山形ー!宴会行こうぜー!(唐突)
なんか久しぶりにも思える、こんな穏やかな午前の朝、雑談。俺のことから優子ちゃんのことまで、探査のことから日常のことまで思いついたことを流れのままに口にして、そこからつらつらとトークを行う俺達山形家。
今日の午前はこんな感じで過ごすのかな。父ちゃんも母ちゃんもテーブルでのんびりしてるし、どこかのタイミングで俺の部屋に移動しても良いかもしれない。
たまには夫婦水入らずってのも、良いと思うからね。
「────うん? 電話だ、しかもソフィアさん」
「きゅうきゅう? きゅうー」
「天下のWSO統括理事から普通に電話かかってくるって兄ちゃん、地味にやばいよねー」
と、その時不意に懐のスマホが鳴動して俺は取り出し確認した。着信、相手はよもやのWSO統括理事ソフィア・チェーホワさんだ。
まったりした空気のなかでのことだから、膝下で丸まってぬくぬくしているアイも軽く顔を上げ、優子ちゃんも呑気なトーンでぐでーっとしつつも反応する。
ううむゆるふわ山形家……などと思いつつも電話に出る。俺の左右に座っているリーベとシャーリヒッタも気持ち、密着してきて耳を澄ませているね。
まさか追加で問題発生! なんて話かもしれないし、そうなったらすぐ動けるようにしたいので俺としても助かる。ミュトスにも目配りすればすぐにうなずき、気を引き締めてくれる。
できれば呑気な話が良いなあ、と思いながらも。
俺はとりあえず電話に出て、ソフィアさんあるいはヴァールに応じたのであった。
「もしもしー。山形ですけどー」
『お疲れ様です、山形様。ソフィアです、先日はどうもありがとうございました』
「あ、いえいえー。ソフィアさんもお疲れ様ですー」
『今、少しばかりお時間よろしいでしょうか? サークルおよびダンジョン聖教過激派を壊滅させたことを受けての、軽い打ち上げ会についてお話したく思いまして』
声の主はソフィアさん。いつも通り電話越しにも伝わる清楚さ、お淑やかさだ。
それでも大ダンジョン時代社会を牽引してきた辣腕らしく、さっそく本題から入るのはさすがだ。打ち上げ……ウーロゴスを巡る戦いにおける、お疲れ様会についての連絡と相談らしかった。
いや、これソフィアさんが直接電話かけてくるようなことなのか? 特にトラブル発生でなかったことを喜ばしく思いつつも、リーベやシャーリヒッタと顔を見合わせる。
まるで連絡役みたいなことをしているけどこの人、世界一と言っていい権力者さんだからね。普通そういう話は部下というか、他の誰かにさせてもおかしくはないと思うんだけども。
不思議がる俺を、電話越しにでも悟ったのだろう。
ソフィアさんはくすくす笑って、湧き出る疑問に答えてくれた。
『他ならぬ山形様には、私自らがお電話差し上げるのが筋であり道理であると思っていますよ? うふふ……私の次のアドミニストレータでありワールドプロセッサ様の対となるコマンドプロンプト様であるあなたには、礼を尽くしても尽くしても尽くし足りませんもの!』
「怖ぁ……あの、そう大袈裟に捉えなくとも。今ここにいる俺は結局、新人探査者の山形公平でもあるんですから。こうしてあなたからお電話いただくこと、とても光栄に思ってますよ」
『うふふふ! そう仰ってくださるあなただからというのもあります。私と対等以上の立場で語らってくれる方なんて、もはやあなたと精霊知能の方々くらいのものですから』
「ソフィアさん……」
言葉の端に滲む、深い孤独と寂寞。通常ありえないほど長い時を生きてきた末、誰よりも偉い人となった彼女にはもう、本当の意味で対等と言える存在も数少ないのだろう。
年齢的な意味でもエリスさんすら超えてるからね。ましてや統括理事という役職に、永遠の探査者少女として半ば神格化されている状況で……俺や精霊知能という、言ってしまえば明確な上位存在はある種の救いなのかもしれなかった。
であれば、俺としてはもちろん彼女のそんな心に応えたい。
こうして電話越しにも語り合う友達だからね。微笑みとともに、ソフィアさんへと言う。
「……対等ですよ、友達なんですから。改めてお電話ありがとうございます。打ち上げ、喜んで参加させてもらいますよ」
『ふふ、ありがとうございます! ええと、一応あの戦いの参加者全員を集めての打ち上げは半月ほど後にするつもりなのですが、その前に軽くパーティーなどを行いたいと葵ちゃんやアンジェリーナちゃんが言い出してまして。もう居酒屋の予約も取ってるそうですよ? 今日の夜』
「あはは、あの人達らし……今日の夜!?」
「急すぎねェかァ?」
打ち上げ自体はやぶさかでないものの、にしたって今夜かよ! シャーリヒッタも思わず驚きを口にするほど、いきなりすぎる展開だ。
葵さんとアンジェさんならなんとなし、即断即決でそういうことをしそうなイメージはあるけど、ソフィアさんまでまさかこんな急に話を進めてくるとは。シンプルに驚きというかビックリだ。
ただ、ソフィアさんもそこは苦笑いをこぼしているみたいだった。
ため息混じりに、仕方のない子達とぼやくように説明する。
『私もつい今しがた、そのような連絡を受けました。直後にエリスちゃんとマリーちゃんから謝罪の連絡が来ましたよ……猪突猛進でせっかちな弟子や孫で申しわけない、と。うふふ、私としてはこのくらい向こう見ずなほうが実は好みなのですけどね?』
「そ、そうなんですね……」
『なんでも貸切で、しかも参加者にはかなり余裕を持たせているそうですから関係者をお連れいただいてもまったく構わないとのことです。山形様もどうでしょう、ご家族の方をお連れしては? 急な話ですから困惑なさるかもしれませんが、ぜひともご一考くださいませ』
「は、はあ。少々お待ちください、今聞いてみますのでー」
怖ぁ……師匠と祖母に尻拭いさせちゃって、葵さんとアンジェさん叱られてないかなあ。ソフィアさんはむしろ喜ばしく思ってそうだしほどほどにしといたげてね? って感じではあるかも。
それはともかく、まさかの家族同伴OKとのことだ。たぶん首都圏でやるんだろうけど、豪快なこと言うね。
いきなりの話だし、さてどうなるかなあ。
そう思いつつも俺は、テーブルにて座る両親に声をかけた。
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