激突、氷魔法! ロナルドvs海方
思わぬ敵の反抗で、正直なところ出鼻を挫かれたわけだけどもはや引き返すわけにもいかない。
これ以上プレーローマ・アンドヴァリを野放しにすれば、際限なく被害が広がっていくだけだろう。
というわけで態勢を整えるために一旦時間をとっている迷宮攻略チームに先んじて、選抜メンバーである俺達は地下に突入することにした。
そのためにもまずは、地下を塞いでいる海方とサークル残党を倒さないとな。
そう決めた矢先、海方の創り上げた氷壁をあっという間に半壊させたサウダーデさんとリンちゃんがこちらに飛び下がってきた。
同時にスレイプニルも消え、背中に乗っていたベナウィさんと愛知さんもやって来る。
「サウダァァァァァァデッ!! ──話は聞かせてもらったぞ公平殿! であればここは俺達が引き受けよう!」
「真道ッ! 星界破天脚ッ!! お久しぶりです公平さん、みなさん! サークル、私達で蹴散らします!」
「我々もお忘れなく、ミスター。力の限りお手伝いしますよ」
「少し遅れている間に、やつらめまたS級モンスターを投入していたから肝が冷えたよ。ここまで来て役立たずでは終われない、多少でも戦働きさせてもらうさ」
「サウダーデさん、リンちゃん、ベナウィさん、愛知さん……!!」
愛知さん以外とは、最後に話をしてから大体二ヶ月くらいになる再会だ。みんなまるで変わりなく元気なようで良かった。
相変わらず修行僧スタイルの筋肉の塊なサウダーデさん、チャイナ服に元気一杯なリンちゃん。そしてスーツ姿で穏やかな笑みを浮かべるベナウィさん。
そこに並ぶロナルドさんも含め、S級四人にS級相当の武術家一人が一気に加わったことになるな……ものすごい光景だ。それぞれ一人だけでも敵からしてみれば悪夢みたいなもんだろう。
だが俺達からすればこんなに頼りになる話はないよ。
「エリスさんもお久しぶりです、去年の100年祭の時以来ですね。マリーさんも近くにいるんですよね?」
「ハッハッハー、久しぶりだねロナルドくん。マリーなら後方で指揮してるよ、もう引退して隠居したから前線には立たないからね、あの子も」
「あー、らしいですね……この戦いが終わったら挨拶しに行きます。もちろんソフィアさんやヴァールさんにも」
「そうだね、それが良いよー。今はとにかく、公平さん達と協力してアレクサンドラを追い詰めよう!」
「はい!」
25年前のモンスターハザードでも共闘してたんだから、当然エリスさんとも知り合いなロナルドさん。マリーさんやソフィアさん、ヴァールとも旧交を温めたがっているけど、まずは敵を倒してからだと海方達に目を向ける。
氷壁はすでに壊れかけだけど、その向こうにいる海方達の意気は衰えていない。やつらとて知らないわけもないだろう探査者界隈のビッグネームが大勢現れたんだけど、よく諦めないもんだ。
いや、むしろ海方についてはさらに気炎を上げ始めている。マキシムとミレニアムをロナルドさんに向けて、真っ向から喧嘩を売り始めたのだ。
「ロナルド・エミール……! マキシムとミレニアムの最初の使い手だったS級のお出ましか! かつての愛銃を取られてお怒りってかい!?」
「お前が誰かは分からないけど、話に聞く今のマキシムとミレニアムの使い手みたいだな。ウラノスコーポレーション……25年前から胡散臭い兵器商人だったけど、あっさり一線を越えるよな」
「お前が使っていた頃とは違う、改良改善を繰り返してるんだぜ、このAMWはッ! 《氷魔法》の増幅倍率も段違いだ、テメェ相手にも引けは取らねえぜ、アイオーンさんよっ!!」
一歩前に出て、銃口を向ける海方と向き直るロナルドさん。まったく動揺も怒りもない凪いだ表情は、その内心を窺わせることはない。
ただ、彼の周囲の気温が急激に下がっていくことに俺は、俺達はすでに気づいていた──《氷魔法》だ。海方が使うのとまったく同質同種のスキルが、桁違いの威力と精密性でもって発動している。
やるのか、ロナルドさん。海方の、増幅されたスキルを同じスキルでもって封殺すると?
いよいよ空気が目に見えて凍てついていく。吐く息さえも白い、一足先に来た真冬空間の中で彼は、静かに宣告した。
「それを言うなら俺だって25年前からさらに進化しているんだ。お前が扱う改良型のマキシムとミレニアムさえ、凍てつかせてみせる」
「やるかっ! 《氷魔法》! やるぜマキシム、ミレニアムッ!!」
「何よりその銃は、俺と妻を繋げてくれた思い出の品だからな。返してもらおう、《氷魔法》」
二人のオペレータ、一つのスキルが同時に発動する。
普通に考えればS級であるロナルドさんのほうがレベルも高ければ出力も高く経験も多い。万一にも押し負けるとは思わないが、さりとて海方もそれらの代わりにAMWによるブーストと悪魔と契約して得た力がある。
つまりは単純な実力勝負。積み上げたものが多いほうが勝つ、ある意味シンプルな比べ合いだ。
さて、どうなるか。
「氷獄、夢幻──っ!?」
「────グレイシャルエイジ・ワールド。悪いが俺の氷は世界も時代も凍てつかせる。お前の氷じゃ遅いのさ、すべてが」
──勝負はしかし、一瞬でついた。
同時に発動した《氷魔法》だが、それによって引き起こされた現象はロナルドさんのほうが早く、あまりにも早く。
海方陸の手にしたマキシムとミレニアムは瞬く間すらなく氷に覆われ凍てつき。
やつの身体もまた、四肢が氷漬けとなって行動不能に追いやられたのだ!
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