まあまあ謙虚なほうの悪魔とシンプルに図々しいほうの悪魔
遊ぶことしか考えてなくて、どんな形であれ委員会と絶縁することについて粛清の可能性があるとは一切考えてなかったらしい少女悪魔、オノスケリスは置いといて。
俺に契約を持ちかけてきた悪魔セーレに俺はふーむと唸った。契約自体は結ぼうが結ぶまいがどうでも良いんだが、さてどうするべきか。
さっきも言ったけどこの契約、俺にとってはメリットがない……というのは言い過ぎにしても、無視しても構わない程度の益しかない。
悪いけどこいつにできる程度の"なんでも"なんて高が知れているし、そもそも悪魔を頭数にするほど人手に困ってるわけでもないしな。
さりとて今しがたのセーレ自身の事情、動機を聞くにデメリットがないこともない。こいつは瀬川聡太を見届けるために現世に留まるつもりだし、そうなると委員会からの粛清が行われるらしい。
それがどういった形でのものかは知らんけど、町中でやられでもしたら一大事だ。最悪人々にまで危害が及びかねない。粛清というからには、それ相応の荒事をするんだろうしな。
それを考えるとセーレは俺が、契約の形で縛り付けて一時だけでも匿っておくほうが良いように思える。
なんていうかなー。加点法だと40点、減点法だと60点ってくらいの微妙な塩梅なのよね。
『極力、ご迷惑はおかけしないようにします。ああいえ、こうして取引を持ちかけている時点で迷惑なのは承知していますが、聡太が駆け抜けるのを見届けるまでで良いのです。彼の敗北は決まりきったこと、であればそれでも敗れる最後の瞬間まで、私はあの魂の煌きを信じていたい』
「めっちゃくちゃ必死だなァ……瀬川聡太ってやつの何がそんなにお前を動かすんだ? 理解に苦しむぜ」
『契約者だから、というのもありますが……見たいのです。初めから確定した敗北、落日。彼ら自身も分かりきっているのに、それでも遮二無二駆け抜ける日々を過ごした愚かで愛しい者達の終わりを。結果がどうなろうとやり抜くと決めた、聡太の覚悟を』
「…………その言い草では、サークルはどうやら自分達に勝ち目がないと承知の上でテロに走っているのか。分からん、ますます理解に苦しむ」
シャーリヒッタの戸惑いに、澄んだ瞳で答えるセーレに戸惑う。ヴァールも困惑しつつ頭を思い巡らせているな。
委員会傘下、犯罪組織サークル。元はカレチャOBOG団体だった彼らがなぜテロリズムに走ったのか。今のセーレの言い分を踏まえると、到底俺達には理解できない行動原理で動いている気がしてならない。
最初から負けると分かっていて、それでもやろうとする。聞きようによっては格好いいのだろうがやってることは国家転覆のテロだ、理屈に依らず問答無用でアウトでしかない。
そこに至る理由もまた関係なく、どうあれ捕まえるしかないのだが……ここまで来たら気になるのは気になるな。
決めた。
俺はセーレの提案に対し、結論を出した。
「分かった。契約しようか、悪魔セーレ」
『!! ありがとうございます、それで構いません、山形公平!』
「ちょっ、良いの公平!? 悪魔よ、そいつ!」
「下手に野放しにしてもろくなことにならなさそうですしね。それに都度、委員会側のことで聞きたいことができたら質問できますし、まあ捉えようによってはメリットはあるかな、と」
アンジェさんが心配してくださるけど、ぶっちゃけ悪魔だからどうだと言うのかって話だからな。契約じゃなく誓いこそ結ぶが中身は有名無実に近いし。
"言われたことは何でもする"なんて、裏を返せば"言われなければ何もしない"のと同義だ。はっきり言って対価としてはショボい。
だから"瀬川聡太の終わりを見届けることを認める"なんて、契約した側からすれば至極どうでもいい代償が成立したわけだね。実質こんなもの、セーレにつける首輪くらいのものでしかない。
なくても良いくらいなんだがそこはまあ、提案してきたセーレとしては矜持に関わる部分だろうし従っておく。
『一応、戦闘のほうもできますが……いえ。探査者相手にそれを誇るのは愚かですね』
「普段はワームホールの先で眠りつつ、瀬川に関する時だけ呼ぶから成り行きを眺めていれば良い。それだけでもお前にとっては十分なんだろ?」
『はい。どうあれあなたがサークルを追い詰めるのは必定、なれば私はそこに同行し、付き添うだけです』
謙虚な素振りで頭を下げるセーレ。誠実さは感じられるんだが、こいつ割と形振り構わず自分の欲望に突っ走ってるよなあ……
目をつけた人間の興りと滅びを見届けたい。なんて言い方は綺麗かもだがいかにも悪魔らしい。瀬川聡太は、まさしく悪魔に魅入られたな。
ともあれ契約を結ぶとしようか。
セーレと実際に口頭での誓いをやり取りしようとした矢先。何やら頭を抱えていたオノスケリスが、モジモジしながら俺に話しかけてきた。
なんだよう。
『あ、あのー。シャイニング山形様ぁ?』
「え、怖ぁ……いきなり何その猫なで声。気持ち悪いよ」
『気持ち悪くないんですけど!? 乙女渾身の萌え声なんですけど! いえそのー。ぜひともオノスケリスちゃんとも契約を結んでいただけませんかと思うんですけどー。護ってほしいんですけどー』
唐突に契約を持ちかけてくるオノスケリス。いくらなんでもお前、この流れでそれは……
唖然とする俺達。悪魔達までは? みたいな顔をする中、オノスケリスだけは焦ったように上目遣いで俺を見上げてきていた。
怖ぁ……
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