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マシンガンを軽々振り回し、引き金を引きながら前方のモンスターの群れを撃ち抜きまくる。
当然ながら対モンスター用の銃弾、やつらにも効き目はある。まさしく弾雨といった勢いで、波めいた群れが阿鼻叫喚の地獄へと早変わりしていった。
「ぴきぃぃぃぃぃぃっ!?」
「もげ、もげらぁぁぁぁっ!!」
「ぐるぉあっあっあっアァァァァァァ」
「うぎぎゃーっ!?」
「怖ぁ……」
バターが溶けるような、そんなイメージを連想させる有様だった。群れの矢面にいたモンスターのみならず、その後ろにいる連中も少なからずぶち抜かれて消えていく様は、あれが人間だったらと思うと背筋が凍る。
倒れたモンスターが光の粒になって消えていく仕様で本当に良かった。これで血とか中身とか残す感じだったら、さすがに少しはショックを受けるかもしれない。
怖ぁ……おそらくは邪悪なる思念がやってこなかった場合、本来ならアレが今頃、世界のどこかで人に向けて使われてたんだよな。
モンスターが身近なダンジョン内に犇めく現状ももちろん恐ろしいが、さりとて人間同士で殺戮機構を振り回すというのもなかなかに業の深い話だよ。
さておき、そこまでの猛攻を展開してなお、セーデルグレンさんは手持ち武器のうち二つしか使っていない。
襷掛けにしていたマシンガン用の弾丸ベルトまできっちり使い終えた彼女は一切の躊躇なくそれらを地に投げ捨てた。次いで取り出すは手榴弾と拳銃。
安全ピンを抜いて群れの中へ投げ入れたかと思えば、即座にそれを銃で撃ち抜く──早い! しかも狙いは的確だ、寸分違わず命中して。
そして迸る閃光、熱波爆風。当然ながら爆発を引き起こした手榴弾がその威力を発揮して、群れにいるモンスターどころか、後ろに位置していた能力者達まで襲ったのだ。
「ウワァァァァァッ!?」
「火が、火がッ! オーマイガ、オーマイガァァァ!?」
「おのれ、おのれ何者だ!? 銃火器など、なんという卑劣をっ!!」
「もう嫌だ!! 助けてくれ、降伏するっ!! 俺は、俺はモンスターじゃなぁぁいっ!!」
自分達のことは割と棚に上げたりしつつも、抗議の声を上げたり降参の意を示したりする敵方、ダンジョン聖教過激派の連中。
さすがに銃弾やら爆風やらに見舞われるのはあまりに衝撃的すぎたか。そりゃそうだよな、そのへんの武器なんてのは本来、モンスターにのみ使われるようなものだもんな。
それをこうして差し向けられたということは、自分達もモンスターと大差ないと言われたのと同義だからね。
心折れる人だって出てくるよそりゃ。まあ、そういう人に向けてはセーデルグレンさんも手心を加えるみたいで大声で呼びかけている。
「降伏しろ! 降伏するなら何もしない、大人しく武装をすべて放棄してうつ伏せになっていろ!! そうしないなら敵だ、エネミーだ! モンスターも人も関係なしにアタックアンドアタックだ!!」
「おのれ! 下賤な女め、神の加護を受けし我が剣を受けよ!!」
「ノーセンキュー! 信じるものは我が心の中、速さを求めるトップスピードのみ! そう、このリアリスティー・トップスピードは、いついかなる時でも駆け抜ける速さだけを信じ認めるトップランナーだ!!」
いまだ抵抗を続ける意思を示す過激派にも毅然と答え、彼女は攻撃の手を緩めずにさらに前進した。言ってることはよく分からないけどとにかくすごいこだわりだ。
降伏するべく武装解除しその場に平伏す者達は捨て置き、右手で拳銃を扱いつつ左手にはいつの間にやらワイヤーの仕込まれた手袋を装着しているね。これも驚くべき早業だ。
指ぬきグローブという、思春期の少年であるなら誰もが一度は夢見たことがあるだろうそれに、シャルロットさんはおろか俺までつい目を奪われてしまう。
左手を、無造作に振るうセーデルグレンさん……その瞬間、進行方向の土塊の通路の至る所が破裂した。
手袋の至る所に小さく空いた穴、そこから極細の透明な糸が飛び出ていたのだ……
ヴァールの鎖とくらべてもあまりに細く薄いそれが、けれど縦横無尽に迷宮通路を奔走してはあちらこちらを叩いて粉砕している!
「なっ、なんだあっ!?」
「女ァッ、何をしたあァッ!?」
「《糸術》、トップスピード・ストリングス──B級モンスター、スチルスパイダーの素材を使ってできた超鋼製ワイヤーだ! 喰らえっ!!」
「ぴぎぎぎぎぎぎっ!?」
戦慄を隠せない敵方に、そのまま駆け抜けてはすれ違いざまに左手を振るう。その度にモンスターは切り裂かれて消滅し、過激派構成員達も裂傷を負ってその場に倒れていく。
《糸術》! かなりレアなスキルだぞ。威力があるとか強力だとかそれ以前に、そもそも糸を武器として扱うオペレータがほぼいないがゆえに希少なスキルだ。
普通に考えて中二病じゃないんだ、扱いにくいどころかそもそも武器判定すべきじゃないようなものを普段遣いする人がそうそういるわけもない。命がけのダンジョン探査ならなおさらね。
そんなのを彼女、セーデルグレンさんはスキルとして獲得するまでに武器として使い倒したんだ。とんでもない外連味だよ、これは。
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