もはや敵ですらなくなった男
もうなんていうか、いろんな意味で早く楽にしてあげてよ! って言いたくなる惨状の瀬川にアンジェさんとランレイさんがまず、斬り掛かった。
刀と脚、いずれも鋼鉄をも切り裂く必殺の武器だ……認定式の時はそれでも瀬川のバリアに阻まれて防がれたがさて、今回はどうか。
「無駄、無駄だァ! 僕に対する敵意はすべて、セーレさんの愛が防いでくれ────!?」
「甘いってのよ、《剣術》!! 竜断刀GRAVITY・ベイオウーフッ!!」
「何から何まで前回と同じと思うなッ!! 《闇魔導》、双魔ッ星界轟竜拳ンンンッ!!」
「な、あっ!? ば、バリアが!?」
ありとあらゆる敵意が篭った攻撃をシャットアウトする、セーレの権能による一種の絶対防御。
認定式の日のテロリズムにおいては俺の干渉があってようやく突破できたようなレベルの、ホイホイ人間に授けるべきものじゃない正真正銘ふざけた代物だ。
相変わらず馬鹿げた性能は健在だなとセーレを横目で見る。恍惚と歓喜に染まった表情は何一つ悪びれていない。
アレをこいつの愛とまで言い切る瀬川は、あながち間違ってはいないんだろう。ただその愛の方向性がすごい明後日というか、お前さっきの見てそれでもそう言っちゃうの? 感があふれるものだというだけだね、うん。
──そんなバリアだが、しかして今回は以前とは様子が違った。
かつては一顧だにせず弾き飛ばしていたアンジェさんの刀とランレイさんの脚。それらが今は鍔迫り合いめいた、少なくとも一蹴されずに拮抗しているのだ。
予想外の事態。失明しているらしいボロボロの瀬川が、けれど異変を感じ取って焦りに叫んだ。
「拮抗している!? なんで、そんな、馬鹿なあり得ないッ!!」
「敵意を弾くってんなら、敵意なんて持たず無我の境地ってやつでやったろうじゃん! ……って、思ってたんだけどね。今のアンタにはそれすら必要ないわ」
「何ッ!?」
哀れなまでに狼狽する瀬川を、悲しい目で見据えるアンジェさん。そこに敵意はなく、代わりに使命感と正義感が垣間見える。
ランレイさんも同様だった。気の毒そうに顔を歪め、気遣わしげに目の前の男を見やる。やはりそこに、敵意とまで呼べるほどのものはない。
ああ、そうか。そういうことなんだな、二人とも。
本当に、瀬川は憐れな男だ。やりきれない想いを、俺まで抱くよ。
悪なりに、ここまでやったのにな。
何もかも切り売りして、それでもセーレや藤近のために、ここまでやってきたのにな。
──それでもお前はもう、敵としてすら認識されない有り様なんだな。
「憐れな男、瀬川聡太。そうまで満身創痍のお前を、我々は止めるために戦う──敵意など、持つにもあたらん。もはやこれは人命救助にも等しい」
「……この、僕を、憐れだと? 人命救助されるべき、負傷者だと!? 敵意を持つにも、あたらない、だとおっ!?」
「もうお止めなさいな。アンタがやるべきは無駄な抵抗じゃなく、病院に行って治療を受けることよ。心身ともにね」
全身を見る影もなく傷ませ、包帯に塗れ、視覚すら失いバリアに頼る今のお前は。
アンジェさんとランレイさんという本物の戦士にとってもう、戦うでなく取り押さえて治療を受けさせるべき対象でしかないんだ。
言ってしまえばそう、"暴れる患者"。
治療を嫌がり抵抗する人を、可能な限り迅速に丁寧に取り押さえる行為……そこに敵意など、害意などあるはずがない。
もはや二人にとって、これは治療行為にも等しく。そして瀬川は、治療対象でしかないのだった。
たとえ今のほうが、有する力は遥かに上だったとしてもね。
「ぼ、僕を、馬鹿にするのか!? 藤近さんや海方さんには敵対できても、僕は敵とすら見られないと言うのか!? ふざけるなァッ!!」
「ふざけてんのはアンタでしょ、そんな負傷で何をどう敵対するってのよ……冗談じゃないわ。いくら犯罪者相手でもね、弱いものいじめなんてやってらんないのよ」
「悪魔の力をさらに借り受けたというだけはあり、力だけは増しているようだが。私とアンジェリーナは死に体の貴様を相手する気にはなれない。何より、貴様を討つのであれば、それを成すべきは千尋とステラであるがゆえに──止まらぬというのであればここで、貴様のバリアのみを断ち切るッ!!」
敵意がなくとも、戦意を感知しているらしく微弱ながら発動するバリアに、アンジェさんとランレイさんが力を込めて押し切っていく。
この手の権能によるバリアの常なんだけど、一度破られたらもうしばらくは使用ができない。スキルと一緒だ、強い力にはそれ相応の代償なりクールタイムがあるからね。
つまりここで二人がバリアを破りきれたなら、そこから先が本当の戦いになる。
彼女達の後ろに控えている、真にサークルと戦い続けたたった二人の聖剣使い────神奈川千尋とステラのコンビが!
「そう! アンタの始末はあの二人がつける! だからそのいけ好かないバリアはッ!!」
「このまま破壊するっ!! しぇぃぃぃぃぃっりゃあぁぁぁぁぁっ!!」
「ッ!! 神奈川千尋、そしてステラ!!」
「やぁーっと、こっち見たな瀬川ァッ!!」
裂帛の叫びとともに、ついに刀と脚が奔った。一瞬の空白の後、罅割れるようにバリアが破壊される。
瀬川本人にはダメージはない。気の利いた話だ、最後までお膳立てに徹底するか二人とも!
即座に後方に下がるアンジェさんとランレイさん。その間際、交代するかのように突撃してくる、聖剣使い!!
神奈川さんだ!
スキル《聖剣》によって顕現した聖剣を手に、半透明のステラとともに瀬川に斬りかかる!
盲目ながらも悪魔憑きとしての力だろう、ノイエヴァルキリーでそれを受け止める瀬川との、ぶつかり合いがついに始まった!
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最新話はどうやら有料みたいですが、その一つ前のお話は無料で配信されてますのでよろしくお願いしますー
下記サイトのURLからご覧いただけますのでよろしくお願いしますー
「大ダンジョン時代クロニクル」第一次モンスターハザード編更新中!
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【ご報告】
攻略! 大ダンジョン時代 俺だけスキルがやたらポエミーなんだけど
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amzn.asia/d/iNGRWCT
二巻
amzn.asia/d/aL6qh6P
コミック
一巻
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二巻
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Webサイト
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