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攻略!大ダンジョン時代─俺だけスキルがやたらポエミーなんだけど─  作者: てんたくろー
本編

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153/1850

シェン饅頭の設立だ

 ここに来て、若干の怪しさを垣間見せてきたシステムさんのことはさておくにして。

 俺と香苗さんはリンちゃんを連れてひとまず、一週間を寝泊まりする部屋に向かうことにした。

 

 もちろん俺と香苗さんは別室で、しかもそれぞれ最上階のいわゆる、ロイヤルスイートってやつだ。

 エレベーターでありえないくらい長い時間をかけて昇って、足が震えるくらい高い階層をおっかなびっくり歩いて、どう見たって分不相応な豪奢極まる部屋に辿り着く。

 

「ドアからしてもう、お高いなあもう!」

「もーう……うしさん?」

「人間さん」

 

 ドアのデザインからしてすでに豪華で、ビビりまくりな俺にリンちゃんがかわいく首を傾げた。山形、人間です。

 中に入ると案の定というか、思った通り信じられないくらい広い。なんでホテルの一室なのに豪邸みたいになってるんですか。わけがわからないよ。

 

「すごい。豪華」

「ん? リンちゃんもここ、初めてなの?」

「うん。すごい。お城」

 

 つぶらな瞳をキラキラさせて、リンちゃんは部屋を見回している。上品なインテリアでコーディネートされた室内を、まるでファンタジーに出てくるお城のように見立てているのだろう。

 ていうか、語彙ないなこの子。日本語に不慣れというか、普段遣いじゃなさそうだしそのせいかな。これでネイティブ言語だとめちゃくちゃ喋る、とかだったら面白いかもしれない。

 

「……なに?」

「いいや、なんでも。君もこのホテルに泊まってるの?」

「ううん、WSO日本支部、の、貴賓室」

「貴賓室って、VIPじゃないか」

「そうなの……? 知らないけど、ベッドふかふか、お風呂ぽかぽか」

 

 リンちゃんいくつなんだろう。見た目は優子ちゃんよりちょっとしたか、下手すると同い年くらいなんだけどずいぶん幼いぞ、言動が。

 しかし女の子に年を聞くのも憚られる。さすがに君何歳? 若いねー的なのはハラスメントに該当しかねないよ。怖ぁ。

 

「ずいぶんと、その、幼い感じですが……フェイリンさん、おいくつですか?」

 

 ナイス! ベリーナイスだ香苗さん!

 どうやら彼女も似たような疑問を抱いたらしく、怪訝な顔をして尋ねている。若干言葉を濁しているのは、やはり香苗さん的にもデリケートな質問であると認識しているのだろう。

 そんな気遣いの俺たちに対して、フェイリンちゃんはあっさりと答えた。

 

「ん、私……14歳。大陸奥地、一族のみの里で育ちまし、た」

「里?」

「はい。星界拳、の里……シェン一族の里、です」

「話からすると、彼女は故郷の里で暮らしていて、しかもそこは、星界拳なる流派を修めるシェン一族の里であるようですね」

「そう……です。創設96年の、シェン饅頭が自慢の里、です」

 

 誇りなのか、自慢げに少女は語る。

 一族だけの里で、星界拳とやらを修行し続けているのか……もしかしたらそれで、ちょっと浮き世離れした感じなのかもしれない。

 天覇? だっけか、とにかく一番上の段位らしいものな、この年で。天才だわ、ヤバぁ。

 

 しかし、リンちゃんは拳法家か。なんかカッコいい肩書だな。カンフースターみたいな、目にも留まらぬバトルアクションを繰り広げるんだろう。

 素手での戦いというなら俺にとっても勉強になるし、ぜひ一度、ダンジョン探査をご一緒したいもんだ。

 

『それも良いですけどー。公平さん、決戦スキルの継承についても聞いてみてもらって良いですかー?』

 

 と、リーベの声。さすがに決戦スキルの話の方が気になるか、そりゃそうだ。

 ていうかシステムさんに聞いてみたりしたのか? 何企んでるの? って。

 

『あー、はい。称号で釈明されてますねー』

 

 若干投げやりな感じの返事が来た。こいつ、もしかしなくても拗ねてるだろ。システムさんと喧嘩でもしたのかな。

 

『リーベの管轄の外だから、の一点張りですよー! ひどくないですか、あの秘密主義者ー! 明らかに別ラインで何か仕組んでるじゃないですかやだー!』

 

 泣き叫ぶ。たぶん体が見えてたら駄々っ子みたいにジタバタしてそう。

 まあ、しばらく泣かせとこう。それより称号だ。

 俺はステータスを開いた。

 

 

 名前 山形公平 レベル262

 称号 すべては荒野を照らすため

 スキル

 名称 風さえ吹かない荒野を行くよ

 名称 救いを求める魂よ、光と共に風は来た

 名称 誰もが安らげる世界のために

 名称 風浄祓魔/邪業断滅

 名称 ALWAYS CLEAR/澄み渡る空の下で

 

 称号 すべては荒野を照らすため

 解説 いかなる疑念、誹りを受けようとも私のすべてはそのために

 効果 効果によるバフを、肉体の特定箇所に一点集中できる

 

 《称号『すべては荒野を照らすため』の世界初獲得を確認しました》

 《初獲得ボーナス付与承認。すべての基礎能力に一段階の引き上げが行われます》

 《……ですが信じてください。決して悪いようにはしません。リーベには、申し訳なく思います》

 

 

 …………う〜ん。

 何というか、システムさんも結構、抱え込み屋なんだなあ。

この話を投稿した時点で

ローファンタジー日間4位、週間4位、月間2位、四半期1位

総合月間13位、四半期13位

それぞれ頂戴しております

本当にありがとうございます

引き続きブックマーク登録と評価の方、よろしくお願いいたします

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― 新着の感想 ―
[気になる点] 今まで以上に人間味のある返答が来たな……
[一言] 半端に有能な人は「自分でやった方が早くて確実だから」と仕事を抱え込む傾向があるそうです。 システムさんは事情があって、中間管理職無しで部下を派遣して仕事をしている社長に見えて、そっとエナド…
[一言] 相手が強大なので、複数の対策するのは必要な事だからね。 しかも相手は結構自由に行動しているので、隠せる情報は隠していると言った感じかな?。
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