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攻略!大ダンジョン時代─俺だけスキルがやたらポエミーなんだけど─  作者: てんたくろー
本編

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147/1859

電気ヒツジは山形の夢を見るか

「山形公平さん。再来週いっぱい、首都にある私どもWSOの日本支部にお越しいただけないでしょうか?」

「えっ、首都? 再来週いっぱい!?」

 

 烏丸さんの突然すぎる話に、俺は思わず叫んだ。

 探査者証明書の交付も終わったし、WSOと全探組のおっかないやり取りにも興味ないし、さあ帰るかなって時にこんなことを言われたのだ。驚かないわけがなかった。

 

 言った本人、WSOの烏丸さんも自分がすごく急な話を振ったという自覚があるのだろう。バツが悪そうに、けれど言わなければならないとこちらを見据えている。

 

「急な話で申し訳ありません。ですがそのタイミングに、WSOの役員統括理事が来るのです。彼女が、山形さんに協力できることがある、と」

「役員統括理事……って、もしかしなくても偉い人ですか?」

「WSOのトップです。あなたの後見人、マリアベール特別理事をも含めた理事会を束ね、指揮する総責任者ですね」

「そんな人がなんで俺に!?」

 

 もう勘弁してくれ、偉い人は懲り懲りだよ〜。

 なんの恨みがあるんだとさえ言いたくなるこの怒涛ぶりに、俺も思わず疑問を呈する。

 けれど烏丸さんから返ってきたのは、困ったような、けれど驚くべき話であった。

 

「統括理事から言伝を預かっています──新たな時代のアドミニストレータへ。すべてを知る時がきた」

「…………!?」

『え、はあ!? 人間が、アドミニストレータを!?』

「これだけですが……アドミニストレータ? なぜネットワーク用語なのでしょう?」

 

 首を傾げる烏丸さん。新川さんも広瀬さんも疑問符を浮かべているが、俺とリーベには衝撃極まる話だ。

 WSOの一番偉い人が、どうしてアドミニストレータを知っているんだ……? 俺より驚いていたあたり、リーベさえ知らないと見たけど。

 

『し……知りませんし聞いてません! 何ですかそれ、誰がそんなことを吹き込んだんですか!?』

 

 知らんがな。お前でも知らないってことは、システムさんが絡んでたりするんじゃないのか。

 

『ま、まさかそんな。いえ、でも。あの方なら必要があれば、人間と裏取引でも何でもして、誘導するくらいはしかねない……』

 

 え、怖ぁ。お前の中でシステムさんはどういう人なんだよ。

 リーベはブツブツと呟きながらも、次第に脳内から離れていったみたいだ。何だったんだ?

 

 まあいいや。ともあれ、アドミニストレータを持ち出されては、こっちも引くわけには行かない。

 すべてを知る時が来たってのも意味深だしな。何かしら情報を得られるんなら、行ってみるさ。

 

「あ、あの? 山形さん?」

「……分かりました。再来週、WSO日本支部に伺いましょう。どうやら、その、統括理事さんとやらとは話し合う必要があるみたいですし」

「そ、そうですか? ありがとうございます。山形さんの在籍されている学校には私どもから連絡を入れます。探査業にまつわるWSOからの依頼案件という形で、欠席扱いながら内申や成績には決して響かないようにいたします」

「あ、お気遣い恐れ入ります……」

 

 細かいところながら、ありがたいところをフォローしてくれて助かる。烏丸さんというか、WSO様々だな。

 そんなわけでこうして俺は、再来週、首都へと行くことになったのでありました。

 

 組合本部を出て、家に帰る。雨上がりの道すがら、俺は何とはなしに考えていた。

 この間いきなり現れた、邪悪なる思念の端末についてだ……俺を欲しがるって、どう言うんだろう。今さらだけど気になったんだ。

 

 いつだって嫌われてきたらしい、あいつ。

 自らを簒奪者、捕食者と位置付けるその心は一体、何なんだろうか。一体誰から、何を奪った? あるいは何を喰らった?

 孤独なのはあいつが望んだことなのか?

 

 それに。やつが度々口にする単語、ワールドプロセッサについても疑問がある。

 最初はたしか、関口くんを助けた直後。やつと戦った際にシステムさんとのやり取りで出てきたはずだ。

 たしかにあの時、端末はシステムさんのことをこう、言っていた。

 

「夢見るワールドプロセッサ……」

 

 それが、システムさんの本質、あるいは正体なのか?

 リーベは最初の頃、大いなる存在とシステムさんを呼んでいた節がある。ワールド……世界? プロセッサって何だっけ。

 スマホで調べてみると、いわゆる、CPUのことだと出てきた。便利。

 

「直訳すると世界CPU、とか? ……うわあ、なんかサイバー」

 

 前にマリーさんも言ってたけど、いよいよゲーム的というか、電脳的なものをイメージしてしまうなあ。

 もしかしてこの世界は巨大な電脳空間にあるスペースの、仮想構築された領域なのだ! とか。俺たちの正体は、ゼロとイチとで構成されたデータの、大小と構成の違いだけなのだ! とか。

 ……ないよね?

 

『あるわけないじゃないですかー、SF物に触れ過ぎですよー? 少なくともこの世界は、専用の物理法則から成り立ってますー』

 

 あっ、リーベ。

 おかえりー。

この話を投稿した時点で

ローファンタジー日間4位、週間3位、月間1位、四半期1位

総合月間11位

それぞれ頂戴しております

本当にありがとうございます

引き続きブックマーク登録と評価の方、よろしくお願いいたします

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― 新着の感想 ―
[気になる点] 電脳世界説が的外れなら、某ゲームのガイア的な存在なのかね? 夢見る→本人は動けないけど、意思のみで世界に干渉してるみたいな?適当だけど当たってそう。
[一言] 電脳空間にはいないけど、古代文明が関わっている説が浮上(_’ とりあえず、端末くんちゃんを誑し込めば問題解決するんじゃね? という事でデートするんだ!(。。 デート・ぉあ・ラ(手記はここで…
[一言] アンドロイドが夢で見るのかどうかという電気羊が山形の夢を見るのかというサブタイトルは重大な暗喩なのか、ただ何となくそれっぽいことを言ってみたかっただけなのか…
感想一覧
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