セーレは瀬川劇場をかぶりつきで見たいんですよ。最期まで
さて、粗方事情も聞き終えた。いろいろ興味深く、価値と意味のある情報を聞き出せたように思う。
となるとこの三体の悪魔達はきっちりと取り調べに応じてくれたことになるので、事前の話のとおりに解放するのがこちらとしての筋だよね。
「というわけで解放しようと思うけど……わかってるな? 誓ってもらうことがあるのを」
『ふん……《今後一切、委員会とその関連組織には関わらない》。どうだ誓ったぞ、早く解放しろ』
「ん……いやに早いな、一番嫌がってたのに」
解放するにもその前に、委員会やサークル、過激派と言った関係組織と関わらないことを誓ってもらう。そういう約束なので持ち出したところ、意外にもアガレスが間髪入れず誓いを結んできた。
取り調べ前はあんなにも反抗的というか、言うこと聞きませーん状態だったんだけど。どういう心境の変化だ?
問いかけるとアガレスは大きくため息を吐き、疲れたようにソファに背をもたれかけた。
半透明の悪魔が、ガワだけでなく内面までも人間めいたような仕草だ。そうして話し始める。
『貴様らと話して嫌でも理解した……潮時だとな。むしろこのタイミングで委員会との関係を断ち切る方便として、この誓いは有効利用させてもらう』
「何よ、ずいぶん諦めが早いわね悪魔のくせに。まだまだ連中、元気じゃない」
『吹けば飛ぶような風前の灯だ、実際はな。ウーロゴスも対処され、AMWの存在も割れ、挙げ句シャイニング山形がごとき化物までいる。これでどうしろというのだ、勝ち負け以前に勝負にもならん。それが分かったからには逃げさせてもらうぞ』
「えぇ……?」
判断が早い。めちゃくちゃスムーズに自己保身に走ったな、こいつ。さすが悪魔というべきかなんというか、問いかけたアンジェさんも閉口するくらい清々しい逃げの一手だ。
サークルに与していたこいつとしては、やつらの手札がことごとく知られ、しかも対処されそうなことで見切りをつけたんだろうな。
ま、それはそれで構わないというか大歓迎だ。いらんちょっかいをかけるような概念存在は、どんどん現世から消えてもらってOKだもの。
セーレやオノスケリスも同様に退去を選ぶのかな? と視線を向ければ、二体とも続けて誓いを結んでいった。
『《今後一切、委員会と関係組織に関わりません》……これで一応は解放、ですか。認定式の日以来一ヶ月ぶりなのでしょうが、体感としてはつい一時間ぶりくらいの感覚ですね』
『《今後一切、委員会と関係組織には関わりませーん》! はあ、やーっとシャバの空気が吸えるんですけど! ゲームなんですけど漫画なんですけど、アニメなんですけどネットなんですけど!! とりあえず受肉したいんですけどぉーっ!!』
どことなく複雑な様子のセーレに、体いっぱいで喜びを表現するオノスケリス。
事情を知らなければ、半透明な人間が何やら喜んでいる様子なんだけどね。実際はこいつら、人間に中途半端な力を与えて観察していたに等しいマジモンの悪魔だからね。人間の観点からするとまあまあろくでもない。
はしゃぐオノスケリスに、ヴァールが目を向けた。
無邪気で無垢な様子だけど中身はバッチリ悪魔だ、一切油断することなく、けれど呆れた調子で質問を投げかける。
「元気だな……というかそもそもなぜ貴様ら、受肉していないのだどいつもこいつも」
『それはまあ、悪魔ですから。自分達まで人間と一緒になって動いても仕方ないでしょう? 我々はただ力を与えて見届けたかっただけなのですから』
「怖ぁ……」
大体なんでみんなして受肉せず、けれどアバターではあるんだ。そんな根本的なところへの問いかけについて、セーレが答えた。こないだも見た、おっかない悪魔めいた微笑みを浮かべながらだ。
怖いんだよなあこいつ、こういうところ……実際何をしようがどうとでもできるけど、それはそれとしてゾッとすることに変わりはない。
こいつに目をつけられた瀬川聡太はつくづく、不憫なやつだと思うよ。
身の丈に合わない権能を持たされて、テロ組織の走狗として最後までやり抜くことを乞われて……それでもそれがやつの選択である以上、落とし前はきっちりと付けるべきだけどね。
凄絶な色気さえ醸しながらこの、中性的な美を湛える悪魔セーレは。
そして俺に向け、妖しさを消した朗らかな笑みを浮かべた。
『悪魔ですから。さて、それでは我が契約者、山形公平よ』
「うん? ていうかもう契約も履行済みだろ、認定式の瀬川はきっちり見逃したし、お前はしっかり俺達の問いに答えてくれたんだから今はもう契約関係にはないぞ」
『ええ。ですので今度はこちらからの提案です。私と契約しませんか? 《あなたの使い魔としてなんでもします》から《私に聡太の終わりを見届けさせてください》』
「…………えぇ? そこまでやんのお前、趣味悪すぎないか?」
まさかの提案。こいつこの期に及んでまだ瀬川の終わりを見たいのか。蛇みたいな執念だ。
実際、俺のことを契約者と呼ぶにはすでに繋がりも絶たれている。《認定式の日に現れた瀬川をあの日に限り見逃す代わり、悪魔セーレはすべての質問に嘘偽りなく答える》と。そう結んだ契約もここに至り履行されきったからね。
だからもう、セーレは完全に無罪放免。誓いもあるし委員会にはもう関われず、あとは好きにすればいいって段階だ。
それなのにわざわざ俺にまた、縛られに来たんだから反応に困るよね。しかもその理由がまたしても瀬川、あの男に執着してのものなんだからなおのことだよ。
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