※A級最強モンスターには諸説あります
酒が飲めるぞー! と息巻くミュトスと、意味が分かっているのかはさておき、楽しそうに鳴き声をあげるアイ。
いい感じに緩い空気の一人と一匹のハイテンションを皮切りに、俺達システム領域組はダンジョン聖教組のお隣の席に着いた。
神谷さん、ウィリアムズさんの隣に俺。オールストレムさんの隣にヴァール。そしてそこから俺側にシャーリヒッタとリーベが、ヴァール側にミュトスとアイが座る構図になる。
必然、というかそれを見越してなんだけど神谷さん達もこうなるとこちらに向けて反応せざるを得ないわけで。反省会は一旦置いといて、彼女達もまた挨拶してきたのだ。
「みなさまお疲れさまでした。この度はダンジョン聖教が大変なご迷惑をおかけしたこと、改めて──」
「そういう詫びは公的なものだけでいい、十分だ。打ち上げなのだからそろそろ陰鬱なやり取りはやめておけ、神谷。オールストレム騎士団長も、己の行いを反省しているならばそうすべきだ」
「は……はい。山形殿、しかし改めてもう一度言わせていただきたい。かの折は本当に大変なことをしてしまい申しわけなかった。騎士として以前に人として、私は間違っていた」
「あ、いえ。あの、まあ、誰に対しても人相手なんでってのだけ思っといてもらえるとそのー、良いかなーって思うんで。下手しなくてもあの場でオールストレムさんが、殺人ってことになっちゃってたかもしれませんので」
なおも頭を下げようとする神谷さんを、すかさずヴァールが押し留めた。
これ以上は打ち上げの場にそぐわないし、政治的なアレコレを含めてのものとも考えると公的な形ですればそれ以上は蛇足ってことだね。
一方でオールストレムさんも最後に短く、俺に向けて謝ってくる。
返り討ちにしちゃったとはいえ剣を持って自分の意志で斬り掛かってきたわけだし、ましてや政治的立場のない一般探査者にそれをしたのだから謝罪の一つもしないでは気が済まないんだろう。
さすがにやったことの重大性というか、実際におまわりさんに捕まってしこたま怒られたほどのことに対していやー気にしてませんよへっへっへ! と言うのは憚られる。
下手にそんなこと言って、あ、じゃあこれからもやって良いんだなとか思われても──もちろんそんな方じゃないってのは信じるとして──その可能性があるだけでも困る。
なので多少オブラートには包みつつ、言うだけは言ってみる。あまりこういうの、偉そうで好きじゃないんだけどね。
ただ、下手したら殺人だったよ? ってのは自覚はあるみたいでオールストレムさんも深く項垂れながら何度もうなずき、後悔した様子を見せている。
だったらもう、俺からこれ以上言うのもおこがましいだろう。彼に笑いかける。
「謝罪を受け入れるってのもなんか偉そうなんですけど、とにかくこの話はこれでおしまいにしましょう。お疲れさまでした、オールストレムさん」
「……ありがとう、ございました。君の言葉、思いやり、真心。あのようなことをしでかした私にまで心を尽くしてくれるその姿。翻って我が身の愚かさを今一度深く、深く反省するよ」
「ありがとうございます、山形様……オールストレム騎士団長はこの後、フィンランドは聖地モリガニアにて改めて処罰を受け、騎士団および自らの改革と鍛錬に励む予定です。どうか悔い改めて贖罪の道を歩く彼を、厳しい目で見ていていただければと思います」
「え。え、いやその……怖ぁ……ご無理なさらず頑張ってください?」
まさかのなんか、処罰的な何かを受ける予定らしいオールストレムさんを示唆する神谷さんに震える。誰もそこまでしろとか言ってないよー。
でもまあ、組織内での示しとかもあるんだろうしそこは俺がとやかく言うことでもないしね……騎士の方がどういうお仕事をされているのかは存じ上げないけれど、なんか知らんけど頑張るということであれば無理だけはしないでねとしか言えない。
微妙な空気。向こうの席ではそろそろ料理の用意がされ始めていて、割烹着の店員さんが矢継ぎ早に入れ代わり立ち代わりテキパキとテーブルにドリンクをはじめ、皿やお箸や鍋やらその他料理やらを並べていっている。
飲兵衛組とうちの家族がそれを見てテンション上げてたり、若手組が香苗さんの伝道をBGMに和気藹々と語らっていたりと楽しそうなのにこっちはなんでこうなった?
ヴァールがコホン、と咳払いをした。
「もう良いだろう。それではこの話はこれにて終いだ、後は宴を楽しめ……と。葵! そろそろ音頭を取ってくれ」
「だからやっぱりA級最強モンスターはプルプルヴェリンドンなのかなーって思──あ、はーい! 分かりましたー」
「プルプル……何?」
話を区切るのと、いい加減用意も出来てきたのでってことだろう。幹事の葵さんに呼びかければ、エリスさんやリンちゃんと同席して何やらモンスターについて熱く語っていた彼女はそれに応じて即座に立ち上がる。
プルプルヴェリンドン、って何? 聞いたこともないユニークネーミング感あふれるモンスターの名前に、そっちのが気になっちゃう俺ちゃんだ。
ともあれ、葵さんが立ち上がればみんなそちらを向いて静まり返る空間。
貸切だから他にお客さんはいない。独壇場さながらに、今回も活躍してくれた能力者犯罪捜査官のお姉さんは挨拶しはじめた。
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