無敵の異分子処断権限でなんとかしてみましたよォー!!
《土魔導》、ジオロジカルボイジャー・プロター。プレーローマ・アンドヴァリが放ったその技はシャルロットさんの言うように、地面を加工して己の分身を作り出すタイプの技みたいだ。
人間だった頃は三体が限度だったようだけど、ウーロゴスの力を得たゆえだろう、百体近くやつの周囲に発生している。
その上で一体一体が、本体には及ばないにせよかなりの力を纏っているな。これが徒党を組んで来たらさすがに少し厄介だ。
地上のサークル陣営にこの分身を与えていれば、もっと事態は面倒にされていたかもしれない……射程距離外だったのか、はたまた捨て駒のために割く余力なんてなかったのか。
いずれにせよ質の悪い隠し玉だ。
だがな、プレーローマ・アンドヴァリ。ことここに至りシステム側も、切れる手札は切っていくつもりだぞ。
シャーリヒッタが一歩前へと踏み出した。その身に宿す権能、精霊知能の中でただ一人認められた絶対権限保持者たるこの子なら、やつの力を封じ込められるさ。
「初手から駒稼ぎとは聞きしに勝るセコさだなァ! だったらこっちもやらせてもらうぜ──《異分子処断権限》! 第三種発動、火野アレクサンドラのステータスを封印凍結するッ!!」
そう、彼女の身が持つ極めて特殊なスキル、《異分子処断権限》。
その三つ目の効果であるオペレータへの絶対権限を用いて、アレクサンドラのステータスを封印しにかかったのだ。
スキル
名称 異分子処断権限
効果 解放段階によって追加権限を付与
第三種……オペレータへの絶対権限および戦闘能力10倍
第二種……現世存在への絶対権限および戦闘能力50倍
第一種……概念存在への絶対権限および戦闘能力100倍
全段解放……あらゆる魂への絶対権限および戦闘能力1000倍
上記がシャーリヒッタが世界で唯一保持している、システム領域内にあっても極めて特異なスキル《異分子処断権限》の効果だ。
今のところ第三種までの解放が許可されているが、全段解放された暁には、なんとミュトスの《イミタティオ・トリニタス・コスモス》と互角以上の実力を誇る、まさしく公式が用意した最強の処刑用スキルなわけだね。
さらには解放段階ごとに、それぞれ定められた対象への絶対権限を行使することができる。
たとえばオペレータから称号やスキルを剥奪したり、ステータスを封印したりね。それこそ倶楽部幹部はアレクサンドラの実父、火野源一なんかは、決戦の際にシャーリヒッタによってステータスを封印されたりしている。
ゆえに今回も、すんなり行けば今しがたのスキルは発動無効になるしアレクサンドラ自身のオペレータとしての能力も失われる。
そうなれば後はウーロゴスの力だけになるから、格段に楽になるんだけど……さすがにな。そう上手くはいかないだろう。
ステータスの凍結封印とともに、アレクサンドラの放ったジオロジカルボイジャー・プロターの土人形が次々と霧散して消えていく。
けれどすべてではない。およそ半分を少し超えるあたりで打ち止めとなり、シャーリヒッタが顔を険しくして舌打ちを一つこぼした。
「チッ……! 駄目だな、無効化しきれねえ。野郎、ウーロゴスを手にしたことでこの世と半分以上、因果が切れてやがる」
「土人形の数が大幅に、それこそ半分以上減りましたが……こ、これは、シャーリヒッタの力をもってしてもアレクサンドラを止めきれない、と言うのですか、公平くん?」
「そう、ですね。ウーロゴスがそもそも因果を持たないんですから、それを取り込めばそりゃやつ自身も因果を失いますから」
オペレータに対してはまさしく絶対的な、一撃必殺の威力を誇る《異分子処断権限》を、火野老人の時に直接見聞きしている香苗さんが焦りつつ尋ねてくるも俺とシャーリヒッタには不安も怖れもない。
可能性としては十分にあったというか、普通に考えて通るかどうかは半々くらいだと思っていたからね。
元よりこの世に本来あるはずのないウーロゴスだ、そんなものを取り込んでヒトを離れた火野アレクサンドラだって、本来であればこの世界には発生する可能性すらない。
だから通らなくて当然くらいに考えていたんだけれど、むしろ今、わずかにでもスキルは通用した。それは畢竟、やつの現状がまだ完全な手遅れにはなっていないことを端的に示す材料となってくれたのだ。
香苗さんに続けて応える。
「むしろ今、ある程度でも通用したのは逆説的にまだ間に合うことを意味しています。プレーローマ・アンドヴァリの少なくない部分はまだ人間・火野アレクサンドラで、ウーロゴスとは完全に融合しきっていない。剥がすことは十分に可能だ」
「そうですね、公平サン。あそこにいる薄らデケェだけのバカは、それでもまだ人間に戻れるっつーことです。今ならまだ、間に合う」
「何を……しましたかっ、そこの小娘!? わ、私のスキルを、《土魔導》を半減させた……! 《異分子処断権限》などと、そのようなスキルが存在するとでも!?」
「今まさにテメェが食らってんのがそれだろォが。ちなみにスキルだけじゃねぇ、食らった以上は食らった分だけ確実に、そのステータスは弱体化させてもらったぜ火野アレクサンドラ! テメェはもう、S級探査者ほどの力は持ってねえぜ!!」
さすがに、ステータスそのものに干渉してくるようなスキルとその保持者の存在は聞いていなかったようだな。
たしか倶楽部側の概念存在、赤鬼の鬼島が勾留されている拘置所だかに忍び込んで聞き出したんだったか? 認定式の日にそんなことを言ってた気もするけど、さすがに火野老人の顛末についてはあいつも知らないわな、タイミング的に。
憐れなまでに狼狽するプレーローマ・アンドヴァリ。人間らしいその動揺こそ、やつがまだ間に合う証左だろう。
念のために俺は鑑定スキルを発動した。シャーリヒッタが行ってくれたスキル封印凍結がどこまで通じるか、確認するためにね。
この際マナー違反は勘弁してほしいところだ。
「《よみがえる風と大地の上で》。プレーローマ・アンドヴァリ、いいや火野アレクサンドラのステータスを見させてもらう」
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