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STELLA of HEAVEN

「な……なんだ、その姿は。なんでお前と、ステラが一つになっている! なんのトリックだ、ふざけるなぁっ!!」

 

 我を取り戻してか──未だ錯乱状態なのに変わりはないものの──激高して叫ぶ瀬川。神奈川さんとステラが一心同体になったのを心眼でも察して、怒りに震えている。

 あるいは自分こそが、ああなりたかったのかもしれない。悪魔セーレと愛し合い、結ばれ、果てに存在そのものまで一つになるような光景を、夢見ていたのかもしれないな。

 

 けれどそれらはすべてまやかしだった。悪魔セーレは徹頭徹尾自分の見たいものしか求めていなかったし、瀬川はただ仲間や悪魔に翻弄されるがまま、ここまで来てしまった。

 ボロボロで満身創痍の、敗れ果てた姿。瀬川聡太はもうすでに、心の底から完全に敗北していた。

 

 だっていうのにまだ終わろうとせず、神奈川さんを道連れにしようとする。そんな彼にはもう、同情以前にさっさと捕まって病院で療養してから法の裁きを受けろという感情だけが色濃い。

 神奈川さんも同じ思いのようだった。手にした新たなる聖剣、本体の柄と鞘のどちらにも付いている持ち手部分を両手で握りしめて腰を落とし、構える。

 にべもなく、彼は瀬川を否定した。

 

「もうこれ以上、やり取りする気はこっちにゃねえぜ、瀬川」

「なんだとッ!?」

「いい加減終わらせる。俺とステラは一つになった、もう誰にもこの愛は止められない。お前のことさえ置き去りにして、俺達は新しい在り方で新しい道を切り拓く……邪魔なんだよテメェは、どけよッ!」

「貴、様……! 貴様だけが、のうのうと幸せを手にするのか……!!」

 

 力強く叫ぶその姿に、誰もが目を奪われる。神奈川さんと、彼の持つ聖剣の周囲にはたしかに、星の煌めきが輝きを放っている。

 ステラだ……《星明りの聖剣》発動時には、彼をサポートするように光となって傍にいるんだな。己の存在を変質させてでも、愛した人の力になることを選んだんだ。

 

 もはや、今の瀬川ではどうにかできる段階にない。精霊知能としての神奈川さん/ステラは、新生したことでレベルは1になっているけど間違いなく力強さを増していた。

 アンジェさんとランレイさんが、新たな門出を迎えた二人の背中を、押す。

 

「よーっし! やったりなさいな千尋、ステラ! 自分の道は自分達で拓く、素敵で無敵よ、アンタ達!」

「迷いなく進め、我らが友よ! どんなに長い道のりだとしても、いつでも行く末を照らす星の光がお前を導いてくれているのだ、千尋!」

「アンジェ、ランレイ……ありがとう。いつか、お前達と肩を並べられる俺達になったら。今度はきっと、俺達のほうがお前達の力になるよ」

『アンジェリーナ・フランソワ! シェン・ランレイ! ありがとう、私達にとってもあなた達はかけがえのない、最高の友達です!』

 

 どこまでも爽やかに、祝福と激励を送る能力者犯罪捜査官コンビ。神奈川さんにとってもステラにとっても素晴らしい友人達がこうまで応援してくれているんだ。

 負けるわけがない、負けられるわけがないよな。


 構えた神奈川さんの身体から、聖剣に力が込められていく。ステラの星の煌めきが、同様に纏わりつく。

 鞘に納められたままの剣はしかして輝きを放ち、力を増していく


 かなりのエネルギーだ!

 それに、この性質は……!?

 

「っ────ふは、ふははははっ! 戻った! 戻ったぞバリアがッ!! セーレさんの力が、再び僕にぃっ!!」

「!? 瀬川、まさかあのインチキバリアのクールタイムが終わったってわけ!?」

「ここに来てか! おのれどこまでもしぶとい、いい加減に終われというものを!」

 

 不意に哄笑をあげる瀬川の、身体が目に見えないバリアに守られて行く。

 悪魔セーレによる敵意の一切をシャットアウトする、インチキバリア。アンジェさんとランレイさんに破られてから十分な時間が経ったのか復活したんだな。

 

 それを見て歯噛みする面々だけど、もう大丈夫。

 聖剣──異世界から来た"概念存在殺しの聖剣"。その真価は、今ようやっと発揮されようとしているんだから。

 どこからともなく響く声。ステラだ。

 

『聖剣の本来の機能、すなわち概念存在完全否定機構はすでに全解放されてる──"オーソリティ・キャンセラー"。問題なく、セーレの権能は効果そのものを完全に否定されたよ、千尋』

「ああ、ステラ……行こう。戦いの終わりだ」

『うん。そして、私達の始まりだね』

「なにを、ごちゃごちゃとぉぉぉっ!! 死ねぇぇぇッ!!」

 

 落ち着き払った二人。やはり組み込まれているよな、概念存在特効を持つ聖剣っていうなら権能全否定の能力が。

 これまでは神奈川さん側の負担が大きすぎて全能力を解放させられなかったけれど、今なら問題なく制御しきれるってわけか。

 

 余裕さえ見せる神奈川さんに、いよいよ怒りとともに突っ込む瀬川。

 その踏み込みは力強く、体捌きは鋭く、斬撃は速い。まさしく才気煥発と言える素晴らしい一撃だ。今のやつに放てる、これ以上ない斬撃だろう。

 バリアが復活したことで躊躇なく突撃できるようになったんだな。安心さえ確保できればこういうこともできるか。

 

 だけど、そんなものはもう敵ではない。

 聖剣の鞘から剣が抜き放たれる。左手には逆手に鞘、右手には順手に聖剣の二刀流。

 星の輝きの奔流が刀身をまばゆく包み──神奈川さんとステラはそして、迫りくる最後の敵を迎え撃つ技を放った!

 

『今こそ星よ! 無限の闇をも照らし、彼の聖剣を導け!』

「そして聖剣よ、星明りの導きのままに我らが道を切り拓け────ステラ・オブ・ヘヴン!」

 

 瀬川の斬撃を、鞘で思い切り、あっけないほどあっさりと打ち払って。

 がら空きになった胴体に、セーレのバリアごと引き裂くようにして。権能無効化の機能を全開にさせた、星明りの聖剣は袈裟懸けに振るわれた!

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― 新着の感想 ―
おぉっと!ここで土壇場のセーレモード! しかし聖剣(政権)があるからセーフ(政府)なのはこちら側!
2025/02/14 12:19 こ◯平でーす
つまり神さえも… ま やらんと思うがw
概念存在完全否定機構って、概念存在にとってかなりのヤクネタな気がします。概念領域で強硬派が大騒ぎしそう。オノスケあたりは裸足で逃げ出しそう(笑)オノスケなんですが、アメさんに紹介したら秒で懐きそうです…
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