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微妙にややこしい歴代聖女の流れ

 宴は始まりお祭り騒ぎの夜は続く。俺もジュースをカパカパ飲みつつも、精霊知能達やダンジョン聖教の人達と語らいながら食事を堪能して大いに良い気分を満喫している。

 特に神谷さんからは席が隣ということもあり、意外なまでにいろいろ話しかけられたりしているよ。

 

「それでは山形様の学校ではもうすぐ、文化祭が行われるのですね。ふふふ、学生らしいイベントで楽しそうで素敵です」

「そうなんですよ、来月の頭にやるんです。そのさらに一週間後には体育祭もあるんですけど、そっちは僕は探査者ってことで基本、見学と応援メインですね」

「ステータス得た以上はどうしてもそうなるか。どこの国でもそのあたりの事情は同じようだ」

「私が学生の頃でも、探査者はスポーツ関係の授業は見学でした。非能力者とはどうしても次元の違う動きができてしまうので、仕方ない話ではありますが寂しかったですね」

 

 オールストレムさんやウィリアムズさんをも交えて話すのは、もはやあと半月を切った文化祭についてのアレコレだ。

 ついでに体育祭もあるんだけどそっちは基本ノータッチなのよね、だって探査者だもの。と話したところ、文化祭もそこそこにむしろ体育祭のほうが反応が良かった。どうも日本だけでなく他所の国でも、探査者の授業風景なんてのは大体似通ったものらしい。

 

 つまりは探査者である以上、運動関連は基本自習の時間って形式のことだ。

 何しろ常人の数倍以上の身体能力を誇る以上、非能力者達と明確な形で比較めいたことをするのはいろいろ憚られるところがあるからね。

 

 ステータスの有無が人間の価値や優劣を決定するなんてこと、断じてあり得ないしあってはいけないんだけども。

 どうしたって近くに能力者がいたら、非能力者の方々としては比べたり意識しないではいられないのも仕方ないところではある。


 そこから無用の諍いや争いが発生しないとも言い切れないし、歴史を紐解けばまさしくその果てにあったのが能力者大戦なんだ。

 そのへんの、極めてデリケートな部分を加味すれば──ステータスがダイレクトに関係してくる身体能力関係なんてのは、大ダンジョン時代社会においては真っ先に能力者への制限を設けている部分だったりした。

 

「体育の時間も、基本俺やもう一人、クラスにいる探査者の人は見学したり教室で自習です。彼はともかく俺は元からして体育とか運動はあまり、興味のない分野なので助かってたりはしますけどね」

「なるほど……実のところ、高校生活というのは馴染みがありませんでしたので、なんだか新鮮に思えて興味深い話です」

「え。そ、そうなんですか?」

「はい。私が探査者になったのもあなたと同じ年の頃でしたが、直後に二代目のラウラ様に見出されて聖都モリガニアに移住したので。そこからは基本、海外暮らしですから」

「ひえぇ……」

 

 見るからに興味津々に俺の話に耳を傾ける、神谷さんの語られた御自身の来歴に納得とともに畏怖の念を抱く。

 この人、人生の大半を日本の外で暮らしているんだね。そりゃ馴染みとかもないわな、高校生活に。


 俺だったら、いくら見出されてスカウトされたからって海外に移住したりなんてのはまず無理かなあ。できなくはないけど、意欲としてはやはり日本国内を拠点にしていたい思いはある。

 シンプルに慣れた土地を離れる気にはならないしね。実家サイコー。少なくとも今しばらくはこうして地元で学生しながら探査者をしていきたいってのは、漠然とながら考えているよ。

 

 っていうか、神谷さんの師匠にあたるのが二代目のラウラ・ホルンさんなんだな。エリスさんの妹分であり、事実上のダンジョン聖教の開祖。

 だってのにこの人自身は三代目聖女ではなく五代目聖女なのだから、なんか複雑なやり取りがありそうだ。差し支えなければと伺ってみると、神谷さんは特に隠すことでもないようで苦笑いしながらも説明してくださった。

 

「たしかに、私の師匠は二代目様です。であれば筋から言えば三代目であってもおかしくなかったのですが……姉弟子のマルティナのほうがラウラ様から見て、次代に相応しいと判断されました。それゆえですね」

「三代目さんは神谷さんの姉弟子さんなんですね。ええと、じゃあ四代目に、とかって話には?」

「それもありませんでしたね。四代目にはマルティナが見出して私が弟子として育てたフローラ・ヴィルタネンが就任しました。ですが彼女が太平洋ダンジョン探査に赴く際に聖女を引退する運びとなりまして……その時に私以外に候補がいなかったということで、不肖ながら五代目を賜ったという流れなのですよ」


 つらつらと語られる歴代聖女の簡単な経緯。

 どうもややこしい話だけど、要は神谷さんの聖女就任がイレギュラーなんだな。四代目から五代目にかけてだけが世代逆行してるし。


 おそらくは三代目候補として見出された神谷さんが、けれど聖女になったのは五代目。

 三代目はほぼ同世代、四代目は弟子。そして六代目も──そこまで考えて、ということはと気付き俺は、神谷さんを見た。


「師匠からじゃなく、弟子から聖女の称号を受け継いだんですね…………というか、その話からするとヴィルタネンさんとアレクサンドラは」

「年の離れた、姉妹弟子という形になります。どちらも私が、手ずから育てましたから」

「五代目様は三代目様、四代目様の政治を献身的に支え、かつ四代目様と六代目様……あえてここではそう呼ばせてくれ。そのお二人を育てられた。間違いなく偉大な指導者であり教育者でもあらせられるのだ」

 

 なんとまあ……

 歴代聖女の人間関係の、ほぼ中心にいた神谷さんという存在の大きさ。あるいはダンジョン聖教そのものを支え続けた彼女の功績は、アレクサンドラに騙されたという瑕疵さえ含めてもなおすさまじいものだ。

 まさしく偉大と言うしかない彼女に、俺は改めて敬意を抱いていた。

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― 新着の感想 ―
フローラさんの話題になったら、風間くんやロナルドさんも巻き込まないと。
2025/04/21 06:54 こ◯平でーす
つまり神谷さんは後方腕組面(語弊)─────縁の下定期だったけどやむなく一時的に上に出ざるを得なかったサポート特化なわけですね〜?(戦闘スタイルゴリラだけど····)
>>運動関連は基本自習 山形くん…というか、優子ちゃんの同級生には違う意味で自習になりそうな女子が…(なんとなく同情の目)。 むごい…。 ・山形くんの一人称、最初は「僕」だったのが、次からは「俺」に…
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