発動!ミュトス、第三の形態
香苗さんの必殺、"伝道虹彩"プリズムアーク・エヴァンジェリスターによる、ウーロゴスの足止めを利用しての俺の攻撃。
なるべく人間を傷つけかねない行動は、たとえ非殺傷のものにせよリスクを鑑みて避けたいと思っていたんだけれどね……もはや気にしてもいられない。
さっさと倒して、俺達は先に進まなくちゃいけないんだ!
「貴様っ、シャイニングやま────」
「《寝ていろ》! そしてミュトス、そっちも早く片付けて次はこちらに来てくれ……山形くん連続光線!!」
例によってウーロゴスの頭上、飛行する鳥モンスターの上に立っていた召喚役の構成員を威圧で即座に黙らせる。
先のビームでウーロゴスの頭部もろとも吹き飛ばして、モンスターは浄化し構成員はワームホールでおまわりさん行きだ。
しかる後に市街地により近い地点、ミュトスが対応しているウーロゴスに向けて両手から次々にビームを放つ。
もちろんミュトスと、あと電池役は避けているけど威力は変わらず1500倍。当然のように減衰なく突き抜けたレーザーが敵の巨体に無数の穴を開け、そして中にいた人間達を絡め取って取り除く。
彼らもまた、近くの地上にワームホールで送れば……察して動くミュトス・魔天が、さっそく必殺奥義を繰り出した!
「さっすがコマンドプロンプト様、即座に整えてくださった! ならばここに、三界機構が魔天の名の下に今こそ必殺を告げる────ディヴァイィィィン・ラァグナロォォォック!!」
雄々しく叫び、身体全体でウーロゴスへと突撃するミュトス。その身に纏う力は紛れもなく三界機構、異世界のワールドプロセッサが一体、魔天のそれだ。
ディヴァイン・ラグナロク。《イミタティオ・トリニタス・コスモス》によりかのモノの力を一時譲渡したミュトスが誇る、空戦形態の一つであった。
まさしく流星そのものと化してウーロゴスを貫き、そして内部で膨れ上がる太陽めいた光。
とてつもないエネルギーだ……全段解放シャーリヒッタにも並ぶそのパワーは、はっきり言えばこの世界においては俺とワールドプロセッサに次ぐ出力。ウーロゴスに耐えきれるわけもない。
収束していく光とともに、撃ち抜いたウーロゴスをミュトスが吸収していくのをたしかに確認する。
これで4体目か? 相当力が戻ってきているのは見て分かるけど、まだまだここからだ。
すくにこちらに向けて飛来せんとする彼女の動きに合わせて、俺は香苗さんに呼びかけた。
「香苗さん! ミュトスが来ます、タイミングを合わせてエヴァンジェリスターを離してください!!」
「分かりました! その後は……エリスさん達のところに向かわせます! 現状一番近く、また攻めあぐねている様子ですので!!」
「お願いします! 《あまねく世界の明日のために》!!」
簡潔なやり取りでサクッと段取りを決めつつ、先ほど同様今度は目の前のウーロゴスの体内に向けて山形くんビームを放つ。
今度はより柔らかく、そしてしなやかに。ロープ状にして体内に行き渡らせて、電池役の連中を巻き取って取り出すのだ。
ある程度まとめて、ひとかたまりにワームホールで地上へ送る。くそ、結構しんどいなこれ!
こんなところで権能を、ここまで使わされるとも思っていなかったから余計に消耗を実感する。プレーローマ・アンドヴァリめ、まさかこれをも意図していたか?
ウーロゴスを初手から全力投入するやり口も、認定式の時にすでに見たしな。アレがある程度有効だったことと、何より俺に権能を乱発させたことを踏まえて今回も同じ真似に至ったのなら……残念ながら見事にハマったと言わざるを得ない、かな。
「────来ましたねミュトス! エヴァンジェリスター離脱!」
「おっ待たせしましたーっ!! 《イミタティオ・トリニタス・コスモス》、換装! 災海さん、力を貸してください!!」
ぼやきながらも受け持つウーロゴスを無力化したところでミュトスがやって来た。取っ組み合っていたエヴァンジェリスターが唸りを上げて離れ、エリスさん達のほうに向かっていく。
そしてミュトスだ……本来の権能をさらに取り戻したゆえか、《イミタティオ・トリニタス・コスモス》を再度発動し、三界機構の力を魔天から災海のモノへと切り替えたのだ。
瞬間的な力の切り替え! かなり力を取り戻しているのか、ワールドプロセッサに与えられた精霊知能としての機能を十全に使い始めている。
それでも俺の見たところ、残るウーロゴスを取り込んでいけばさらに出力が増幅されるだろう。威力面では変わらずとも維持時間が伸びたり応用が利くようになるはずだ。
いよいよ秘められた力を発露しつつあるミュトスの姿が、眼前で変わっていく。頭部と翼に鎧を纏ったミュトス・魔天。手足に装甲を装着したミュトス・断獄に続く、第三のフォームだ。
──胴体から腰部にかけて無機質な、白銀の鎧が装着されていく。同時に周囲には8つの小さなワームホールが展開し、そこから鮫の頭を持つ蛸の触手が飛び出て、彼女の周囲を守るようにうねっている。
まさしくモンスターとしての三界機構・災海をイメージしたような姿だ。
ウーロゴスの肩口に着地する、災海の具現者たるミュトスはそして、高らかに名乗りを上げた。
「顕現ッ! ミュトス・災海!!」
ミュトス・災海。
魔天や断獄にも劣らない力を誇るその姿で、彼女は即座に攻撃を仕掛けた。
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