歴史の先生って自分の好きな時代のことになると早口になるよね
翌日、学校にて。
ぼちぼち始まった授業の時間の合間、黒板の上に走るチョークの音を聞きながらも俺は頬杖ついて、昨日宥さんから送られてきたメッセージについて考えていた。
彼女を通しての、竜虎大学にあるカレッジサーチャーズからの依頼……サークルの拠点を探ってほしいという、まさかすぎる内容についてだ。
『以前お会いした、カレチャ副幹事長の小早川さんから今しがた私の動画チャンネル宛にダイレクトメッセージがありまして……受ける受けないはもちろん置くにしても、公平様が現在進行系で関わっていらっしゃる案件についての話だと判断しましたのでお耳に入れるべくメッセージ差し上げました。救世主様バンザイ』
昨日の宥さんのメールを大体要約するとこんな感じ。
冷静かつ的確な判断の元にメッセージをくださったと感謝するしかないんだけど、それはそれとしてやはりこういう場合でも使徒仕草をすることに遠い目をしそうになる俺ちゃんだ。
さておき、このメッセージを受けて俺は、即座にヴァールってかソフィアさんに連絡した。
サークルが関わる以上、あの人の耳には入れとかなきゃだしね。
するとひとまず話を聞きたいとのことなので、宥さんには急遽の話しながら今週末あたり竜虎大学まで行って直接、小早川さんと話しますよーって送ったわけだった。
つまりは竜虎大学のカレチャから直接、サークル絡みの情報を聞き出せるという千載一遇のチャンスと言える。
無論ながら各地のカレチャにも捜査の手は入ってるみたいだけど、いかんせん悪魔セーレの言っていたことはやはり信憑性が高いようで。
寝耳に水あるいは青天の霹靂ともいうべき聞いてないよ!? というガチな驚きが今のところ、首都圏のカレチャからは返ってきているみたいだ。
あまりに突然浮上してきた犯罪組織とのつながりに、カレチャ内でも大きな混乱が巻き起こってるってんだからこれガチで知らない人ばっかりなやつじゃーんってなる。
少なくとも役員でない、一般のカレチャメンバーの中にはそんな危険な団体とは思わなかったということで脱退したり、SNSでわさわざ内部調査を発表したりする人達もちらほらみかけたりもするね。
前者はともかく後者については、それを皮切りにサークルとカレチャのつながり疑惑が世間に知れ渡ることとなりちょっとした炎上騒ぎにまで発展していてなかなかの大事になっちゃってるほどだ。
怖ぁ……っていうか捜査中の案件を気軽に表に出しちゃ駄目だよカレチャの人達も。おかげでおまわりさん達もずいぶん手間を食ってるって、昨日やり取りしたソフィアさんはメッセージで多少愚痴ってたなあ。
「──そしてこの頃起きたのが第四次モンスターハザードだ。これはイギリスで起きた連続スタンピード事件なんだが、この時の事件解決に著しく大きな活躍を見せた歴史的探査者が、山形、お前なら分かるだろ?」
と、不意に名前を呼ばれて教壇に立つ先生を見る。40歳前後の、ガッチリしたスポーツマンタイプの体つきをした男性教諭だ。
今は世界史の授業中。本来なら2000年前くらいのヨーロッパから西アジア、北アフリカ周りをメインに進めているんだけれど……この先生、探査者マニアなところがあってたまに脱線して大ダンジョン時代史を語りだす傾向があるんだよね。
といっても全体の進行には支障がない程度に収めているみたいだからまあ、授業の合間の一息程度の話なんだけど今はなぜか第四次モンスターハザードの話をしているみたいだ。
その流れで不意に話を振って来たのが今ってわけ。もちろん、こればかりは間違えるわけにもいかず俺はあっさりとうなずき答えた。
年の離れた友人にして尊敬する偉大な探査者の名前を。
「マリーさんもとい、マリアベール・フランソワさんですね」
「そう、山形にとっては知り合いになるな。現代では83歳の大御所だが、第四次の頃は18歳だったS級探査者マリアベール・フランソワさんだ。なあ、あの頃についてフランソワさんから何か、お話とか聞いてたりするのか?」
「へ!? え、ええとー……まあ、雑談程度にいくつか。御本人としては若気の至りが結構あったみたいで、詳しいことは言いたくないみたいでしたけど」
「ほぁー……そりゃ羨ましい! 俺も直にお話を聞いてみたいもんだ」
何やら感心されちゃった。クラスメイトのみんなも俺を見てへえー! って顔をしてるけど、ぶっちゃけマリーさんを出汁にして注目を浴びる形になったわけなので結構居た堪れなさがある。
とはいえ答えないわけにもいかないし、知り合いであるのが事実な以上何も知りません聞いてませんってのも嘘だからなあ。
まして第四次モンスターハザードについては、マリーさんのみならずソフィアさんやヴァール、エリスさんまで絡んでいた事件だ。
マリーさんは若気の至りってことであまり語らない部分についても、そちら方面から時折断片的なエピソードは語られたりするわけで。
いろいろ知っている俺を察してか、ずいぶんと先生が羨ましそうにするのが変に印象的ではあった。
まあ、言うわけにはいかないしねー。人の思い出話を勝手に。しかも若気の至りってのが本当に若気の至りだし。
当時とにかく"先輩"という存在そのものが嫌いだったやべーマリーさん18歳が、知り合ってすぐのヴァールやエリスさんにも即座に噛みつき殴りかかった挙げ句、《鎖法》や《念動力》で拘束されたとか……そりゃ言いたくもないよねってなるもの。
なんかストレスでもあったのかな、当時のマリーさん。
そんなことを考えながら、本題に戻った授業を適度に聞きつつ黒板の内容をノートに書き写す俺ちゃんだった。
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