絶対に入れないってことは、絶対に出られないってことでもあるよね
世界停止前、襲ってきていたわけだから当然それが解除されれば引き続き襲いに来る。
目の前の悪魔からしてみれば意識の上では地続きだからね。たとえ合間に完全に封印された状態のまま、一週間近く放置されたままだったとしても。
『ぅ、っおお!? ぐ、う……馬鹿な、時間停止が切れている!? そ、それに精神体たる我に、なぜ貴様ごとき現し世の者が触れられるのだ!?』
「おはよう悪魔アガレス。お前に自覚はないだろうけど、さっきまでお前の世界は止まっていた。俺が止めて、それから一週間ほどが経つ。無駄な抵抗はやめてほしい、もう勝負はついてるからね」
『なっ……んだと!? 馬鹿な、何をふざけたたわごと、うおおっ!?』
悪魔の腕を取り、極める。精神体だから現世の者には干渉されまいと高を括っていたようだが俺にそんなもの、関係あるわけもない。
なおも抵抗するアガレスをダンジョンの地面、まあホテルの床だね、そこに叩き伏せて抑え込む。苦悶の声を漏らしてやつは、悔しそうに憎悪に滾る目を俺に向けてきていた。
なんなら今も度々、時間停止の権能を使おうとしているようだけどそうは問屋が卸さない。
そもそもこの場にいるメンバー四人のうち、アンジェさん除き三人は魂の格的に時間停止の影響とか受けないからな。その時点でもうアガレスに打つ手はないんだけど、言ったとて納得はしないだろう。
というわけで実力行使とさせてもらうか。俺はスキルを使用した。
「《清けき熱の涼やかに、照らす光の影法師》。このダンジョンの全域に概念存在の一切の権能、および力の行使を封印する結界を張った。これでもう、お前達三人ともただの精神体だ。ちょっと力が強いだけのゴーストと変わらない」
『な、んだと……!? 力が、入らない。我が権能が、機能しないぃ……ッ!?』
『といいますか、ここはダンジョンの中なのですか!? たしかにホテルの一室にしては、窓もなく変な位置に道があったりとおかしな形状をしていますが……』
『ダンジョンとか初めて入った……概念存在には絶対に入れないバリアが入口に張ってあるから、スキルで喚ばれない限り入れないって聞いてたのに、なんで……え、これもチートシャイニングの権能? いやいやヤバすぎて笑えないんですけど。笑えてくるんですけど』
結界作成スキル《清けき熱の涼やかに、照らす光の影法師》にて、概念存在を対象にした完全無力化結界を張る。
これでアガレスはもちろんセーレも、オノスケリスももう何もできなくなってるんだが……後者二人はむしろ、今いるここがダンジョン内だということのほうに著しく反応していた。
まあ、概念存在は通常ダンジョンには入れないからね。出入り口にオペレータ以外を通さないフィルター結界がプログラムされてるから、ステータスを持たないものはなんであれ弾くようになっているのだ。
それゆえに悪魔達も、ダンジョン内にはなかなか入ったことがないのが多いんだろう。知っていてもスキルで喚ばれたとか、動画とかで見たとかってくらいか。
今回、事情聴取にダンジョン内を選んだのもこのへんが理由だ。万一にも悪魔を逃さないようにするためと、仮に戦闘になっても周囲に被害を及ぼさないようにするためと。
そして今、権能やら力さえ封じられたとなっては、完全にこのダンジョンは概念存在にとっての牢獄と化したわけだね。
俺は極めていた腕を外し、アガレスを解放する。
変わらず憎悪で俺を見てくるけど、ことここに至り何もできないのは理解したようですっかり大人しくなった。
やれやれ、やっと話ができそうだ。
「……とりあえず、俺達は話を聞きたいだけだ。サークルや委員会との関係についての情報を。だから素直に応じてくれれば何もしないし、最終的には解放だってする」
『えっ、マジ!? 久方ぶりのシャバってやつ!? ゲームしたいんですけど、ネットしたいんですけど!!』
「ああはい、ちゃんと答えてくれたらできるからちゃんと答えてくれよ? ただまあ、いくらか誓いを立ててもらうことにはなるけど」
『誇り高きソロモン72柱が、貴様ごとき人間に誓いを結ばされるだと……!? ふざけるなあっ!!』
うーん、オノスケリスはめちゃくちゃ従順と言うか、もはやただただ現世の娯楽にドハマリしている少女でしかない感じだから協力的なんだけど、やっぱりアガレスかあ。
どうやらこいつもソロモンの悪魔みたいでそれゆえかいかにもプライドの高そうなことを言ってらっしゃるよ。とはいえ今ここにいる限り力も権能もないもんで、何もできない口先だけの物言いなんだけどね。
しかしここまで抵抗されると、こいつからの事情聴取はうまいこといかないだろうなあ。どうするかなこいつ、いつまでもデータ領域にほっぽらかすのもさすがにアレだしなあ。
にわかに内心で困る俺ちゃん。ヴァールも冷たい目をして《鎖法》を使いだしてるし、もうサクッとアバター体を消し飛ばして本体に戻ってもらうか? なんて考え始めた矢先だ。
意外にも悪魔セーレが、アガレスを説得し始めたのだ。
『アガレス。いい加減にしてください、見苦しいですよ』
『セーレ……! 何を言う貴様、同じ72柱であろうに!』
『だからこそです。仮にも同格たるあなたが、かくも無様に駄々をこねる姿は見るに堪えません……私達は敗者です。彼らは、山形公平は勝者です。であれば彼らの言うことを聞くのは我々の義務であり責務でしょう』
『ぬぐ……っ!』
『今は我慢なさい。そして敗者としての振る舞いをするのが、真に誇りある悪魔というものです』
極めて理性的で、穏便な物言い。同格の悪魔からの指摘とあっては、荒ぶるアガレスも落ち着かざるを得ないみたいだ。
いくらか不満そうにはしたものの……不承不承という形ではあるが、ひとまずうなずきこちらの問いかけにも答えてくれる姿勢を見せるようになっていった。
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