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サークルという組織─稚拙な悪意の末路─

 敵本拠地の表層部、採石場に拵えられたバリケード。

 そこに屯して待ち構えているのに数百の敵を指揮するサークル副幹事長、海方陸。

 

 幹事長である藤近を捕まえている今、サークル残党を率いているのは間違いなくやつだと見て間違いない。

 つまるところは初っ端から、俺達はサークルに対して後始末をつけることになりそうだった。

 

「瀬川の姿までは確認できませんでした。やつが海方とともにいるかどうかは判断しかねますが……同じサークル幹部です。決着をつけるつもりでいるなら、並んでいても不思議はないかと」

「他にも地表部にいるのはサークル構成員ばかりですので、残党はほぼ全員、地表に集結しているものかと。逆に言うならば地下の迷宮には──」

「──ダンジョン聖教過激派の構成員とスレイブモンスターが配置されているかもしれんわけか。サークルは、ひとまずの盾役として配置されたな」

 

 提示された情報から、向こう方におけるサークルの扱いをなんとなく察する。残党が過激派に合流したのは間違いないけれど、やはりと言うべきかあまり良い待遇ではないみたいだ。

 本丸である迷宮部分でなく、その入口周りを固めるように配置されているのが良い証拠だろう。幹部であり今やサークル残党のトップとも言える海方ですら、前線に立っているんだ。

 

 プレーローマ・アンドヴァリからすれば敗残兵。ゆえにやらせることと言えば捨て駒同然のバリケード、あるいは破れかぶれの玉砕要員。

 ……こうなる前に、投降してくれていれば良かったものを。海方以下サークル構成員にとって、今のこのような扱いが納得のいくものだとはどうにも思えない。


 自業自得とはいえ、良いように利用されるがままで終わる彼ら彼女らには、やるせないものを覚えるよ。

 嘆息するのは他の面々も同じだった。葵さんが小さく呆れた声を出す。

 

「あれだけ派手に暴れて……好き放題やって、それでも末路は肉の壁同然の扱い。ワルの末路を見る度思いますけど、悪いことなんてするもんじゃないですね。より悪い輩に目をつけられて、骨の髄までしゃぶられちゃって」

「アレクサンドラの本質を、サークル側はよく知らなかったのでしょう。あの女は取り繕うことにかけては天下一です。外面の良さと心地いい言葉で人を誑かす、アレこそ悪魔と呼ぶに相応しい」

「……私も、あの女に誑かされていたのですね。もう20年も前から、ずっと」

 

 能力者犯罪捜査官らしい、実体験からくる悪人達の末路の悲しさを語る。

 葵さんの嘆きに応えるように話すシャルロットさんや、ある意味ではアレクサンドラの最初の被害者とも言える神谷さんも、また。


 アレクサンドラ・ハイネン。火野アレクサンドラ。アンドヴァリ──プレーローマ・アンドヴァリ。

 様々な呼び方ができる六代目ダンジョン聖教聖女は、けれどいずれにしても本質は変わらない。聖女然とした言動の奥には強すぎる野心、野望を秘めた、ある種の狂気すら感じさせる怪物。


 己の目的のためなら他のあらゆるものごとばかりか、自身さえ擲ってしまう、まさしくそう、夢の化物と言える。

 やつ以外のすべてにとっての悪夢を、どこまでも貪欲に追い求めたその精神性は、もはや人間と呼べるものではなくなっているのかも知れない。

 だからこそ、ここでやつを止めなければならないんだ。

 

「……仔細は分かった。まずは地上部に配置されているサークル残党を排除し、その上で本来の作戦に移行する形になるな」

「大多数の構成員は、迷宮攻略チームによる制圧を行います。それ以外の面々はそのまま迷宮に突入、攻略を開始。みなさま選抜チームの方々については、もちろん海方以下幹部格を捕らえてください」

「今回の作戦に関しては特例的に、日本政府と国際探査裁判所から能力者犯罪捜査官ライセンス非保持者による犯罪能力者の拘束と捕縛、またそれに伴う実力行使も認められています。ただし過度な殺傷については禁じられていますので、その旨よろしくお願いします」

「ハッハッハー。マジで滅多に出ない許可まで下りてる。政府も国際探査裁判所もよっぽど今このタイミングでケリをつけたいんだね。まあ長引いてきてるし、そろそろ決めたいのは分かるよ」

「と、と、統括理事や特別理事……いつまでもこの事件だけに関わっていられない、で、ですもん、ね……」

 

 簡略的ながらざっくり、地上の制圧を含めた作戦の流れが提示されると同時に、今回の作戦中にのみ捜査官ライセンスを持たない者にも犯罪能力者の逮捕と拘束が許されたとのアナウンス。

 聞いたこともない話だ。捜査官ライセンスがない探査者が人に危害を加えることへの許可なんて、たとえ相手が犯罪者であっても絶対に下りないと思ってたんだけどな。


 エリスさんやランレイさんが若干顔を引き攣らせているあたり、本当に滅多に下りない超特例的な措置なんだろう。

 つまりは日本としても国際社会としてもそれだけ今回の件にそろそろ決着をつけたがっているということになる。

 

 まあ、そりゃあね。

 政府としてはいつまで国内で暴れたい放題してるんだって話だし、国際社会としてはいつまでWSOの重鎮をことに当たらせてるんだって話だし。

 統括理事たるソフィアさんに至っては7月半ばからこっち、かれこれ3ヶ月も滞在してるんだもん。いい加減本来の業務に戻って来てくれと言いたくなるよね、世界のお偉いさん達も。

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― 新着の感想 ―
統括理事の滞在でどれだけのお仕事と経済が滞ってて関係者はすごい業を煮やしていそうですね
裏サイド、表サイド両方の経過を見て、作者が真相を語っても、堕聖女アレクサンドラ・ハイネン・火野が初代聖女の妹の血筋であるシャルロットの家族が住んでいた町に対するスタンピードも、孤児院に送られたシャルロ…
「そんな許可出して大丈夫ですか?」 「まあ、そもそも危なそうなのは大体捜査官だし」 (それはそれでどうなんだ……!)
2024/12/24 17:47 こ◯平でーす
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