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モンスターの素材って家屋にも使えるんだ、すげー!

 WSO統括理事の引退意向という、電撃的な爆弾発言に凍りつくアンジェさんと葵さんをよそに。さらに続けてシャーリヒッタとミュトス、神奈川さん/ステラ、そしてリンちゃんがやってきた。

 ひとまずこれで全員、例の居酒屋のあるフロアまで来れたわけだね。ヴァールが肩をすくめ、自分のせいでフリーズした若手二人の肩を叩く。背が届かないから若干背伸びしてるのがなんだかかわいいぞ。

 

「アンジェリーナ、葵。驚かせてしまったのはすまんがそろそろ我に返れ、店まで行くぞ。もう目と鼻の先だ、いろいろ積もる話もあろうがそれは打ち上げが始まるまでとっておいてくれ」

「あ……す、すみません! 葵、ほら案内するわよ」

「は、はっはっはー! そ、そですね! すみませんみなさん、件のお店はこちらでございまーすはっはっはー!」

「? アンジェと葵のやつどうしたんです、父様」

「まあ、これについてはヴァールもちょっと急だったかな……」

 

 事情を知らないシャーリヒッタが首を傾げて聞いてくるので、かくかくしかじかぴんぽんぱんぽーんと軽く経緯を話しつつ案内に従い歩き出す。

 ヴァールも別に悪くはないんだけど、世界一と言って良い権力者がいきなり引退しまーすと脈絡もなく言い出したらそりゃフリーズもするよね。自分の影響力について若干無頓着なきらいがあるのは、精霊知能としての立場もあるゆえかはたまた元来の性格ゆえか。

 

 ともあれ通路を行けばすぐにたどり着くその店。和風の料亭って感じの店構えで、ビル内なのに日本庭園をイメージした小さな池まで作ってるような凝ったつくりをしている、いよいよお高そうなお店だ。

 店の中からは結構な数のオペレータの気配がしていて、もうみんな集まっているのが分かる。幹事の葵さんがさっさと玄関の暖簾をくぐれば、すぐにスタッフさんだろう割烹着の女の人が出迎えてくれた。

 

「ようこそお出でくださいました。本日貸切ご予約の方でしょうか?」

「はい、早瀬で18時半から予約してますね。私合わせて12人の、えーっと事前にお話してたんですけどちょっと特殊なタイプのペットが一匹……」

「はい、お話はフランソワ特別理事とサン・スーン事務総長からもお伺いしております。貸切ですので入っていただいて構いませんが、店内を汚すようなことがありましたら別途お代をいただくこともありますのでそこはご承知いただければと……」

「ご丁寧に恐れ入ります。重々気をつけます」

 

 テキパキと話をつける葵さんの姿は手慣れていて、そう言えばこないだの倶楽部案件の打ち上げの際にもこうして幹事してくださってたことを思い出す。

 コミュニケーション力つよつよな彼女は、こういう場面で誰よりも頼りになるんだよね。


 なんなら世界中どこの街に行ってもこんな感じに生活面を支えてくれるみたいだし、そりゃエリスさんが頼りにするのもうなずける。

 単純な戦闘力でないところにこそ葵さんの真価はあるんだってことも言ってたしね。この師弟、互いに互いをリスペクトし合っていてなんだかほっこりするよ。


 ペット枠のアイに対するご配慮までいただいて、許可してくれたお店に対してもそうだけど感謝に堪えない。

 話を通してくださったマリーさんとサン・スーンさんに後でお礼言わないとねー。アイの頭を撫でる。


「きゅう、きゅう」

「スマートねー、葵ってば。尊敬するわ」

「はっはっはー! おだててもハグしかでませんよ? さあさみなさん、どうぞお入りくださいー」


 アンジェさんも感心する鮮やかなやり取りを経て、葵さんが俺達に店内に入るよう促してくる。いよいよ入店だ。

 相変わらずビビってる妹ちゃんは俺の、母ちゃんは父ちゃんの背中に身を隠しつつ……俺達は入っていった。日本料亭そのものって感じの、柔らかな灯りの中に広がる和の光景。

 

 派手すぎない程度に明るく、落ち着いているけどどこか幻想的に照らし出される店の中。まずはカウンター席が見えてくるけど、みんなの気配はさらにその奥、座席から感知できる。

 お鍋料理がメインらしいだけあって、なんだろう出汁っぽい匂いもしてくる。けれどその中にたしかな存在感を放つ、椅子やテーブルなど座席に使われてるんだろう木材の香しい薫りにも気づく。

 

 微かながら、森林の奥底を想起させる匂いだ……

 地味に相当良い素材で出来てるんじゃないか? 俺ちゃんでもハッキリ分かるぞ、このクオリティの高さ。

 

「ふむ、初めてくるが凝っているな。家具にもモンスターの素材を使っているか」

「あ、やっぱそうですよねこの匂い。A級のディープグリーン・フォレストがたまに落とすめっちゃ良い薫りのやつですよねこれ」

「半世紀経っても新鮮な緑の香りを放つと言われて、ここ数年で価値が暴騰してる木材ですね、はっはっはー! ここのお店の売りのひとつで、料理に先駆けて深い樹木の薫りを堪能できるって評判なんですよー」

「へえー……」

「たしかに……すごくいい匂い。リラックスする……」

 

 ヴァール達が言う通り、どうやら通常でないもの、モンスターの素材をふんだんに使っている内装のようだ。

 日常生活から各種産業に至るまで、モンスターの素材をふと見かけることは結構あるけど……居酒屋さんでも使われてるんだなあ。

 

 優子ちゃんが大きく息を吸って吐いて、濃厚な自然の香りを味わい落ち着いていく。

 リラックス効果も期待でき、日本的なお店の雰囲気にもマッチしている素材をフルに活かした内装、か。

 なるほど、凝ってるなあ。

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― 新着の感想 ―
一般人には来ることのできない超高級店。 山形一家は恐れおののくがよい(笑) まあ、公平がSランクになれば、いつでも入れるようになれますけど。 兄が(Sランクを約束された)探索者で、高収入が確定している…
ホントに探査者格付けチェックみたいになってる……! 低級モンスターの物が使われているやつと区別がつかなかったら接待のランクが落とされるやつだ……!
2025/04/12 08:36 こ◯平でーす
森林の香りの中で鍋を続けるのは贅沢〜
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