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攻略!大ダンジョン時代─俺だけスキルがやたらポエミーなんだけど─  作者: てんたくろー
本編

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海外まで行って寿司バーを探す時の気持ち

 話もひとしきり終わり、今日のところはゆっくり休もう、という当初の予定に従って、俺と香苗さんは街に繰り出すことにした。

 リンちゃんも一緒だ。というかこの子、日本に来るのは初めてらしい。大都会の風景に、大きくつぶらな瞳を丸く煌めかせている。

 

「すごい……です! 大きい……です! キラキラ、です!」

「初めて来た割には日本語が上手ですね」

「はい! 日本、来たかったです、から。いっぱい勉強、しました」

 

 ニコニコ笑顔で応えるリンちゃんが、もうなんかすごい純粋で眩しい。心の中に潜むデビル山形が消え去って、エンジェル山形だけになりそうだ。

 しかし、日本に来たくて必死に勉強したんだろうな。辿々しいけどしっかりと意思疎通はできてるし、こちらの言葉の意味も理解できるし、向こうの言ってることも分かる。

 

「日本に来たかったっていうのは、何かしたいこととかあるの?」

「はい! 中華街、たくさん、ラーメン食べたいです!」

「そっか、ラーメンかぁ」

「うん!」

「…………そっかぁ」

 

 まあ、日本のラーメンってもう独自すぎる進化を遂げているらしいからね。本家本元とは別物って聞くし。

 隣の香苗さんはなるほどと頷いている。さすが、この人は色々と知識も経験も豊富だから、リンちゃんの気持ちにも寄り添えるんだろう。

 

「麻婆豆腐! 餃子! 小籠包! 回鍋肉! いっぱい、いーっぱい食べたい、です!」

「故郷ではあまり、そういったものを食べてこなかったのですか?」

「はい! あの、山奥、熊とか猪とか! 星界拳士、自分たちで狩ってきて食べます!」

「熊!?」

「猪!?」

 

 思わず香苗さんと二人、素っ頓狂な叫びを上げてしまった。リンちゃんがキョトンと首を傾げている。かわいい。

 いやいや、熊やら猪てあなた。自分たちで狩ってくるって、怖ぁ……

 スキルを使っているんだろうか? さらに聞くと、より詳しい星界拳の実態が分かってきた。

 

「ん、と。星界拳士、無能力なら海覇まで。能力……スキルを得たら、天覇に昇段でき、ます」

「熊やら猪を狩るのは、その三つの段位の者たち、と?」

「はい。あ、でも、人覇の人、も、狩ります。無能力、だからレベルもない、けど……積んだクンフー、人によると、天覇にすら並びます、から」

「探査者でもなく、熊やら猪と殴り合えるのか……怖ぁ……」

「達人中の達人ですね。非探査者の格闘技者にも、技術のみで、その辺の探査者に勝てるくらいの者もいるとは聞きますが……それにしても……」

 

 恐るべきというか、すごいというか……星界拳ヤバすぎんだろ怖ぁ。

 ましてリンちゃんは天覇とか言ってたな。14歳でそんな武闘集団の最上段位だっていうのかよ。

 

「その、天覇ってのは、リンちゃん含めて何人いるの? ていうか、一族って全部で何人?」

「え、と……シェン一族は今、全部で108人。里にいるのが86人、探査者として、外に出てるのが22人、かな。私もその一人で、今三人しかいないよ、天覇」

「100人から成る武術家集団の、上位三名の内一人ですか。凄まじいですね、フェイリンさん」

「えへへ……!」

 

 テレテレと、顔を赤くして頭をかく仕草が愛らしい。とても熊やら猪を素手でぶちのめせるなんて思えない。

 ちなみにステータスを見せてもらえるか聞いてみると、快く探査者証明書を見せてくれた。日本語表記ではないが翻訳すると次のようになる。

 

 

 名前 シェン・フェイリン レベル218 ランクB

 称号 拳法家

 スキル

 名称 気配感知

 

 

「え……気配感知、だけ?」

「ん。我らが流派・星界拳に敵はない、から。スキルなんて不要、後は技にて切り拓く……なり」

「か、カッコいい……!」

「ぶい。えへ、えへへ」

 

 あまりに渋い言葉。思わず讃える俺に、リンちゃんはピースして笑った。

 というかスキルも何というか、潔すぎる。普通は格闘系のスキルの一つ二つ、習得したって良かろうものを気配感知のみとは。

 

 本当に星界拳にすべてを込めるスタンスなんだろうな。己の一族、そして流派への誇りとこだわりを感じるステータスに俺は深く感銘を受ける。

 何よりすごいのがこの子、このスタンスでこのレベルとB級にまでなってるんだよ。つまりは既に、幾度とない実戦を事実上、スキルに頼らない星界拳のみの徒手で渡り抜いてきたのだ。

 

「スキルを得た、のは……一年と、ちょっと前。それからひたすら、ダンジョンで修練、重ねた」

「すごいな……一年ちょっとでレベル200超えるって、よっぽどだよ。級だってBだし」

「鍛錬、こそ我が日常。修練と思えば……毎日、朝から夜まで、モンスターと殴り合いだってできる」

 

 無茶苦茶なこと言うなあ、この子……

 武道家としての姿をまざまざと見せつける、俺より一つ年下のリンちゃんに俺も、香苗さんもドン引きしつつ感心するばかりだ。

この話を投稿した時点で

ローファンタジー日間6位、週間4位、月間2位、四半期1位

総合月間14位、四半期14位

それぞれ頂戴しております

本当にありがとうございます

引き続きブックマーク登録と評価の方、よろしくお願いいたします

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― 新着の感想 ―
[一言] スキルって条件を満たしたら勝手に取得されるんじゃなくて、意図的に取捨選択できるんけ?(_’ そうじゃなかったらうっかり「拳法」スキルとか手に入れちゃいそうだなぁ。
[一言] WSOに移籍できないのかな?実力者が上級ダンジョンに潜れないよう制限をかけるような組織はダメでしょ。
[気になる点] 一年ちょっとでBランクになれてるってのは、海外は実力主義でランク上げてくれるってことかな。
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