進撃のトップスピードch
「よし! じゃあいきますよ選抜パーティのエブリワン! 我々トップスピードchが先んじて迷宮内のエネミーをデストロイしていきますので、その後からセーフティに進んでいってください!」
「あ、ありがとう……助かる」
「てか、全員重装備なんだなァ……」
すっかり全身武器みたいになっちゃったセーデルグレンさんが、同じく完全武装状態のスタッフさんは10名ほどを連れて地下迷宮へと潜ろうとしている。
ヴァールやシャーリヒッタですら若干遠巻きになる、あまりにも異様と言うか物々しい光景。
当初の予定のままに先行してくださるのはありがたいけど、これスレイブモンスターはともかく敵構成員までやっちゃわない? って心配になるよ。
さすがにないと思うんだけどね。近くでなんか、静かにテンション上げまくってるリンちゃんとシャルロットさんを見つつも不安な俺ちゃんだ。
「あなたもトップランナーのファン……ダンジョンRTA界隈のファンでしたかシェン・フェイリン。意外なところで共通点があるものですね」
「私もびっくり、でも嬉しい! 同好の士、ネット以外で見ること少ないから! シャルロットさん、後で連絡先交換しよう!」
「望むところです、フェイリン。私個人のものになりますが、後ほど必ず」
小柄なお二人が、和気藹々と趣味のことで話をするのはほっこりする光景だけれども。
まさかダンジョン探査RTAがきっかけで星界拳正統継承者とダンジョン聖教七代目聖女に繋がりができるなんて予想もしてなかった。
これも因果の為せる業……いやそんな大げさなもんじゃないんだけどね。
アンジェさんとランレイさんが、そんな二人を目を丸くして眺め、驚きを露わにしている。
「い、い、妹があのシャルちゃんとあんなに仲良く……!? わ、私なんて年単位で知り合いなのに、ま、まださん付けなのにぃ……」
「ランレイはさん付けで私のほうは呼び捨てってのも若干釈然としないんだけど……でもま、良いことじゃない。アンタの妹とあのシャルロットに、同じ趣味の友人ができたんだからさ。年長者としては喜んであげないと」
「そ、そうだよね! でも、ううう……妹の社交性がまばゆいぃぃ」
妹であるリンちゃんが、あっさりといろいろ難しかったシャルロットさんとお友達になれたことに対して複雑な思いみたいだねランレイさん。
アンジェさんもだけど、今回の件より以前からシャルロットさんとは知り合いだったみたいだ。そう言えばお二人が首都圏に出向く前にご一緒した探査の時にそれらしいこと言ってたもんな。
元より知り合いだったからこそ、彼女が動いているこの案件を割り振られたってのはあるかもしれないね。
そんな、妹のリア充ぶりに溶けて怪生物になりかねなさそうなランレイさんはともかくとして。
いよいよ先行の迷宮攻略チームの突入開始だ。トップランナーchのスタッフさんが次々、穴の中へと落ちては別次元の領域に転移していく。
そして最後の一人、セーデルグレンさんがこちらに向けてアナウンスした。これまでのハイテンションとは打って変わっての、真面目な口振りでだ。
「我々全員が突入してから10分ほどしたら突入してください。私がみなさんを正規ルートと思しき道筋へご案内いたします」
「よろしく頼む、セーデルグレン」
「内部で目についた生物についてはモンスターは始末、人間は気絶させます。その都合、戦闘もありえますがまずは私どもにお任せを! みなさんには極力温存してもらったまま、敵首魁のところへと至っていただきます」
「ハッハッハー、頼もしくてありがたいねー」
まずはある程度敵勢力の鎮圧と迷宮内の制圧。しかる後に俺達をなるべく消耗させないままプレーローマ・アンドヴァリの下へと届ける、と。
まさしくプロの仕事を思わせる姿。トップランナーを名乗るだけはあり、きびきびとした動きは頼もしさを感じさせるよ。
そうしてセーデルグレンさんも穴に飛び込んだ。そこから10分すれば、いよいよ俺達も突入することになる。
緊張と不安に包まれた10分だ……と、サウダーデさんが不意に挙手し、ヴァールに呼びかけた。
「すみませんヴァールさん。俺とロナルドくん、フェイリンさんについては地上に残り、不穏な輩が現れた時の対応役として待機したいと思います」
「む? ……ふむ」
「俺達は元々作戦に組み込まれていないんですよね。さすがに一大決戦って時に、即興の助っ人な俺達が加わるのもリスキーかなと」
「ああ、まあそうですね。エミールさん達を迎えに行った私は本来からして選抜チームですが、こちらの四人は完全にイレギュラーな助っ人ですし。コーデリアさんだけは地下迷宮のショートカットを作れるかもしれないので、同行すべきですが」
地上に残り、良からぬ輩やさらなる敵の奇襲に備えると言う急遽来日してくださった助っ人三人。
作戦にそもそもなかったファクターな以上、それを本隊に組み込むのはリスキーだと語るロナルドさんはまさに正論だ。本来なかったはずの要素を、そこまで当てにしてはいけないからね、普通に考えて。
ヴァールとしては、そこはどちらでも良かったんだろうね。言われて少し考えつつも理解を示している。
それを後押しするかのように、ベナウィさんとリンちゃんがそれぞれ思うところを語る。
「ミスター・ロナルドに至ってはマキシムとミレニアムの持ち主、海方陸を相手取るために来ていますからね。早々に目的達成ができた今、やるべきは後方支援あるいは後詰めでしょう。私は皆様についていきますが、師匠達については地上を託すべきかと」
「姉ちゃん! これ、姉ちゃんの戦い! 認定式の時に潰せなかったバリア、きっちり潰してくる! 星界拳士としてのリベンジだよ!!」
「う、うん! わかってる、絶対にあのバリアは切り裂いて潰すから……!」
怖ぁ……ベナウィさんはともかくリンちゃん、完全にランレイさんを焚き付けてるじゃん。
瀬川のバリアを、身内の星界拳士が突破できなかったことがリンちゃんとしても気になっていたんだな。
それを受けてランレイさんも強くうなずくんだけど、俺としては勢い余って瀬川まで殺さないようにだけお願いしたいところだよ。
瀬川……最期まで酷い目に遭いそうだなあ。自業自得ながら、南無ー。
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