剣鬼・拳鬼・聖剣使いvsウーロゴス
エリスさん達が弱らせてくれたウーロゴスに向けて駆けていくミュトス。
同時に発動した《イミタティオ・トリニタス・コスモス》が彼女の手足に鎧を纒わせ、先ほど同様にすさまじい威圧を放つ。
あれは断獄の力、ミュトス・断獄か。あれ程の力であれば問題なく、弱ったウーロゴスを倒してまた一段、失われた己の力を取り戻すだろう。
そちらはまったく心配していない。ゆえに俺と香苗さんは次、エリスさんとは別方向にいるウーロゴスへと向かった。
「アンジェさんとランレイさん、神奈川さんにステラ……!」
「あちらも持ちこたえてくれてはいますね。ですが周囲で乱戦が!」
進行方向、助っ人するアンジェさんチームは今なおウーロゴスと戦闘中だ。
エヴァンジェリスターに阻まれながらも、たしかに危害を加えてくるやつの動きに見事に対応しつつ、しかし自分達もなかなか敵に有効打を与えられていない。
本来ならば葵さんよろしくずんばらりん! とウーロゴスの身体を捌くくらいはできていて然るべきなのだが、それをできていないのにはわけもある。
彼女達の周辺、巨影の真下らへん。よりによって一番邪魔になっちゃってるところで迷宮攻略チームの一部とスレイブモンスター、ならびにサークル構成員が激突しちゃっていて、思うように動けていないのだ。
「竜断刀──っ、ああもう! 技の一つ放とうにも周りが邪魔ったら! この乱戦じゃ《重力制御》も危なっかしくて使えたもんじゃない!!」
「ウーロゴスの体表を駆け上がろうにもおのれ、敵も上手くやるな! スレイブモンスターが取り付いているぞ!!」
「完全に動きを取りづらくされてるな……まずいぞ、このままだとジリ貧だ!」
十八番の《剣術》も星界拳も《聖剣》も、乱戦の中では放ちどころが難しい。
下手に放てば味方を傷つけかねないし、さりとてウーロゴスの体表にもスレイブモンスターが配置されており、まずはそいらを討伐しないとそもそも有効打が放ちにくいのである。
アンジェさんも言うように、広範囲に影響を及ぼす《重力制御》なんてもっての外だ。敵味方の区別なくいきなり高負荷をかけてしまえば、まかり間違って不幸が起きかねないからね。
それゆえ思い切った行動に出かねているアンジェさんチームに対して、意図せずして邪魔をする形になってしまっている攻略チームの探査者さん達ももちろん苦慮しているようだ。
どうにか戦場をずらしたがっているだろう彼らを、しかしてサークル構成員達とスレイブモンスター達が阻んで動かさない。
完全にこちらの嫌がることを理解しての、妨害行動だった。
「くそっ! ヤバいぞここ、デカブツ相手のフランソワ達を邪魔しちまってる!!」
「なんとかして離れたいが、しかし……!」
「やりにくがってるところから離れる馬鹿が、どこにいんだよーッ探査者ども!!」
「味方を邪魔しあいながらおっ死ねぇぇぇっ!!」
チンピラそのものな叫びで刀やら槍やら武器を、デタラメに振り回してくる構成員達。
能力者は少ないもののほぼ全員から権能によるブーストが感知できる……悪魔憑きばかりだ、大量にいる!
肝心の悪魔どもの気配はないが、そっちは地下迷宮のほうで会うことになるかも知れないけれど。今は目の前の連中をどうにかするのが先決だろうな。
一も二もなく、近くまで走り寄った俺と香苗さんは、アイコンタクトを交わしつつお互いに今、できることをした。
「《目に見えずとも、たしかにそこにあるもの》! ウーロゴス周辺含めた、この地のスレイブモンスター達を一掃する──香苗さんは!!」
「彩雲三稜鏡! ────アンジェリーナ、ランレイさん、神奈川さんをウーロゴスへと導く土台を形成します!! 今ここで行うべきは、戦士達の支援!」
すなわち俺はスレイブモンスターの一掃。モンスターのみを浄化する焔が周囲1km近く以内に発生し、問答無用で彼らを輪廻へと還す。
当然ウーロゴスに取り付き、アンジェさん達の進撃を阻んでいるモノ達も含めてだ。地上の乱戦も多少はスッキリするだろうから、迷宮攻略チームを優勢に導いてくれるはずだ。
しかる後に香苗さんの彩雲三稜鏡だ。師匠の青樹さんからもらった、S級昇級祝いのブレスレットが光を放ち変質する。
細かな粒子となってウーロゴスの周囲に展開し、足場を形成したのだ……スレイブモンスターなき今、ガラ空きとなった上空へとアンジェさんチームを導くための土台だ。
そう。攻めあぐねている彼女らを支援し、ウーロゴスへと至らせるための俺と香苗さんの動き。まさしく戦士達を支援するための行動。
人と人がぶつかり合う乱戦のなかでのそれが俺達によるものだと即座に看破して、遠くからでもこちらを見てくるアンジェさん達に力強く、うなずく。
彼女達の目に、今まで以上の力強い光が宿るのを見た。
「公平、香苗っ……!! サイコーに素敵よ、あんた達!」
「謝謝ッ!! この恩は必ずや今、この場で返してみせよう!!」
「ああ──ウーロゴスを仕留めることでな!!」
まさしく発奮して、香苗さんが創り出した足場に飛び乗りウーロゴスの上空へと走り出す三人と透明の一人。
俺と香苗さんへの感謝を口にしつつも、彼女らは彼女らに託されたミッションをこなしに行くのだった。
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