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攻略!大ダンジョン時代─俺だけスキルがやたらポエミーなんだけど─  作者: てんたくろー
本編

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イチャイチャしてんじゃねぇ!!!!!!!!!!

 リンちゃんがものすごーく燃えてやる気になっている、決戦スキル継承の儀に向けてのダンジョン探査。

 俺としても香苗さんとしても、断る理由がないためもちろんソフィアさんの依頼を引き受ける。ベナウィさんも同様だ。

 

「レディ・シェン……というか、彼女の一族については私も多少、知ってはいましたからね。私と関わりのあるものとは思いませんでしたが、こうなれば喜んで協力しますよ」

「ん……ありがとう、ございます。コーデリア、さん」

「ベナウィで構いません。コーデリアは姓なのですが、どうにも女性の名と思われがちですので。余計な誤解を招く恐れがありますからね、ははは」

 

 控えめに笑う、ベナウィさんの立ち居振る舞いはまさしく大人だ。知的で冷静で、しかしクールでなく温和で優しい。

 背の高さからどうしても威圧感はあるんだけど、それを加味してもやっぱり、穏やかな人って感じだ。

 そんな彼は、それにしてもと呟いた。

 

「まさかミス・チェーホワが150年前から生きる方とは……それに、アドミニストレータとオペレータ。何とも荒唐無稽ですが、事実とは得てして突拍子もないのが常、なんでしょうね」

「まったくです。特に公平くんが、アドミニストレータ──探査者の前身たるダンジョン管理責任者の後継者だなんて。軽々に私にも明かせないわけです」

「香苗さん……すみません」

 

 複雑そうに香苗さんがぼやくのを、俺は謝る他ない。

 ようやく話すことができたけど、香苗さんからしてみれば、最初から言ってくれればってなもんだろう。俺の言うことを大概信じてくれるし、口も硬そうだから実際、その選択肢もないではなかった。

 

 だけど、やはり違うと思ったのだ。無条件に信じてくれそうなこの人だからこそ、又聞きとか推測なんかを話して、振り回すようなことはしたくなかった。

 俺への信頼に、付け込む行為だと思うからね。この人を、そういう裏切り方はしたくない。

 

「どんな理由があるにせよ、香苗さんにすら話さなかったのは俺自身の意思と選択によるものです。だから、ごめんなさい」

「……こちらこそ、変に大人気なく、責めるような物言いをしていましたね。ごめんなさい」

 

 何にせよ非は俺にもある。ゆえに頭を下げたんたけど──香苗さんは、そんな俺に近寄り、そっと頭をかき抱いてきた。

 えっ!?

 

「なっ……か、かかか、かなえしゃん!?」

「あなたは、たった一人で大きすぎるものを抱えているのに……私は、私個人の感情で。なんて情けない、伝道師の名が泣きます。あなたのやることに、意味や価値がないはず、なかったのに」

「ちょ、ちょっあの、あのぉ〜!?」

 

 そんな名前はギャン泣きさせておけ! と、考えることさえ覚束ない。

 暖かなぬくもりが、顔いっぱいに広がる。何とは言いませんけど、豊かな大地が俺を包み込む。柔らかい。いい匂い。

 ああ、俺の後頭部にまで腕が回されてるぅ〜。顔が火照る、嬉しい〜!

 

「あら、あらあら大胆。最近の子は、進んでいますのね……」

「ラブシーン! ドラマで、見た!」

「愛ですねぇ。ふふ、妻との若かりし日を思い出します」

「? ベナウィさん、奥さんいるの?」

「ええ。娘も三人います。見ますか? スマホに写真を、ストレージの半分くらい埋める勢いで収めています」

「見るー」

 

 外野がほのぼのし始めている……!

 さすがに恥ずかしくなってきて、名残惜しいが俺は香苗さんを引き剥がした。見れば、彼女も頬を赤らめて、それでも残念そうにしている。

 

「もう少しそのままでも良かったのですが……いいでしょう。とにかく、公平くんは悪くありません。おかしな態度をとって、すみませんでした」

「そ、その……こちらこそごめんなさいってことで。あの、これでおあいこってことで」

「ふふ、そうですね。私と公平くんは、おあいこです」

 

 照れながら笑い合う俺たち。つかの間、流れる緩やかな平穏の空気。

 それを打ち破るのは、これまた気まずげな烏丸さんだった。

 

「こほ、こほん。それで、ですねみなさん。件のダンジョンの詳細について、話させていただきたいのですが」

「あっはい。すみませんなんか」

「いえ、お気になさらず。もう何やら、麻痺しかけていますよ、ふふふ」

 

 乾いた笑みが痛々しい。さすがに、立場的にこの中で唯一、俺にほとんど関わりない人だといたたまれないよなあ。

 それでも気丈にというか、どうにか平静を取り繕って烏丸さんは、探査するダンジョンに関する書類を取り出して、俺たちに説明してくれた。

 

「場所は当WSO日本支部施設から300m離れたところにある、雑居ビルの地下。調査により、D級相当のダンジョンと予測されます。階層は2、部屋数は5」

「この面子でしたら、道中に問題はなさそうですね。というか最深部でその、スキル保持者が待っているって言うんなら、モンスターも処理済みだったりしますか?」

「いえ、そこは違うのです」

 

 烏丸さんが言うには、俺たち──俺と香苗さん、リンちゃん、ベナウィさん──が急拵えのパーティを組むにあたり、あえてダンジョン内のモンスターを残しているらしい。

 そいつらを、言い方は悪いが使って、連携や互いの戦い方に慣れてほしいとのことだった。

 

「ずいぶん、気を遣ってきますね」

「試練ではあっても、嫌がらせではないですもの。みなさんが最善を尽くせるよう、こちらとしても色々していますのよ?」

 

 ソフィアさんはそう、たおやかに笑って言った。

この話を投稿した時点で

ローファンタジー日間4位、週間4位、月間2位、四半期1位、年間9位

総合月間17位、四半期13位

それぞれ頂戴しております

本当にありがとうございます

引き続きブックマーク登録と評価の方、よろしくお願いいたします

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