いわば……ラストダンジョンだな!(謎)
聖女相手でも一切躊躇いない、伝道師さんの隣に陣取る。リーベやシャーリヒッタ、ミュトスもすぐ近くの席だ。
会議室入りする前から俺の気配を感じていたらしい──曰く"世界が輝きに包まれたかと思ったら我らが救世主山形公平様でした"とかなんとか──彼女は、シャルロットさんへの伝道もそこそこに満面の笑みで俺に話しかけてくる。
「いよいよ件の不逞聖女、火野アレクサンドラに真なる救世の御力を示す時が来たのですね! 及ばずながら不肖この伝道師兼S級探査者御堂香苗、あなた様の手となり足となりサークル残党からダンジョン聖教構成員からスレイブモンスターに至るまで打倒してみせましょう!」
「ど、どうも。いやまあ、実際香苗さんにはウーロゴスとか味方の防御側に回ってもらうんじゃないですかね? スキル的にも、装備的にも」
「"伝道虹彩"プリズムアーク・エヴァンジェリスターと彩雲三稜鏡によるガードですね。たしかに仰る通り、現実問題としてはそのへんの対処に駆り出されることにはなるかと思います」
S級探査者としても伝道師としてもやる気十分って感じの香苗さんだけど、実際のところは人間相手とかよりはモンスター相手、とりわけウーロゴスみたいな大型の化物が出てきた時用なんじゃないかなって気はしている。
何しろ例の伝道奥義、エヴァンジェリスターがとにかく規格外だからね……認定式の時、ウーロゴスとガッツリ組み合って互角の様相を呈したのは記憶に新しい。
他の人にあんな真似できるわけもない以上、さしあたってはミュトスに並び対ウーロゴス用の戦力として、香苗さんは数えられるだろう。
そうでなくとも、彩雲三稜鏡を用いての周辺の味方を守ったり、はたまた敵を包囲したりと今の香苗さんは相当テクニカルなこともできるしね。
もちろんモンスター相手ならまさしくトップ層だし、どこに投入しても超一級の活躍を期待できる逸材。
それが御堂香苗という探査者についての、俺から見た嘘偽りない評価だよ。シャーリヒッタも同じく評価しているようで、香苗さんに話しかけていく。
「サークルとの決戦の時もガッツリ、補助と支援で活躍してたもんなァ香苗は。あれだけできりゃどこでも大活躍できるだろうぜ!」
「ウーロゴスが出てきた場合、即座に対応できる探査者って限られてますからねー。その意味でもミッチーは相当な上澄みですよ! エース、エース!」
「過分な評価、恐縮ですね。ですが私はまだまだ高みを目指しましょう。すべてはそう! 救世の光を世に広めるために!!」
「えぇ……?」
伝道師として活動するために探査者として高みを目指すのか……いやまあ本人がそれでいいなら俺はそれも楽しそうでいいんじゃないかなって感じたけれど。
リーベからも続けて讃えられて嬉しそうにしながらも気炎をあげる香苗さんに、俺は救世の光と伝道師さんの行く末に想いを馳せずにはいられないよ。
下手しなくても俺の今後の人生にもいろいろ影響してくるだろうからね。
と、そろそろ開始時間だ。ヴァール、島根室長、郷田局長が登壇してマイクの前に立つ。
明日早朝、ついに行われる敵本拠地への強行突入。そこから始まるものとされる最終決戦に向けての作戦会議が今、始まろうとしていた。
『……お集まりの諸君。WSO統括理事のチェーホワだ、本日はよく来てくれた。明日早朝に行うダンジョン聖教過激派およびサークル残党の本拠地への突入に関する情報共有と段取りについてこれより説明する。よく聞くようにお願いしたい』
『説明は私、島根のほうから行います。みなさま、机においてある資料を御覧ください』
挨拶は簡潔に、さっそく本題に入るあたりいよいよ大詰めって感じだな。俺たちが座る席、机の上に用意されている何枚かの資料を手に取り確認する。
敵本拠地のある採石場の構造、マップとそこに辿り着くまでのタイムスケジュール。そして何より肝心な、誰がどこの部分に配置されるかの人員割り振りについてまで。
敵構成員のなかでもプレーローマ・アンドヴァリから海方、瀬川といった目ぼしい幹部格についてのデータやAMWの情報も多少載ってるから、これをよく読んでおけばとりあえずは明日、相手をする連中のことは分かるはずだね。
壇上のスクリーンに、プロジェクターで映し出された同じ内容の資料が見える。手元の資料と併せて見つつ、俺達は話に耳を傾けた。
『決行は明日朝5時。3時にこのホテルを出発して本拠地のある採石場へと向かいます。そこまでの所要時間は概ね1時間』
『到着後に現地でミーティングを済ませた後に行動を開始します。つまりは、突入です……採石場内のマップを御覧ください』
聞いていた通り、かなり早起きしての出発になる。この会議もさっさと終わるみたいだけれど、終わらせ次第ご飯食べて準備を整えたらゆっくり休まなきゃね。
次のページ、件の採石場内の地図が記された資料を見る。のだけれど……ここでいくらかざわめきが上がった。なんなら俺も香苗さんも周囲の仲間達も、困惑して静かに戸惑いの声を上げるほどだ。
そのくらい異様な構造が、そこには示されていたのだ。ヴァールが静まるのを待ってから告げた。
『一目で理解してもらえたと思うが、そうだ。例の本拠地は元々採石場があった場所をアジト化したものだが、随分手を加えたようだ──地下に広がる空間は事実上の迷宮。潜入調査を試みたものの未だ全貌が明らかになっていないほどの、複雑で広大な構造になっている』
記されている本拠地の構造。それはまるで迷路じみた、複雑な通路と部屋の集合体でかつ、途中までしかマッピングできていないようで道が途切れている部分が多い。
それは採石場というにはあまりに複雑過ぎた。まさしく迷宮、ラビリンスと言うに相応しいものだったのだ。
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