気付いたら数週間寝てました、なんてのはさすがの悪魔も嫌みたいだぞ(豆知識)
悪魔セーレの執り成しもあり、ようやく落ち着いて話ができる状況になった。悪魔三体を椅子に座らせて、俺達は再度ソファに座る。
結界の力もあり今のこいつらにはなんの力もない。よしんばこの部屋から逃げ出したとて、ダンジョンの入口には結界があって概念存在では出入りできないし、奥に行ったところで抜け道なんてのもない。
つまりは彼らにとり、ここは絶対的な牢獄であるわけだ。そこに思い至っているのか、悪魔達も大人しく俺達の言葉に従っていた。
まあ、アガレスはやはり文句たらたらなんだけどね。
『おのれ……おのれ、おのれっ。一体何者なのだ貴様らは、なぜ悪魔をこうまで一方的に蹂躙できるっ』
『マジありえないんですけど……ガッツリ権能封じられてるし、アバターの出力もめちゃくちゃな制限かけられてるし。辛いんですけど、苦しいんですけどー』
『私を捕らえた以降に、アガレスとオノスケリスまで。我が契約者山形公平は、聡太含めた過去の契約者達とは比べ物にならないほどに異質ですね。ああ、他意はありません、心底から感嘆しているのです悪しからず』
少女悪魔オノスケリスも、中性的な美貌の悪魔セーレも揃って俺による封印やらなんやらに顔をひきつらせている。
こいつらはもう反抗する気もないようで、大人しく従ってくれているのがありがたい限りだ。こっちも別に、好きでこんなふうに詰めてるわけじゃないからね。お互い穏便にスムーズに済ませられるなら、それに勝ることなんてないんだ。
「さっきも言ったけど、大人しく質問に答えてくれたら解放するよ。ただし、《金輪際委員会とその傘下組織に関わらない》ことを誓ってはもらうけど」
『……"悪魔は今後、探査者に関係するあらゆる物事に介入、干渉しないことを誓う"ではなくですか? 妖怪はカテゴリごと排除して、けれど悪魔はそうしないと』
「耳聡い、というかアンドヴァリまでそのへんの話は知っていたけど、どこから聞いたんだ……? これは最初の質問だ、答えてくれ」
『答えましょう、倶楽部幹部の赤鬼からです。彼の置かれている拘置所に忍び込んで、妖怪に対してあなたが行ったことをすべて聞き取りました』
妖怪との間で交わした誓いの仔細まで割れている。認定式の日、アンドヴァリも俺が妖怪をカテゴリごと大ダンジョン時代から追放したのを知っていたし、どっから知ったのかってのは疑問ではあったんだ。
倶楽部幹部の赤鬼、鬼島と名乗るあの男から聞いていたか。現世の拘置所くらいなら精神体であれば忍び込めるだろうし、そりゃ漏れるわな。
例の誓いに抵触しないかとも思ったけど、あいつはもうすでに抵触していてペナルティを受けているし、そもそも悪魔自体は厳密に言うと探査者に関わる物事じゃない。
なのでアンドヴァリにまで情報がいったのも、悪魔達が勝手にやったことなので誓いとは無関係と。
うーむ、ルールの穴を突かれた形だな。まあ、これについては過ぎたことだし仕方ないけど。
答えてくれたセーレに謝意を告げて最初の問い、悪魔に対しても妖怪同様の措置を施さないのかというソレに返事する。
どんな立場のどんな相手であれ、協力してくれたならそれに対する応報は必要だからね。悪魔が誠実に答えてくれる限り、俺もそれに応えようか。
まあ、この誓いを結ぶ前に行った契約とかは遡及して無効ってわけにもいかないから瀬川バリアは未だ、有効だろうけど。
それでもこれ以上、悪魔に状況を引っ掻き回されることを多少は防げるってのは大きいよね。
是非にもこの誓いは成立させたいところだよ。
「妖怪はひとまとまりの集団として、カテゴリ総出で関与してたっぽいしな。だけどお前ら悪魔はそうじゃないだろ、聞いてるぞその筋の方から。悪魔は派閥が多くて今回の件に無関係なモノのほうが多いって。さすがに巻き添えにはできないよ」
『どの筋から聞いたの……ガッツリ内情知られてるんですけど。妖怪との誓いの時にいたっていう、どこぞかの最高神クラスから?』
「さあ? それはどうかなあ」
オノスケリスの質問ははぐらかす。答える答えない以前に北欧神話が絡むような話を、軽々に漏らせないからね、さすがに。
というかこの少女悪魔、思ってたより肩の力が抜けているな……目が合うなりニヒヒと小悪魔チックに微笑んでさえ来る。陰キャ殺しの笑顔で怖いよ。
こういう子が好みのタイプってのはいるんだろうけど、俺としては文化が違う! って怯えしかない。
いやそもそも種族と言うか種類からして違うんだけどね。俺は極力視線を合わせないようにしつつも確認した。
「ともかく、大人しく答えてくれるならこの場では何もしないし解放だってする。交わしてくれ、誓いを。いつまでもこんなふうに好き放題されるのも嫌だろ?」
『私は誓います。何も為せぬまま、時間が過ぎることすら認識できぬ異界に閉じ込められ続けるのは辛いことですから』
『オノスケリスちゃんも誓うんですけど! もう帰ってポテチ食べてコーラ飲んでゲームしてネットして、不貞寝したいんですけど! あとソシャゲのイベントこなしたいんですけど!!』
『くっ……!! ち、誓うしかないか……!! おのれ、高々人間風情にこのアガレスが、なんという無様を……っ』
三者三様の反応。淡々と、けれど誠実にうなずくセーレと、もうとにかく娯楽にどっぷり浸かってるのが分かるオノスケリスと、悔しげに涙さえ流しながら呻くアガレス。
いずれにせよ、誓いを結ぶ気にはなってくれたみたいだ。これで敵組織サークルから、それなりの格の悪魔を三体取り除けたことになるな。
あとどのくらいの悪魔が関わっているかにもよるけど、結構大きいかもなあ。
ヴァールやシャーリヒッタ、アンジェさんもこの成果に満足した様子を見せる中、三体の悪魔はかくして俺との間に誓いを結んだのであった。
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