この聖女……割とすっかり救世主を信仰している!?
新生シャルロットさんの実力をたしかめつつも、ダンジョン探査は恙無く終りを迎えた。ダンジョンコアを回収し、現世へと戻る。
このダンジョンがあった地点は首都圏は雑居ビルの地下、駐車場の一角だ。なんとこのビルそのものがサークルの拠点だったということで、それを良いことにコアを用いてはあちらこちら無造作に、ダンジョンを作っていたみたいなのだ。
なんで連中がそんなことをしたかって言うと、やはりと言うべきかスレイブモンスターの調達が第一の目的だったみたいだ。倶楽部から仕入れたスレイブコアを使い、やつらはやつらで戦力拡充を試みていたんだね。
それと同時にサークル内の能力者達の実力向上のためにも使っていたらしい。認定式の日に結構な数が捕らえられたと聞くけど、残党にもまだ残っているかもしれないな。
「ふう、とりあえず一つ攻略っと! えーっと残るは一つ、二つ、三つ……んー、いっぱいあるわね!」
「つーか穴だらけだな。モグラじゃあるまいしあいつら、どんだけダンジョン作ってんだか」
「スキルを持つ構成員によるレベルアップの場と、何よりスレイブモンスター製造の現場。すべてでないにせよ、相当な量のモンスターをここのダンジョンから調達したのでしょうね、やつらは」
探査終わりの駐車場を見回し、アンジェさんがにこやかに朗らかに告げた。神奈川さんが近くでげっそりとした顔をしている。
まさしくおっしゃる通りでこの駐車場、至るところにダンジョンの入口があってなんとも無残なことになっていてまるでモグラに荒らされた田畑みたいになっているのだ。
シャルロットさんの言うにはスレイブモンスターを調達するのに使っていたダンジョン群のようだけど、いくらなんでも乱雑に作りすぎだ……車がまともに入れない空間になっちゃってるよ。
ランレイさんや神奈川さんにステラ、愛知さんも同じく呆れ返った様子で周囲を確認している。
「こ、これはさすがに今日一日じゃむ、無理だね……数日はかけてやっていかなきゃ。もしかしたら大規模なダンジョンも、あるかもだし」
「調査業者の都合もありますからね。今のところすべてを調査できてはいないようですから、資料を受け取ったものを順繰りに探査していくしかないでしょう」
「面倒な上に手間もかかりますが、仕方ありませんか」
ここにある無数の穴に、それぞれこれから調査業者による外部からの観測が行われる。
それをもって俺達にも資料が届き、探査を行うわけなんだがさすがに数が数だ。一気にすべてとはいかない。
なので今後しばらくアンジェさんチームはこのビルのダンジョンを探査していくことに専念することになるかな。
シャルロットさんもリハビリがてら今回のようにちょくちょく参加されるみたいだし、そんな彼女をとにかく気に掛ける愛知さんも当然ついてくるだろうし戦力的には申し分ないだろう。
俺? 俺もまあたまに参加するけど、基本的には学校生活と地元探査者としての活動も並行して行うからね。
なんならもうそろそろ10月だから、文化祭の準備もいよいよ本番に差し掛かりつつある。学生でもある以上、学内行事にもきっちり参加したいと思うわけでして。
そうしたわけからちょっぴりだけ、放課後の生活バランスを一時的に、学校のほうに傾けるつもりだったりする。
とはいえ呼ばれればもちろん首都圏だろうが概念領域だろうがシステム領域だろうがどこでも行くぞ。今回みたいに、完治したシャルロットさんの見届人みたいな形で同行するのもやぶさかじゃないのだ。
「山形さん。改めましてあなたやリーベさんにも感謝を。あなた方のおかげで私は、新たな人生を歩むことができるかもしれません」
「シャルロットさん……かもしれない、じゃなくて歩むんですよ。アレクサンドラを捕まえて、過去に折り合いをつけて、そうしてあなたはこれからの未来を見据えていくんです。今のあなたにならきっとできると、俺はそう思います」
「……ふふ。あなたにそう言われると、なんだかできる気がしてきますね。さすが救世主ということでしょうか? あなたはダンジョン聖教にとっても聖人たる資格をお持ちでしょうね」
「えぇ……?」
柔らかな表情を浮かべてくれるシャルロットさんとのやりとり。すっかり温かみを帯びてきた言動に優しい気持ちになるけれど、それはそれとして聖人とか言い出すのは止めてほしい。
例の宗教団体における救世主扱いだけでもお腹いっぱいすぎて破裂しそうなのに、その上に世界最大の宗教から聖人認定とか笑い話にできないよ。
伝道師がこの場にいなくて、本当に良かった……!
しみじみと思いつつシャルロットさんに曖昧に笑っていると、不意にステラに呼び止められた。
どこか深刻な様子で、半透明のまま話しかけてくる。
『……山形様。この後、少しだけ私と私の千尋にお時間いただけませんでしょうか』
「ステラ?」
「どうしたんだ、ステラ。山形さんに、しかも俺もって」
『折入ってご相談したいことがあるの、私の千尋。私達の将来に関わるかも知れない、とっても大きな相談事が』
いきなりだけど、なんだか不穏だな。神奈川さんも戸惑っているあたり、いきなり言い出した感じか、この子。
一体どうしたんだ? 二人の将来に関わるかもって相談を受けるなんて責任重大だぞ、これは。
アンジェさんやランレイさん達の、不思議そうな視線さえも受けつつうなずく。
どんな内容の話だろうか。いずれにせよ、結構シリアスめな話を受けそうだなあ。
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