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フェイリンよ、君急ぎたまふことなかれ

 正直、まーた句読点飛ばして救世主の素晴らしさとやらを延々と語っては、愛知さんとリンちゃんをドン引きさせたりしてるんじゃないかなーとか。

 そんな、香苗さんに対して失礼なんだけどこれまでの実績と経験からどうしてもせざるを得ない予想をしつつ、三人の下へ向かったわけなんだけど。


 意外なことに香苗さんはむしろ話す側でなく、聞く側としてリビングの窓際の椅子に座っていた。

 愛知さんともども、リンちゃんの相談に乗っていたのだ。

 

「────A級にまではトントンとなれましたけど、むしろ私的にはここからが本番。S級になるために、もっと上を目指すために必要なこと、せっかくですしお二人からも聞いておきたいです!」

「ふむ? ……素晴らしい向上心です、フェイリンさん。A級になってまだ数ヶ月というのに、もうS級を見据えているのですね」

「はい! 過去、シェン一族にもA級探査者は数人いました。もう引退してますけど、姉ちゃんの師匠シェン・カウファンさんに私の師匠シェン・ラオタンさん。実力的にはもう私のほうが上、ならばS級にだって届き得るはず!!」


 力強く訴えるのはリンちゃん。つい数ヶ月前の7月頃、めでたくもA級に昇級した天才探査者なんだけど……

 さすがというべきか、すでにS級を目指していろいろ頑張り始めているみたいだ。


 シェン一族が過去、輩出してきた探査者にもA級の方はいらっしゃったってか、なんの因果かランレイさんとリンちゃんそれぞれの師匠さんらしい。

 つまりはリンちゃんにとり、S級探査者になるというのはこれ以上なく明確な形での師匠超えでもあるってことだね。それゆえか、いつになく気合十分な様子で問いかける姿に、香苗さんはしきりに感心し、愛知さんも気圧されたように確認していた。


「ええと、中国の探査者一族、シェン……過去多くの探査者を輩出してきたとされる名門の、フェイリンさんとランレイさんは最新の世代なんだね」

「はい! そして私は星界拳正当継承者にして真道星界拳の始祖! 一族96年の悲願、すなわち"完成されしシェン"です!」

「そ、そうなんだ? ……一族の事情は分からないけど、フェイリンさんが相当な実力者なのは見ても分かるよ。正直、近接戦闘ならすでにS級相当じゃないかってほどに極まってるのも分かる……だろう? 山形さん」

「! お、お疲れ様でーす」

 

 リンちゃんにとってのアイデンティティでもあるのだろう、星界拳正当継承者であることとか一族の悲願たる"完成されしシェン"の体現であることとか。

 そういうのを力説するわけだけど、詳しい経緯なんて知る由もない愛知さんからするとなんのこっちゃってな感じで若干首を傾げている。

 

 まあ、そりゃあそうなるよねーと思いつつ近づけば、愛知さんから助けを求めるような視線とともに呼びかけられてしまった。

 相変わらずライダースーツで胸元を開けたセクシー赤髪お姉さんスタイルなんだけど、実のところこの姿はスキルで変装してるらしいっぽいんだよなあ。

 地味に正体が気になるこの人の、声に応じて近づいて挨拶。するとすぐに香苗さんがその場で膝をついて祈るようなポーズをして、俺に何やら祝詞を唱え始めた。

 やめてよ!


「おおこの世の救い主山形公平様ようこそお出でくださいましたいつもいつでも伝道師たるこの御堂香苗は一日千秋の思いであなた様の御降臨を待ちわびておりましたよ!!」

「怖ぁ……ではなく。今はリンちゃんの質問に応えるべきですし、探査者として振る舞いましょうよ! ねえ愛知さん、リンちゃん!」

「えっ? ……あー、まあ。正直、どう言えば良いのか分からないけどまあ、うん」

「公平さん! 公平さんからもアドバイスほしい! A級探査者になれたけどここからS級を目指すのにどうやって行けばいいと思いますか?」

「いや俺B級なんですけど! 聞かれても困るんですけど!?」

 

 おお阿鼻叫喚。いつも通りの香苗さんはともかく愛知さんはすっかりついて来れてなくて生返事だし、リンちゃんはリンちゃんで前のめりすぎて俺にまで質問してくる始末。

 俺なんか君、今年の春に探査者になったんだからそんなん分かるわけないじゃないの。逆に聞きたいよ、なんでたった半年で俺はF級からB級にまで上がっちゃってるんですか? って。

 

 まあとはいえ、せっかく話に混ぜてもらえたんだし知りません存じませんで通すのも味気ない。改めて香苗さんを落ち着かせつつ、隣の席に座る。

 リンちゃん、愛知さんを対面に臨む形で一息ついてから、俺は切り出した。

 

「……普通に考えて、リンちゃんならそのままのペースで普通に探査続けてたら順当にS級になれると思うけど。愛知さんもおっしゃるように、実力的にはS級でもおかしくないんだし」

「そもそもA級になったばかりなのですし、そう急ぐものでもないと私は思いますが。フェイリンさんもまだ14歳でしょう、ゆっくり歩むべきですよ?」

「む……急ぎすぎ、ですか?」

「御堂さんの言う通りだよ、フェイリンさん。私も変な速度でS級になった身の上だから偉そうに言えないけど、地道が一番の近道だというパターンはいくらでもある」

 

 そもそも気が逸ってる感じだし、焦るとは違うけど変に急ぐ必要はないよね。

 他ならぬS級のお二人も俺の意見に同意のうなずきを見せてくれたし、そこまでおかしなことは言ってないと思う。


 リンちゃん自身もちょっと思い当たるのか、そこでようやっと冷静になったようで深く考え込む。

 14歳なんて若さだし、いろいろ急ぎたくなるのかもしれないけれど……別に期限があるわけじゃなし、たまにはのんびりやれば良いんじゃないかなあ。

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― 新着の感想 ―
必要なのは知名度かな。 周囲にこの人はS級にふさわしい、S級になれば良い広告塔になる、などと思われる必要がありそう。 その点、シャイニングは全国区で有名人だからいつS級になってもおかしくない。
愛知しゃんは“いんたぁふぇいさぁ”にはならないんですの? 概念存在を召喚できるのに公平の正体を知らないことに疑問がありますよね。(普通なら気づくはずのことにも気づかない、ラブコメの鈍感主人公でしょうか…
いまのリンちゃんはちょっと力に溺れているから、落ち着くまではS級は無理、というか危険かなぁ。
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