山形の住む県にある雄大で美しい湖……一体何湖なんだ……
いよいよ訪れたカレチャの部室。藤代さんがドアを開け、俺達に入るよう丁重な仕草で促してくる。
思えば部室とか入るの初めてなんだよなあーと、中学から現在にかけて一切部活動の類をしていない俺ちゃん的にはドキドキな瞬間である。
「お疲れさまです教授、幹事長。お客様方をお連れしました」
「し、失礼しまーす……」
「失礼します」
「お邪魔します」
小早川さんが先導する形で部室に入って中にいる人達に声を掛ける。二人だ。
結構ご年配の、おそらくこっちの方が教授さんなんだろう痩身の男性。そしてその隣に座る、黒髪でウェーブヘアのお姉さん。
察するに幹事長ってのがお姉さんのほうかーって思いつつ会釈する。お二方も立ち上がり、会釈して俺達を招き入れてくれた。
男性が、思ったよりもフランクな言葉遣いで話しかけてくる。
「いやーいやー、よくぞお越しくださいましたチェーホワ統括理事、そして山形さん。望月さんもですが急な話にも関わらずご対応いただきいたこと、本当にありがとうございます」
「こちらこそ、急に山形様への依頼に便乗する形になりまして恐縮です。はじめましてWSO統括理事のソフィア・チェーホワです。本日はどうぞ、よろしくお願いします」
「あ、はじめまして山形です。今日はよろしくお願いします」
「おお、失礼しました名乗りもせずに。竜虎大学カレッジサーチャーズの顧問教授、群馬です。本日はよろしくお願いいたします」
やはり教授さんだったその人、群馬さん。
スーツ姿で白髪をオールバックに固めているのがなんともダンディというか、やっぱり教授さんなだけあって知的な雰囲気が漂う。
にこやかな笑みを浮かべて紳士的なんだけど、どことなく物静かな空気を纏っていらっしゃる。
初めて教授という肩書を持つ方に会ったけど、やっぱり学校の先生とは大分趣が違うなあ。
ソフィアさんに続いて俺も挨拶する。そしたら神奈川さんも護衛ってなことで軽く挨拶すれば、次に群馬さんの隣の女性が挨拶してきた。
「本日はお越しくださったこと、まことにありがとうございます。同じく竜虎大学カレッジサーチャーズの幹事長を務めております、福井と申します。よろしくお願いします」
こちらもこちらでやはり女性はカレチャの幹事長さんだった。福井さん……香苗さんや宥さんと同年代だろうけど方向性が違うタイプの美女さんだ。
なんていうか、大人のお姉さん感があるというか。おかし三人娘のアメさんにも似た妖艶さというか。
アメさんの場合は内面がおっとりお姉さんだったんだけど、福井さんの場合は中身まで色気たっぷり感がある。なんだろう、外国のドラマに出てくる敵か味方か分からない謎の美女的というか。
まあこの場においては敵も味方もへったくれもないんだけどね。あくまで第一印象の話、この人ももしかしたら愉快な方かもしれないので先入観は持たないようにしたいところだ。
さておき群馬さんと福井さん、双方と挨拶を交わした。となればさっそくだけど本題に入るべきなんだろう。
小早川さんに促されつつ二人の対面、事務机を挟んで椅子に三人座った俺が息を吐いて直後。ソフィアさんがコホンと一つ咳払いをして切り出した。
「よろしくお願いします……さて。それではさっそくですが、山形様のほうに依頼されたというサークルの拠点調査につきまして。WSO統括理事としていくつかお伺いしたいことがあるのですが本題に移らせていただいてもよろしいでしょうか?」
「……はい、もちろんです。先にこちらから、ことの経緯につきましてご説明いたします」
神妙にうなずき、群馬教授と福井さんは話し始めた──なぜここのカレチャがサークル拠点の調査を俺に依頼しようと考えたのか。そもそもどうやってサークル拠点を知ったのかについて。
俺に依頼しようと考えたところまでは先程、小早川さんが話してくれたのと概ね同じ内容だ。彼が知人から得たサークルとカレチャの関係を聞き、これはまずいと緊急で話し合ったのだという。
「まずはOBやOGの現在の身元、卒業後の動向を可能な限り調べました。とはいえ本人達に知られると、万一彼らがサークルとつながっていた時に大変なことになりますので……知り合いにさり気なく話を振ってみるとか、その程度のことしかできませんでしたが」
「ですが、それでも何かしらの情報は得られたのでしょう? でなくば山形様に依頼をするはずもありませんし」
「はい、もちろんです。卒業後も折に触れて支援してくださっている10年前のOB、今は実業家の方から情報が寄せられまして」
福井さん達も自分達にできる範囲で、サークルについての情報をカレチャ関係者から調べようとしていたんだな。できることは少なくても、それでもやろうとしたことがまず立派だと思う。
そして実際に、そのおかげで有力な情報を掴めたみたいだからね。OBの人から、カレチャとサークルのつながりに関する大きな情報を得られたのだと言う。
そこからは群馬教授が話を引き継いだ。
深刻な面持ちで、入手した情報を教えてくれたのだ。
「……関西のカレチャOBOGの一部が在籍しているグループの拠点が隣県の湖の畔にある、と。そしてそこに、件の組織のトップである藤近功が最近、足繁く通っているとか」
「隣県の湖って、うちの県の……!?」
「あの雄大で美しい湖の畔に、サークルのトップが……」
山奥の次は湖かよ!
よりにもよってうちの県が誇る巨大湖に、サークルのトップがいるらしいことを知らされた俺は内心で叫ぶのだった。
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