように動いていくようだった。
「でも、そうなると公平くんもますます人気に火が付くね!」
「えっ? 俺ぇ?」
「すっごく偉い人とか、探査者のトップな人達がみんなして公平くんを訪ねるんだよ? 今でも校内で有名人だけど、いよいよ関口くん超えしちゃうかも!」
「それはないんじゃないかなあ……さすがに関口くんレベルはちょっと」
我がことのようにはしゃぐ梨沙さん。彼女こそ校内で先輩同輩問わず人気のあるマジモンのコミュ強パリピリア充なんだけど、そんな彼女からすると俺ちゃんも結構人気あるとかなんとか。
まあ、良くも悪くも目立ってるからね。変にミーハー的な人気はネットでもだいぶあるし、そのへんはうなずけなくもない。例のカルト宗教の件もあるから。
ただ、だからといって調子にはなかなか乗れないよね。だって俺のすぐ近くにはちょっとおかしいレベルで人気の高い関口くんがいるんだから。
最近ではイケメンすぎる探査者とかって注目浴びだしてるみたいで、なんかネットのテレビ番組とかバラエティとかにも出るかもみたいなことまで囁かれだしてるもの。
普通にファンクラブまであるような次元の違うイケメンと、さすがに人気で張り合う気にはなれない。
これで今や探査者としても真剣かつ真摯に取り組んでるんだから、なんかもう普通に尊敬しちゃうよね。
「ま、俺はこうして梨沙さん達と一緒にいられるくらいの生活が好きだよ。楽しい学生生活を送らせてもらってる、ありがとうね」
「それはこっちのセリフだよ……いつもありがとう。お疲れ様、公平くん」
世の中の人気があろうとなかろうと、俺にとっては梨沙さんやみんなと仲良しでいられることのほうが大切だ……そう本音を言うと、夕日に照らされた彼女は美しく微笑む。
夕暮れ時の寂しさなんて、いつしかどこかに消え去っていた。
【宣伝】
コミカライズ版スキルがポエミー3巻、5/2に発売予定です!
最終巻となりますのでぜひともよろしくお願いしますー!
「大ダンジョン時代クロニクル」第一次モンスターハザード編完結!
https://ncode.syosetu.com/n5478jx/
第二次モンスターハザード編はお盆頃にスタート予定です!
よろしくお願いしますー
「大ダンジョン時代ヒストリア」100年史完結しました!
https://ncode.syosetu.com/n5895io/
よろしくお願いいたしますー
【ご報告】
攻略! 大ダンジョン時代 俺だけスキルがやたらポエミーなんだけど
書籍版、コミカライズ版併せて発売されております!
書籍
一巻
amzn.asia/d/iNGRWCT
二巻
amzn.asia/d/aL6qh6P
コミック
一巻
amzn.to/3Qeh2tq
二巻
amzn.to/4cn6h17
Webサイト
PASH!コミック
https://comicpash.jp/series/d2669e2447a32
ニコニコ漫画
https://sp.seiga.nicovideo.jp/comic/63393
pixivコミック
https://comic.pixiv.net/works/9446
電子版、書籍版、コミカライズともに好評発売中!
よろしくお願いしますー!