愛は愛でも愛玩の愛
なんか……何? めっちゃ気色悪い笑顔で姿を見せた悪魔セーレに絶句する。
こいつどうした、涎すら垂れてるぞ? って、まあ原因なんて分かりきってるんだけどね。比喩表現かと思ったけれど、まさかマジで最期を見届けるつもりだったとは。
悪魔はやっぱり怖いなー。
「せ、セーレさん!! ……セーレさん?」
『うふっ! うふ、うふひひっ……! そ、聡太……見違えましたね、本当に。素敵です、最高に素敵ですよその姿。目指すもののため、願うもののためにすべてを擲ち今、その生命すら燃やしつくそうとしている有り様。私が見たかったのはそれなんですよ。やっと、やぁっと見れましたァ。けひ、けひっ』
「怖ぁ……」
「ンだこいつ、気持ち悪ィ……」
恍惚に陶酔しきった赤ら顔で、胸をかきむしり満面の笑みを浮かべて瀬川を讃える。その姿はあまりにも醜悪で、俺やシャーリヒッタはつい呻いてしまった。
これが本性、というよりはこれも本性と言うべきか。これまでの契約者に対して誠実で真摯な態度も、あれはあれでこの悪魔の本音や真実だった。
ただそれはそれとして、セーレにはこうした側面もあるってことなんだな。
目をつけた人間に力を授け、人並みならぬ活躍をさせる。そしてその果てに暴走し……死に至るまで必死に駆け抜ける様を欲する、人間の倫理からすると残酷極まりない側面が。
それは悪魔というモノの宿命、本質的な一面であるから俺としては否定はしない。する理由がない。
ただ、目論見通りにここまで至ってしまった瀬川に憐れみを抱くだけだ。同時に、セーレの思惑通りにもさせてはやれないという若干の申しわけなさも込めて。
悪いんだけど、と前置きして告げる。
「瀬川は死なせないぞ、セーレ。あいつはキッチリ倒して治療した後、人の世の法に照らした裁きを受けてもらう。異論があっても受け付けはしない」
『うひっ、うひひひ……!! ────もちろんです我が契約者、山形公平。あなたには感謝しています、契約通りに私にこんな素晴らしい光景を見せてくださった。これで後は、聡太が決定的に敗北するところを見るだけで私の現世への未練はなくなります』
「ねえ公平、今ここでこいつもまとめてしばきあげちゃって良いと思うんだけど、私」
『ああ、早く見たい……! 私のバリアすら破られ、幾重にも受けた悪魔の力さえ失い心底から墜落する聡太が……!!』
怖ぁ……これで俺に対してはいつも通り、まともな対応なのが逆に怖いんだよ。もういいからさっさと概念領域に還ってくれないかな、こいつ。
アンジェさんまでセーレを敵認定しだしているし。いかに瀬川が不倶戴天の敵であっても、それをこうまで追い詰めた挙げ句それを見て興奮しているような変態が一応でも自陣にいるのは不快なんだろうな。気持ちは分かるよ申しわけない。
とはいえ仮にもここまで惜しみなく協力してくれた相手だ、さすがにまとめて始末というのはアバターで精神体だったとて良くない。
どうどう、とアンジェさんを抑えつつ俺達は向き直った。肝心の瀬川は、やっぱり目があまり機能していないようでセーレの醜態を視認できていないようで、聴覚だけで何が起きているのか分からずに困惑しきりでいる。
「セーレ、さん!? 何が、まさかシャイニング山形の卑劣な洗脳術で!? あなたが、そんなことを言うはずがないッ!!」
『愛していますよ、瀬川聡太。私からの最後のエールです。頑張って、頑張って、頑張り抜いた果てに……どうか華々しく散ってくださいッ! くひひひひひぃぃっ!!』
「瀬川……お前、悪魔の玩具なんだよ結局。委員会に都合よく使われたサークルにあって、お前は悪魔にさえ弄ばれたのさ」
「神奈川、千尋ッ!? ステラ!? そんな、何を、馬鹿なことをッ!!」
『あなたは止めるよ、私と千尋で……! ううん、みんなと一緒に!!』
なおも哄笑するセーレに、哀れなまでに狼狽する瀬川を見かねたんだろう。神奈川さんとステラが前に出て、二人並んで瀬川に聖剣を突きつけた。
一年ほどの、因縁の決着。けれど二人からはそこへの想いよりも瀬川を止めたい、もう終わらせてやりたいというねぎらいの感情が篭っている。
敵としてでなく、救うべき存在として……二人はやつを、今日こそ乗り越えていくんだな。
アンジェさん、ランレイさんも続けて二人に並んだ。揃って臨戦態勢で、同じく瀬川への敵意はない。ただ、当たり前のように澄んだ瞳で相対していた。
「瀬川聡太……倒すためじゃなく止めるために、アンタのそのバリアをぶった斬るわね。痛いけど我慢なさいな、これまでアンタが周りにしてきたことに比べれば、たいしたことないんだから」
「我が星界拳はすべてを切り裂く。鋼鉄も、闇も魔も、そして道を踏み外したる外道の、邪念迷妄さえも……! 今ここに双魔星界拳の真髄、そのバリアに刻み込んでくれるッ!!」
「う、ぐ……!? 嘘だ、まやかしだ! お前達は、デタラメを言っている!!」
かつてない闘志に燃える二人の能力者犯罪捜査官。迫力に飲まれてか瀬川が怯むのを見て、俺は勝利を確信した。
いつだってそうだ、戦いは怯んだほうが負ける。セーレに弄ばれていただけに過ぎない瀬川は、そんなところからも掬い上げようとする四人の戦士に今、精神的に屈したんだ。
不安はない。必ずやアンジェさんとランレイさんはバリアを破るし、神奈川さんとステラは瀬川を打ち破るだろう。
最後の戦いの号令だ。一番最初にやつらと戦い始めた、神奈川さんとステラの声が重なって響いた。
「サークル幹部、瀬川聡太──!!」
『その闇を今、切り開く!!』
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