現れる副将・海方陸
精霊知能三姉妹で受け持っている、最後のウーロゴス。
現れた五体の中で最も採石場から離れ、市街地に向かわんとしていたソレを足止めしつつも、彼女らは着実に無力化を図っていた。
「おのれっ!! チェーホワの飼い犬どもがふざけおってッ!!」
「それも揃いも揃って小娘ときた……!! 舐めてるんじゃないわッ、年季の違いを見せてくれるわぁっ!!」
例によって鳥型モンスターの背に乗った召喚スキル持ちが、ウーロゴスの頭上から地上に向けて急降下してくる。他の連中とは違う、極めてアグレッシブな動きだ。
自分達がやられればその時点でウーロゴスは半分以上無力化される、それを承知の上でしているのか?
何より驚くべきことだけど、攻撃を仕掛けてきているのは二人組、もうかなりの御老体だろう、老爺と老婆。
しかもなんかめっちゃ重武装だ、両の手にはショットガンを構え、背中にはガトリングガンを負ぶさり、体中に拳銃やら軍刀やらを備えている。
なんならモンスターの背中にはミニガンとかマシンガンも置いてあるし、なんかもう二人だけでも戦争したる! みたいな気概に溢れた武装ぶり。
サークルの拠点を虱潰しに捜査してる時に見た、フルオープンアタック婆ちゃんをも超えている。いわば最終決戦仕様フルアーマー爺ちゃん婆ちゃんと言えるだろう。
見ているだけでも頭が痛くなるようなそんな人達は、殺意と憎悪を隠しもせずにウーロゴスを拘束するヴァールめがけてショットガンを放っていく。
当然それを見逃すシャーリヒッタとリーベじゃない。俺がワームホールを開くより早く、彼女達は対応策を打っていた。
「《防御結界》! 元気なのは良いですけどねー、それでこういうことやってるんじゃ仕方無くないですかねー!?」
「《鎌術》! 言いたい放題しやがって、ふざけてんのはテメェらだジジイにババアッ!! 大人しく諦めやがれ、勝負にもなっちゃいねーんだよォッ!!」
「後釜、シャーリヒッタ! すまんな、引き続きウーロゴスの足は止めるからやつらのほうは頼む!」
リーベが《防御結界》を展開してヴァールの周囲を数分間、完全に外敵からシャットアウトし銃弾を防ぎつつ叫び。
シャーリヒッタが手にした鎌で飛来する銃弾のことごとくを叩き落としながらも雄々しく吼える。いずれもフルアーマー老爺と老婆に対して、さすがに思うところがあるような感じだ。
姉二人に護られた形になるヴァールは短く感謝を述べつつ、引き続きウーロゴスの拘束を維持する。
これでひとまずウーロゴスが市街地にまで被害を及ぼすってのはどうにか避けられそうだな。今いるこの採石場で行われている乱戦も、当然のことながら探査者側の圧倒的優勢に傾いているし。
元より初手ウーロゴスの大量投入で一時体勢を崩されただけなのだから、それに対応して場が落ち着いた今、仕切り直しを図ればこちらに負ける要素がないからね、そもそも。
あっという間にサークル構成員が圧倒されて降伏していく。スレイブモンスターは俺が軒並み浄化したし、悪魔憑きったってこの数の探査者を相手にできるもんじゃない。
「ちっ……ちくしょうっ!? あんだけいたウーロゴスが、スレイブモンスターが、も、ものの1時間経たずに全滅寸前かよ!? ふざけんなどんだけチートだテメェらぁぁぁっ!?」
「そこまでやりたい放題するなんて恥ずかしくないのっ!? 偶然得ただけの力でよくも、私達の正しさを一方的に蹂躙できるわねっ!?」
「ゴチャゴチャうるせえぞテロ屋ども! 何がチートだ、何が正しさだ!! ふざけていて恥ずかしいのはお前らなんだよ、犯罪者どもがっ!!」
「偶然でもチートでも、私達のステータスは世のため人のためにあるものです! あなた達のような輩が望む世界、時代が訪れるのを防ぐための力です!!」
敵味方の怒号が飛び交うも、やはりサークル側の悔しげな叫びが響き、それに負けじと探査者側からも声が上がる。
いい加減、テロ組織の身勝手な言い分には反論しないではいられないんだろう。こないだの藤近功といい、ふざけるなと言いたくなる理屈でとんでもないことをしでかしてきてるわけだからね。
……さて。そんなことを言ってる間に多少はミュトスも休憩して息を整えられた。
現状最後のウーロゴスの回収に向けて動いてもらうことにしようか。リーベやシャーリヒッタ、ヴァールの助太刀に入る必要があるから、俺も出向くとしよう。
「ミュトス、そろそろ行けるか? 俺もサポートに入るけど」
「はい! ちょっぴり休んで元気も戻りました、いつでも行けます!」
「よし。それじゃあ香苗さん、そちらでは選抜パーティの面々を集めて、改めての仕切り直しをお願いしたいんですけど大丈夫ですか?」
「お任せください。アンジェリーナ達にエリスさん達とともにバリケードの向こうまで一気呵成に攻め込みます。ウーロゴスを回収し終えた後、公平くん達が戻ってきたら作戦再開ですね」
地上は落ち着きつつあるから、そうなればいよいよ本来予定していた地下迷宮攻略フェーズに移る。その準備をも香苗さんにお願いすれば、彼女はうなずいてくれた。
よし、じゃああと一息だ。フルアーマー爺ちゃん婆ちゃんの相手をしているリーベとシャーリヒッタに助太刀しよう──
そう、行動を起こし始めたまさにその時だった。
ちょうどバリケードのあるあたり、地下からオペレータの気配が現れて俺はそちらを見た。
瓦礫の山となったバリケードの上に立つ、黒いロングコートの男が一人、二丁拳銃を手にして冷然と戦場を見下ろしている。
このタイミングで姿を見せたか、海方陸。
おそらくはこの採石場にて、サークルを指揮している副幹事長がついに現れては、俺達に黒く冷たい敵意を向けてきていた。
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