宴の席で反省会するの止めろ(正論)
ダンジョン聖教の先々代、つまりは五代目の聖女である神谷さんと、騎士団長のオールストレムさんと騎士のウィリアムズさん。
三人も座敷の奥まったところに座っており、こちらに向けて軽く会釈をしつつも、引き続き何やら話し合いをしていた。
手前の、すでに出来上がってる組に比べて格段に静かというか重い空気だけど、なんだ?
見ればオールストレムさんなんかガチガチに縮こまっちゃってるし、ウィリアムズさんも俯いてしゅんとしているんですけど、怖ぁ……
「……こと我々に限っては今回の宴、心から楽しむことのできないものであることはすでに分かっていますね? オールストレム騎士団長、ウィリアムズさん」
「は、はい……」
「アレクサンドラにまんまと騙され、しかも暴走した私。彼女を追うシャルロット様を諌めることもせず追従し、挙げ句向けるべきでない方に剣を向けた騎士団長。総じて、今回の事件に関して何も成し得なかった我々。立派に成長なさったシャルロット様に比べ、なんという不甲斐ない話でしょうか」
「忸怩たる想いでいっぱいです……私も、騎士として果たすべきを何一つ果たせぬまま、この国の探査者の方々が事件を解決するのをただ見ているだけでした」
えぇ……? なんだこれ、反省会してるよこの人達。
道理で空気が違うわけだ、神谷さんてば部下捕まえてガチ説教とガチ自省しちゃってるんだもの。これはこれで空気読めてないもの、若干。
たしかに今回、ダンジョン聖教起点の騒動だった割にはダンジョン聖教があんまり目立ってはいなかったのは俺の目から見てもうなずける話だ。
なんなら余計なことばかりしていたイメージが強いまである……暴走していた頃のシャルロットさんが率いる形で、殺人まで厭わない勢いなのを見ているからね。
ていうか俺もオールストレムさんに斬りかかられたしね。
剣へし折っちゃって気まずかったなあで済ませてるけど、あんなの普通に人間としては相当ヤバい行いで、実際あの後あの人は警察のご厄介になって結構絞られたって話も聞いている。
神谷さんも神谷さんでアレクサンドラを止めるためって言って勝手な単独行動をしちゃってたし。
正直、シャルロットさんのみならずダンジョン聖教って組織そのものが過激派を追う中でヤバい方向に行っちゃってたんじゃないかって疑いはあるよね、普通に。
とはいえ、今はそれらをしっかり反省というか受け止めて変わろうとされているんだし。何より、アレクサンドラはきっちり捕まって、組織そのものへの信頼はともかくこれまでの日々に戻っていけそうなんだし。
ひとまずはそれを喜び、今後に活かすべく前向きに建設的な話をすれば良いんじゃないかなあ?
同じ思いらしいヴァールが、呆れも露に俺へと話しかける。
「神谷はまったく、良くも悪くも真面目すぎる……どうあれ切り替えが必要なところを切り替えられずに引きずっているな、あれは。山形公平、彼女達の隣が空いているから我々はそちらに座ろうか」
「あ、ああ。そうだな……」
「公平サンに刃物向けやがったやつかァ。いっぺん締めとかにゃならんたァ思ってたんだ。ちょうどいいぜェ……!」
「どひぇー物騒! でもそんなことしたんならそれはそうなりますよねー」
「ならないって! シャーリヒッタはオールストレムさんと離れた席に座りなさい。せっかくの打ち上げで揉めるくらいなら、俺が話を聞くから」
どうもヴァールとしては、打ち上げの席でまでああいう感じでいられるのも嫌みたいだ。隣りに座ることを促すあたり、自分が割って入って空気を変えるつもりなんだろう。
うちの家族はサン・スーンさんの近くに。アンジェさんとリンちゃんと神奈川さんは香苗さんやシャルロットさんの近くに座り始めているから、たしかに俺と精霊知能達は座るとするなら神谷さん達の隣か、さもなくば距離を開けてぽつねんと離れた座席だ。そりゃ座るよね、ダンジョン聖教組の隣に。
ただ、以前の話を受けてオールストレムさんに絡もうとしていたシャーリヒッタにはきちんと釘を刺す。
せっかく楽しい宴になるのにそういうのを持ち出してほしくなければ俺をダシにしてほしくもないし、そもそも彼はすでに警察にこってり絞られて反省してるからね。
愛剣をへし折っちゃったってことでこちらからもまあまあ返り討ちにはしちゃってるので、これ以上何かをしたらそれはこちらのやり過ぎでしかない。
というわけで大人しく俺の隣でいなさいと言ったところ、シャーリヒッタはぶーたれるどころか嬉しそうに笑って俺の隣に寄り添ってきた。
「分かりました! へへっ、公平サンのお隣ゲットだぜ!」
「さ、策士ー!? ヴァール、ミュトスちゃん見ましたか今の、シャーリヒッタってば搦手使って公平さんの隣を確保しましたよー!?」
「そこまでする必要があるのかというのはさておき、そうしていてくれると助かる。下手な揉め方をするなよ、後釜もミュトスも。お前達と彼女らの間には、ワタシと山形公平が挟まろう」
「ありがとうございまーす! うっしっし、こんないい雰囲気のお店でどんなお酒が飲めるやら、うししし!」
「きゅう、きゅうきゅう!」
どうやらシャーリヒッタなりの策というか、俺の隣に座りたいのをいろいろ理屈を捏ねてみたみたいだな。全然構わないし彼女の頭を撫でる。
反面リーベがピーピー言い出したけど、それも華麗にスルーするヴァールのクールさよ……ミュトスはミュトスでアイを抱きかかえてコメディチックな笑顔を浮かべて酒に想いを馳せているけど、この際彼女の姿勢こそが一番TPOを弁えていると言えるね。
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