時間が押してるのに伝道師は連れてこられない。蓋し正論である
「はっはっはー！ お疲れさまです山形さん御家族御一行様！」
「関西からはるばる首都までようこそ……って言いたいけど、公平なりリーベなりの空間転移でひとっ飛びなのよね。ステラもだけどホントチートだわ、あんたらのそのパワー」
「現世であればどこでも一瞬だからな。コマンドプロンプトのソレともなればもはや、次元の境目すら越えるほどだ……よく来たな、山形家の者達よ」
テントを出た俺達に、待っていましたと言わんばかりに話しかけてくる一団。早速のご登場だね、俺の友人知人に仲間達。
相変わらず軽快に笑う葵さん、空間転移のチートっぷりに呆れ顔すら浮かべて微笑むアンジェさん、そしてそれに反応しつつも相変わらず無表情なヴァールがまずは出迎えしてくれた。
さらには耽美系イケメンから厨二系イケメンにクラスチェンジを果たした、銀髪メッシュにオッドアイな神奈川さん/ステラ。
戦闘時のチャイナ衣装ではなくダボッとしたストリートファッションに帽子、ネックレスをいくつも装着した非常に現代都会っ子なオシャレさんことシェン・フェイリンちゃんも一緒だ。
それぞれ揃って俺達に挨拶してくれる。
『便利すぎてオペレータには通常、与えられない類の権能だからね。あ、お疲れさまです山形様、リーベさんにシャーリヒッタさんにミュトスさんも。私の千尋はここにいますよ』
「べ、別段俺を推す必要はないと思うんだが……あ、お疲れさまです。こんな形ですが神奈川千尋です」
「星界拳正当継承者にして真道星界拳、天覇のシェン・フェイリン推参！ です！！ ニーハオ、みなさん！！」
「こ、個性豊か〜……」
誰一人として俺みたいな地味さとは無縁のド派手五人組。外国から来られた方もいるから余計に多様性に溢れた感じの彼ら彼女らに、優子ちゃんが若干オドオドして俺の後ろに隠れ気味にながらもつぶやいた。
母ちゃんに似てるのがこういうところなのよね。見ればご当人も父ちゃんの後ろに隠れ気味だし、身内には強いけど余所行きになると文字通りよそよそしくなるのは、まさしく血筋ゆえってやつかね。
ま、俺や精霊知能達にとっては普通に仲良くさせてもらっている仲間なんだけども。
こちらからも会釈とともに挨拶する。ドーモ、山形公平デス。
「お疲れさまですー。すみません、ソフィアさんからのお誘いということで家族も連れてきましたー」
「葵ちゃんもアンジェちゃんもお久しぶりですー！ 神奈川さんにステラちゃん、リンリンも元気してましたかー？」
「ヴァールのやつも……いるな！ おう妹よ、元気してたかァ！ っつうか香苗はいねえのな、珍しい」
「はろはろにゃちわ、ミュトスです！ 今日も今日とて元気日和、どんちゃん騒ぎで飲み食いしましょーう！！」
個性豊かな相手方に、負けじ劣らずこちらも個性的な面々だ。リーベ、シャーリヒッタ、ミュトスが立て続けにはしゃげば、ノリの良い葵さんやリンちゃんが呼応して騒ぎ始める。
もうすでに宴の様相だ。酒も入らずこれなら、これは打ち上げが始まったらすごいことになりそうだなあ……
と、ヴァールが近づいてきた。シャーリヒッタの軽口に応えながらも、無表情なりに柔らかな雰囲気で俺と家族の近くにまで来る。
ソフィアさんとこの子こそ、今回の打ち上げの主賓みたいなものだろうに。わざわざ出迎えてもらっちゃって、なんだかありがたいやら恐縮やらだよ。
「山形公平、急な話にもかかわらずよく来てくれた。御家族のみなさんもだ……感謝するよ。ちなみに御堂香苗は来たがっていたが私が止めた。打ち上げ開始までそう時間はないのだから、いつもの調子で長口上を打たせるのもな」
「いやいや、むしろこちらこそ誘ってくれてありがとう。家族みんな、今日はご厄介になるよ。あと香苗さんについてはそっか、そっかー」
「お、お世話になります！」
「WSO統括理事にタメ口の我が息子……事情は分かるけど絵面的に身の程知らず感すごいな……」
すっかり当たり前のやり取りをヴァールとするんだけど、しげしげと後ろからその様子を眺めていた父ちゃんが感心しきりにポツリ。
たしかに俺自身、結構マヒしがちかもだけどWSO統括理事なんだよな、この子。そんなのとタメ口で親密にやり取りしてたらそりゃ、親としては気が気じゃない部分はあるかもね。
さておき、ひとまずこうして合流はできた。後は打ち上げ会場まで案内されて、ほかのみなさんとも合流して晩御飯と洒落込むだけだ。
シリアスな事情なしに首都圏来るの初めてな気がするから、なんだかいつもより気持ちが軽い。今日は食べるぞー、どんな料理が出てくるか分かんないけど！
「ちなみに今日行くお店ってどんな感じの店なんだ？ いつぞやみたく創作料理系？」
「ん……たしか鍋物主体の居酒屋だったはずだ。幹事を任せている葵、そうだな？」
「ですでーす！ はっはっはー、もうそろそろ夜風が身に沁みる秋ですからね。こんな日は鍋をつついて日本酒熱燗をきゅーって締めましょうって感じです。はっはっはー！」
「良いですよね、鍋！ 私もランレイも今日は飲むわよ、葵！！ もちろんアンタも付き合いなさいよ、千尋！」
ちょっとヴァールに聞いてみたところ、なんと今回も幹事をされているらしい葵さんがスラスラ答えてくれた。
鍋かあ、涼しいを通り越してちょっとずつ寒くなってきた今日この頃には、ちょうどいい冬の入りだね。アンジェさんも勢い込んで神奈川さんを巻き込もうとしているし、なんだか楽しそうな飲み会になりそうだ。
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