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聖女ってなんだったっけ……(困惑)

 遠距離攻撃を封殺され、肉弾戦に切り替えたプレーローマ・アンドヴァリと元より近接戦特化のミュトス・断獄が互いに踏み込み、最接近する。

 完全なるインファイト……お互い決死の距離感でのぶつかり合いだ。

 

 先に仕掛けたのはプレーローマ・アンドヴァリ。《風魔導》の技を二つ使ってスピードとパワーを大きく増強させているな。

 その速度でもって、素早くミュトスに手刀を放つ!

 

「聖女殺法ッ!! 神罰覿面ッ!!」

「なんのなんのとミュトスちゃんパンチ! 断獄さんの両腕、喰らえぇーッ!!」

 

 対するミュトスも負けじと腕を、そしてそこに纏った断獄の手甲を振り回す。なんの技術もない単純暴力だが、出力の時点で敵の10倍以上の差があるんだ。

 何も考えずに攻撃をしたとて、一方的に有利なのが本当のところだろう。

 

 そう。アレクサンドラとミュトスの間には当たり前ながら、絶対的というのも馬鹿馬鹿しいほどの力量差がある。

 そりゃそうだ。いくらアレクサンドラがS級探査者の地力にウーロゴスの一部を取り込んでの超パワーアップを果たしているとは言え、ミュトスに宿る力はそういう次元にはないのだから。

 

 三界機構。すなわちかつて異世界のワールドプロセッサだったモノ達の力をそれぞれ少しずつを持つ時点で、ミュトスの戦闘力は創造神なんてレベルでなく間違いなくこの世界の中で五本の指に入る。

 そのへんの事情を知っている俺やシステム領域のモノからすると、今まさに果敢に攻め込んでいるプレーローマ・アンドヴァリの姿なんてのは、もうまさしく無茶しやがって……と敬礼したくなるほどの蛮勇でしかないのだった。


 一撃目でミュトスの拳が、アレクサンドラの放つ手刀を殴り飛ばす。あらぬ方向にへし折れるやつの腕だが、ウーロゴスの力ゆえか即座に再生し、元の形を留めていた。

 ただし、受けた衝撃は据え置きだ。一瞬で顔色を変えて歪めた敵が、一時避難しようと必死の形相で後ろに飛び退く。

 

「……ッくっ、ううっ!! こ、この力は!? 私の技が、腕がっ!?」

「私の権能をこれ以上、自分勝手に悪用するなーっ!! 窃盗止めろパンチ、自首しなさいロケットパーンチっ!!」

「うあああっ!? ば、バカな!?」


 おそらくはミュトスの力など、いいとこ自分と拮抗している程度とでも見ていたか。ゆえに軽々に初手からいきなり殴りこみに来たんだろうさ。

 ステータスを半分封印されているものの、それでも自分なら問題なくいけると思ったのかね。


 だけど世の中そこまで甘くはないし、蓋を開ければこれこの通りの現実。放った手刀は問題なく弾かれ、咄嗟に後方へ飛び退いたものの俺の結界ゆえに真に逃げることも阻まれ。

 焦りを多分に含めながらもやつは震える声、指でわなわなと、ミュトスを指し示して叫んだ。


「バカな、いくらなんでもここまでの差があるわけが! 何者なのですミュトスとやら、その力はどう考えてもこの私、新たなる神プレーローマ・アンドヴァリをも上回っている! どこの神話圏の神なのですか、あなたはァッ!?」

「言っても分からないでしょうよ、絶対に! ……この身はすでに朽ち果てし神格、いいえ元よりこの世には有りうべからざるモノ。けれどまさしく天佑により私は新たなる存在としての定義を与えられました。この御恩に今はただ、報いるためにいるのが私!」

「ミュトス……」

「何をゴチャゴチャと、分からないことをッ!!」

 

 かつて異世界の神だったのが、邪悪なる思念に食われずして波動空間を漂い偶然にもこの世界に飛来せしモノ───水の女神ミュトス。

 その際に権能と分かたれ魂だけでデータ領域に揺蕩っていたのをワールドプロセッサが回収、散々に手を加えて精霊知能として再誕させたのが今の彼女だ。

 

 そんな真実になど、アレクサンドラが分かるわけもなければ今後、知る機会も永遠にないだろう。ミュトスも今、やつに説明するつもりで告げたのではない。

 己自身への再宣言のような印象を受けるものだったからね。精霊知能ミュトスとしてこの戦いに臨む中で、彼女もいよいよシステム領域の一員としての自覚を抱きつつあるんだろう。

 

 そんな内面の機微を知る由もないアレクサンドラが、怒り心頭と言った様子で再度飛びかかる。迎え撃つミュトス・断獄だが、今度は様子がおかしい。

 すさまじい威力の拳が振るわれるのを、アレクサンドラは真正面かれ受け止めずに紙一重で回避。むしろその腕を取り、関節を逆側に折り曲げるように極めたのだ。

 関節技……戦法を変えたか!

 

「聖女殺法、ホーリー・サブミッションッ!!」

「うげげっ!? 腕ひしぎ!? いででーっ!?」

「柔よく剛を制す! 日本の諺でしたね……相手の流儀に合わせる必要なし、千変万化の破壊術! それこそが聖女殺法の本領なれば!!」

「怖ぁ……」

 

 高らかに謳うアレクサンドラに、腕を極められたミュトスが苦悶の声をあげた。

 受肉している以上、人間と同じで関節技は効いてしまうからな、仕様的に。パワーの差でどうにかへし折られる前に無理矢理抗っているものの、それでも結構痛そうだ。


 っていうかなんなの聖女殺法、千変万化の破壊術って物騒すぎるだろ!

 たしかエリスさんの妹分、二代目聖女さんが開祖らしい戦闘法らしいけど殺意というか破壊への意欲が高すぎる。神谷さんといいアレクサンドラといいシャルロットさんといい聖女殺法の存在といい、思ってたより数倍物騒だぞ、聖女って……

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― 新着の感想 ―
聖女殺法100芸。 48の殺人技と52の関節技ですか?(某筋肉男の場合、プリンスカメハメに習った100芸にプラスして筋肉滝の技とスグルとアタルの技を足して107技ですけど。) まさか、ベ〇リンの赤い…
聖女に関節技かけられるとか人によってはご褒美……
2025/01/28 12:30 こ◯平でーす
魔法の国のプリンセスがサブミッション使ったり天使が撲殺スタイルなんだから聖女ならこのくらいやるよね
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