システムさん腹黒疑惑
「決戦スキル……!? き、君が!?」
「うん。まだ、引き継いでないけど」
現れた俺の案内役、らしいこのリンちゃんが、まさかまさかの決戦スキル保持者……予定?
何が何やら分からない。星界拳、って、格闘技? 天覇ってなんぞ。いきなり専用用語使われましても。
「星界拳は……私たちシェン一族にのみ伝わる、拳法。天覇は……段位。私、一番上。天才」
「そ、そう……」
「上から天覇、海覇、地覇、人覇、鳥覇、獣覇、魚覇、木覇。私と同年代、みんな魚覇。えへん」
「す、すごいね」
「えへん」
胸を張って自慢げなのがまた、幼くて可愛いけれど。いきなり拳法だの段位だの話されてもついていけない。
そもそも案内役とは一体何なんだろうか。SPよろしく、何にも聞いてない。これも香苗さんは知ってるのかな?
香苗さんを見る。一通り演説して興奮も収まったのか、スッキリした感じでこちらを見ていた。
「ふぅ……おや、公平くん。その子は?」
「なんか、案内役だそうです。星界拳? の、シェン・フェイリンさん」
「ニーハオ。お目にかかれて光栄、です……御堂香苗さん。私は、シェン・フェイリン。WSOからの案内役であり、決戦スキルと、流派・星界拳の正統後継者。天覇のフェイリンです」
「これはご丁寧に。御堂香苗です。ずいぶん……情報量が多いですね。決戦スキルとは、マリーさんと同様の?」
さしもの香苗さんも、彼女の自己紹介の唐突な情報の多さには面食らったみたいだ。さもありなん。
しかし俺よりは全然頭が良い人だから、すぐにそれらの情報を得たようだった。怪訝な顔で、同じ決戦スキルの持ち主であるマリーさんの名を挙げる。
リンちゃんははい、と一つ頷いて答えた。
「今はまだ、受け継いでいません……けど、山形さんとWSO統括理事、の会談で……次第によって、継承するかも、です」
「WSO統括理事は、何を知っているのですか? アドミニストレータ、とやらもそうですが、どうやら私の知らないことを公平くんはご存知のようですし」
「は、はは……」
冷や汗をかきつつ、俺は曖昧に笑う。
WSOの偉い人がなぜだか、アドミニストレータという単語を知っていてそれを使用して俺を会談に引きずり出したこと。
ある程度香苗さんはその経緯を知っているんだが、それゆえ彼女は、俺が何かをひた隠しにしていると既に推測をしていた。
救世主神話にダイレクトに関わっていそうな情報を、持ちながらこれまで隠していた。そのことが香苗さん的には面白くないみたいだった。
事情があるなら仕方ないとは理解してもらえたものの、ご覧のとおり若干、拗ねていらっしゃる。
最初に言及された際に思いっきりすっとぼけた俺にも原因はあるので、もう何とも言えない。さっさとレベル300にして、リーベを顕現させなくちゃ。
『ミッチー的には、やっぱり公平さんのことはなるべく知っときたいんでしょうね〜。乙女心ですねー、キャーッ!』
脳内で黄色い声を上げまくる、脳内ピンクの精霊知能リーベちゃん。お前ただでさえ騒がしいのに、これ以上うるさくなるとか勘弁してくれよ〜。
『女の子に向かってひどいですね! 顕現したら覚えといてくださいー!』
はいはい分かった分かった。
リーベを適当にいなしつつ香苗さんとリンちゃんを見る。WSO統括理事さんが、何を、どこまで知っているのか。それは俺的にも気になるところだ。
「答えてもらえますか? フェイリンさん。統括理事は公平くんの裏の事情を、一体どこまでご存知なのですか」
「ん、と……私も正確には知らない、です。ただ、ある意味では本人以上に知っているかと」
「まあ、すべてを知ってそうな言伝でしたからねえ」
「ただ、試すとか見極めるとか……ではないみたい、です。歴代に比べても、あまりに異質だ、と」
「歴代……」
ずいぶんとまた、詳しげなことを言うもんだな、その統括理事ってのは。
元よりすべてを知る時が来た、だの言ってきたわけで、それなりの事情通とは思っていたけど。どうも知識だけというわけでもない感じがする。
実感として、実際に見てきたような印象すら受ける。リーベ、心当たりないのか? もしかしたらお前の同類とか、あるんじゃないのか。
『ありえませんよ、それだけは。精霊知能は基本的にすべての情報、知識、認識が共有されているんです。仮に精霊知能がその統括理事に何やら吹き込んでいたとして、リーベが気づかないわけ、ないんです』
俺の疑念を即座に否定し、さらにリーベが悩む。
システムさん側の存在でありながら、まったく存知していないモノが身内にいて何か動いている。その気味の悪さは相当なものなのだろう。
『……マジで何者ですかねえ。歴代、それがアドミニストレータのことだとするならば。相当深いところまで知ってますよ、おそらく。それもシステムさんも絡んでる可能性が高いですし』
あの方なら、裏で別プランを複数抱えていてもおかしくありません。
と、そんなあからさまな疑惑を口にするリーベだった。
この話を投稿した時点で
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