そのうち自力で真実に到達できちゃいそうな人達
相談ごともある程度一段落して、一応自分なりに思うことがあったようでリンちゃんはこの場を離れた。
次にヴァールやリーベのほうに向かったあたり、この場にいるみんなの意見を聞くつもりなのかもしれない。とても良いことだ、いろんな立場の人達の声も聞いて、彼女なりにより良い方法でのS級探査者への道を模索していってもらえると嬉しいよ。
「……フェイリンさんのことはさておいて。せっかくの機会だ、今度は私から質問良いだろうか、山形さん」
「アッハイ」
ほんのり後方兄貴面して、リンちゃん頑張ってね……と腕組みうなずきモードに浸っていた俺ちゃんに、今度は先程まで質問に応じていた側の愛知さんが問いかけてきた。
この人、そもそもからして俺に何か用事があって香苗さんとここに来ているみたいだからね。こうして対面に座る形になって他に話すこともないとなれば、そりゃさっそく本題に入るか。
まあ、質問の内容は大体察しがつくよ。伝道師としての期待を込めた瞳で俺を見る香苗さんを横目に、彼女へと向き直る。
意を決した様子で愛知さんは、その質問を提示した。
「君、いえ、あなたは一体ナニモノなのですか? これまでに得られた情報を断片的に考えて、どう考えてもただの人間ではないと私は結論づけました。概念存在、それも最高神から創造神クラスの方……あるいは彼らが時折口にする、それ以上の存在ではないか、と」
「…………あなたは」
「お気に障ったならお赦しを。答えられないのならばそれでも構いません。ただ、問いを投げかけることだけはさせていただきたかったのです。北欧大神ともつながりがあり、明らかに探査者の枠組みを超えた力を持ち、権能さえ使う御身について……不躾ながら、尋ねずにはいられませんでした。平にご容赦を」
矢継ぎ早に持論を述べて、謝意すら見せる愛知さん。
そりゃそうだよね。さすがにいろいろお見せしすぎたんだ、いい加減俺が純粋な人間、単なる探査者ではないってことには当然気づくよねー。
っていうかやっぱこの人、創造神クラスとも付き合いあるんだな。それも匂わせ喰らうほどに深い付き合いさえ持ってるんだよ。
怖ぁ……下手すると独力でシステム領域にまでたどり着きかねないぞ、この人。
まあ、とはいえそもそもこれは、愛知さんからすれば抱いて当然の疑念と確信だ。なんならそれを、ここまで恐縮しながらの形でお話いただいたこっちのほうがいたたまれないよ。
散々匂わせといて質問されたことが気に障るなんてあるわけがない。少なくとも俺はそこまで理不尽じゃないし、むしろいい加減腹を決めるのに良い後押しにすらなってくれたほどだ。
S級探査者、愛知九葉。人類最高峰のオペレータの一人にして、最高神や創造神とさえ交渉している節が見受けられるほどに極まった召喚系スキル保持者。
おそらくは俺の関係者を除き、世界で一番概念領域と概念存在に詳しいだろう人間たる彼女にならば、その人柄をも信じた上ですべて打ち明けることもやぶさかではない。
何より、この戦いをともに切り抜けた仲間だからね。そしてこれは、今まさにこちらに近づいてきている彼女にも言えることだ。
最初こそそれぞれの立場から対立したりもしたけれど、最後にはともに手を携えて巨悪を打ち倒すべく力を合わせた人──ダンジョン聖教七代目聖女、シャルロット・モリガナさんだね。
「山形さん。もしも愛知さんにご自身の素性についてお話するおつもりならば、できれば私にもお聞かせ願えませんか?」
「シャルロットさん」
「私から見ても、あなたは明らかに普通の探査者ではありません。最初こそ御堂さんや統括理事と不可解なつながりを持つ謎の探査者程度に思っていましたが、今となってはあなたこそ、我らダンジョン聖教が崇める神がもたらした御使いなのではないかと考えるほどです」
「ダンジョン聖教の神……ですか?」
「はい。この世に、人類への恩寵としてダンジョンやステータスをもたらした絶対無二の至高神。しかして悪魔の手先、モンスターがその邪魔をすべくダンジョンを乗っ取り、かくしてこの世は至高神より力を授かった人間と悪魔の尖兵たるモンスターとの戦乱期に突入した……というのが大まかなダンジョン聖教の神話です」
さすが聖女らしく、楚々として歌うように自分とこの宗教の神話について解説してくださる。
ダンジョン聖教の崇める神と、それにまつわる大ダンジョン時代創世神話……驚くべき話だが、これが意外に核心を突いてる部分がチラホラ見受けられるな。
至高神とやらをシステムさんことワールドプロセッサ、悪魔を邪悪なる思念に置き換えれば構図は割と合ってるってやつだ。
いやさすがに細かく話すとまるで別の話なんだけど、大まかな対立構造自体はそのままシステム領域の話にスライドできかねない程度には解像度が高い。
さすがに恩寵ってのは誤解だし、むしろ現世からすれば迷惑極まりないのがダンジョンでありモンスターなんだけれど……
ダンジョン聖教を興した二代目聖女のラウラさん、たまたまの発想だろうけど勘が良いなあ。さすがはエリスさんの後継者さんってところだろうか?
さておき、まあせっかくだし愛知さんだけでなくシャルロットさんにも知っておいてもらおうかな。俺はここに来て、思い切った判断を下した。
この世の真実について。そしてアレクサンドラが本当の意味で何をしでかしていたのかについて、彼女達にも話そうってね。
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攻略! 大ダンジョン時代 俺だけスキルがやたらポエミーなんだけど
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二巻
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コミック
一巻
amzn.to/3Qeh2tq
二巻
amzn.to/4cn6h17
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