アンジェとランレイ─星明かりを導く剣と拳─
香苗さんが拵えた足場を文字通りの足掛かりとし、猛烈な勢いでウーロゴスの上半身部分へと駆け上がっていくアンジェさんチーム。
もちろんその道中にも攻撃はすでに開始している。それぞれ刀、脚、そして聖剣でもってウーロゴスを切り裂き、中にいる仮死状態のオペレータを無理くり引き抜き排除しているのだ。
「まだるっこしいけど、やんなきゃ話が進まないものね! 《剣術》、竜断刀・スサノオ!!」
「《闇魔導》ッ! 双魔星界拳ッ、双魔星界斬撃脚ゥッ!!」
マリーさんから引き継いだという刀を駆使し、無数の斬撃を繰り出すアンジェさん。
スキルで作り上げた幻影のドッペルゲンガーとともに息ぴったりの星界拳を放つランレイさんともども、すさまじい勢いでウーロゴスの体内を斬り、あるいは蹴り開き進む。
スレイブモンスターという障害物がない今、上空はすでに彼女らの独壇場だ。ウーロゴスの抵抗も多少あるが、そこは香苗さんの《光魔導》が封じ込めている。
すなわち絶好の機会。神奈川さんも聖剣を振るって二人についていくなか、地上からサポートを行う俺は三人のやりとりを耳にした。
「千尋、ここは私とアンジェがメインを張る! お前はパス・オブ・ヘヴンを温存するのだ、来る瀬川との決戦のために!!」
「そーよ千尋! 私らはともかくアンタは、アンタだけは瀬川とは万全の体勢で決着つけなくちゃ!」
「ランレイ……!? アンジェ!?」
「一年も二人きりで堪え続けてくれたんだもの、あいつらの終わりは千尋がもたらすべきなのよ!!」
ウーロゴスを切り裂き続ける道中、神奈川さんへと向けられるその言葉。
バトルにこだわりの強いアンジェさんとランレイさんだけど、メインディッシュとも言うべき瀬川の打倒だけは神奈川さんに委ねたいと叫んでいる。
そこにあるのは紛れもない、神奈川さんとステラへの敬意。
彼女らが、そして俺達が知る遥か前から静かに戦い、やつらの陰謀を瀬戸際で食い止めていた偉大なる戦士への、お二人なりの尊重だった。
「その身たった一つでテロ組織に食らいつき続けた年月に、能力者犯罪捜査官として我らは心より敬意を払う! ゆえに! 因縁深き瀬川は千尋こそが仕留めるべきだ!」
「もちろん、バリアを剥がすまでは付き合わせてもらうけどね! それとこれとは話が別よ、瀬川はアンタがしばき倒すとして、瀬川のバリアは私らが仕留めるんだから! やられっぱなしは悔しいものね!!」
「そ、それは……俺としちゃありがたいが、だが出し惜しみしている場合じゃなくないか!? この局面、俺だって何かしなけりゃ気が収まらねえぞ!?」
「だったらその鬱憤は瀬川にぶつけなさい! ……この数ヶ月、アンタとステラとともに過ごした。だからこそ言うのよ、大好きな友達二人にね────アンタはアンタの使命を果たせ、神奈川千尋ッ!!」
優しく微笑むアンジェさんの横顔が、遠目からでも視認できた。日本に来てできた大切で大好きな友人達への、それはエールであり叱咤激励だ。
ランレイさんも強くうなずく。二人から向けられる偽りのない親愛と信頼、そして期待。そこまで言われては神奈川さんも、その意を受け取るより他はないだろう。
何より、彼にとっての最愛が背中を押している。
透明な、精神体のままのステラが……そっと寄り添い、彼へと言っていた。
『言葉に甘えよう、千尋。私達にとっても大切で、大好きで、そして素晴らしいこの二人の友人達の想い……受け取るべきだよ、私達は』
「…………ああ。こんなすげえ人達が、俺みたいなのを友と呼んでくれてんだ。そして期待と気遣いをしてくれてる。これに応えないんじゃ、二人の背中を追いかける資格なんざねえよな、ステラっ!!」
『うんっ! だから──お願いアンジェ、ランレイ! 千尋のために、瀬川への道のりをどうか切り開いてっ!!』
ステラもまた、アンジェさんとランレイさんをかけがえのない友として叫ぶ。その姿に俺は、そっと目を細めて微笑んだ。
精霊知能たるあの子の世界は。400年もの間、聖剣をただ管理するだけだったあの子の光景は今や、あんなにも広く、そして色づいている。
友と、愛する人を得て。一個の生命として、鮮やかな色彩を獲得したんだ。
ワールドプロセッサ。見てくれ、あれもまた、私達が掴み取ることのできる未来の一つだ。
きっとあの子を皮切りに、これからも多様性を獲得する子が出てくるだろう。それはとても素晴らしいことだと、コマンドプロンプトとして俺は心底からステラの覚醒を祝福するよ。
「承知ッ!! 我らが友よ、しかと見よ! 双魔星界拳はシェン・ランレイと!」
「能力者犯罪捜査官、アンジェリーナ・フランソワ様の大立ち回り! 素敵な友達の行く手を阻む、何もかもをぶった斬ってご覧に入れるわよッ!!」
そしてそんな彼女を支えてくれる、素晴らしい人間の友人達にもまた、例えようもなく素敵で素晴らしい人達だと断言できる。
果敢にウーロゴスへと斬りかかるアンジェさんとランレイさんに向かうところ敵などいない。俺は胸がすく思いさえ抱きながらも、存在の垣根を越えた友情に目を細めた。
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