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生きろ。たとえ、望んだ未来が待っていなかったとしても

 ウーロゴスの権能を、おそらくは封入するなりしたのだろうスレイブコアが光を放ちアレクサンドラの体内に入る。

 その途端にやつの身体から激しい衝撃波が放たれ、不意のことに俺もミュトスも一旦、いくらか後退せざるを得なかった。

 

「なんだ!? なんてことを、さらに力を取り込んだのか! もう限界だろうに、暴走するぞ!」

「どわっひゃぁー!? 痛てててすっごい衝撃波、これ私の権能ですね!」

「アレクサンドラ! まだ無駄な抵抗を……」

 

 土埃が巻き起こり、アレクサンドラの姿を隠す。それでも光と衝撃波は絶えることなく放たれ、俺達へと襲いかかってくる。

 ──問題ない! さっきはいきなりのことでモロに受けたがそれもダメージはなし、だったら対応は十分に可能だ。

 

 《誰もが安らげる世界のために》、最大出力の1万倍で力を引き出す。《風さえ吹かない荒野を行くよ》の発動条件を満たさない今、俺に出せる全力だ。

 通常の一万倍の力で、迫りくる衝撃波を右腕で受け止めて握りつぶす。さらにそのまま俺は、山形くんビームを放った。

 

「《あまねく世界の明日のために》! ……今からアレクサンドラの下へと向かう! その前にミュトス!!」

「はっ、はい!? なんでごぜーませうか!?」

「……君の真の力はこの後、すぐに必要とされる。《イミタティオ・トリニタス・コスモス》じゃないだろう? アイツから託された真の使命、真のスキルは」

「……………………!」

 

 衝撃波を逆にぶち抜き、アレクサンドラを直撃するビーム……手応えはあれど効果はなしか。ウーロゴスの権能がバリアになっているな。

 因果がない権能である以上、そちらを攻撃するのは俺であってはいけない。ゆえにミュトスへと端的に話しかける。その真の力、ワールドプロセッサの意図する本当の精霊知能ミュトスの出番が、今まさに来たのだということを告げるために。

 

 ……称号が変化した。

 お前もそう思うか、ワールドプロセッサ。私達では始末のつけられない敵が、ミュトスにしか解決できない事態が発生したのだ、と。

 

 

 名前 山形公平 レベル1268

 称号 トリニティ・トゥルース・ユニヴァース

 スキル

 名称 風さえ吹かない荒野を行くよ

 名称 救いを求める魂よ、光と共に風は来た

 名称 誰もが安らげる世界のために

 名称 風浄祓魔/邪業断滅

 名称 ALWAYS CLEAR/澄み渡る空の下で

 名称 よみがえる風と大地の上で

 名称 目に見えずとも、たしかにそこにあるもの

 名称 清けき熱の涼やかに、照らす光の影法師

 名称 あまねく命の明日のために

 名称 風よ、遥かなる大地に吼えよ/PROTO CALLING

 名称 神魔終焉結界─天地開闢ノ陣─

 

 称号 トリニティ・トゥルース・ユニヴァース

 解説 三つの真理、三つの宇宙。今こそ一つの力となる時

 効果 なし

 

 《称号『トリニティ・トゥルース・ユニヴァース』の世界初獲得を確認しました》 

 《初獲得ボーナス付与承認。すべての基礎能力に一段階の引き上げが行われます》

 《……刻は来たり、今こそミュトス完成の時。三つの力が一つになるその瞬間を、どうかあなたも見届けてください》

 

 

 ステータスを見て確信する。道中や過程はどうあれ、少なくとも最終局面がこの形になることをワールドプロセッサは見抜いていた。

 アレクサンドラだろうと他の誰であろうと、手にした力を必ず暴走させると……そのためにミュトスの《イミタティオ・トリニタス・コスモス》はあったし、さらにその先にあるだろう真なる力、本当のスキルをも与えたのだ。

 

 相変わらず説明のない。ミュトスにも軽くしか話してないだろう、アイツめ。

 だが今、ここにいる私は気づいた。ならばやることは一つだ。ミュトスという新たなる精霊知能のため、この道を切り拓く!

 

「複数のウーロゴスを取り込んで自我を保てるほど、アレクサンドラは強くないし神の権能は弱くない! 今にあの女の自我は崩壊して、肉体を得たウーロゴスが新生するぞ!」

「そ、その相手を私がするんですね!? き、聞いてないけど頑張りマッスル!? いやでもアレクサンドラごと殺るんですかぁ!?」

「させない。だからこそ俺が、今からアレクサンドラを引き剥がすんだ……そこから先が本当の君の仕事だ。任せたぞ、精霊知能ミュトス」

「っ! ────かしこまりました! この使命、必ず果たしてみせます!!」

 

 事態を理解して、力強い返事をするミュトスに微笑む。

 異世界から来た水の女神。こちらの世界の都合や勝手にさんざん振り回されてなお、独特のノリと素敵な言動で俺達に力を貸してくれた新人精霊知能。

 そんな彼女が、失ったすべてを取り戻す時が来たんだ……俺も気合い入れて、やらないとな!

 

「ち、から……ちから……いのち、ふろうふし……えいえん……」

「アレクサンドラ……崩壊寸前でもなお、ソレを求めるのか。それだけ、生きることに執着しているんだな」

「いき、る……いきる、いきる……しにたくない……さみしい……さびしい……!!」

 

 微かに聞こえる、アレクサンドラの声。取り込みすぎて暴走した力が、心を崩壊させていっている。

 その中でもなお、生きたい、死にたくないと。あまつさえ寂しいとつぶやく彼女の本心は、つまるところそういうことなんだろう。世界の終わりを見たいとか、夢とか野望はつまるところ自分を誤魔化すためのものでしかない。


 俺は輝きを放った。心が昂って自然とそうなったんだ。

 悪行を成したこの女を許すことはないけれど、それでも必ず助けるさ。たった一人でさびしいと、死にたくないと願う命であるならば。

 この身に欠片でも力が残っている限り、必ずこの手は差し伸べる。誰もがきっとそうするように、助けを求める声に応えよう。

 

 だから生きるんだ、生きて罪と罰を贖うんだ火野アレクサンドラ。

 永遠じゃなくても、罪深くても、お前の望む形でなかったとしても……今、この場所でお前を、独りぼっちで死なせたりなんてしない!

「大ダンジョン時代クロニクル」第一次モンスターハザード編完結!

https://ncode.syosetu.com/n5478jx/

第二次モンスターハザード編はお盆頃にスタート予定です!

よろしくお願いしますー


「大ダンジョン時代ヒストリア」100年史完結しました!

https://ncode.syosetu.com/n5895io/

よろしくお願いいたしますー


 【ご報告】

 攻略! 大ダンジョン時代 俺だけスキルがやたらポエミーなんだけど

 書籍版、コミカライズ版併せて発売されております!


書籍

 一巻

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 Webサイト

 PASH!コミック

 https://comicpash.jp/series/d2669e2447a32

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 電子版、書籍版、コミカライズともに好評発売中!

 みなさまにお求めいただければさらなる続刊、続編も視野に入っていくと思いますのでなにとぞ、よろしくお願いしますー!

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― 新着の感想 ―
次回はまた句読点の無い伝道師のターンかな?
〈イミタティオ・トリニタス・コスモス〉→〈トリニティ・トゥルース・ユニヴァース〉 前2つの順番が入れ替わってるのはなぜですか、システムさん? ※〈トゥルース・トリニティ・ユニヴァース〉でもいいような…
ウーロゴスが純粋悪の魔人ウーになってしまうのか……
2025/02/03 19:04 こ◯平でーす
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